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発信者責任から考える理系のコミュニケーション

 世に溢れるコミュニケーション・エラーのほとんど全てがここにある!と私が疑ってやまないポイントをこの記事では書きます。


「受信者責任」から「発信者責任」へ

 コミュニケーションの潮目が「受信者責任」から「発信者責任」へと変わってきています。これまでは、一方的に情報を発信側から伝達されて、受信者側(テレビで言えば視聴者、書籍や雑誌では読者)が理解できなければ、それは前提知識や理解力不足、で片づけられていました。

 一方で、発信者の数も手段も多様になってきたことから、受信者は、一つの媒体が分かりにくければ、別の媒体へと移行することが容易になってきたので、これまでのように、「分からないのは、あなたの責任」とは言いにくくなってきています。

 要するに、情報伝達やコミュニケーションが正しく伝わるかどうかは、発信者側に責任があるという流れになってきました。

「以心伝心」はもう通じない

 それと同時に、「以心伝心」も通じにくくなってきています。終身雇用制は存在しないにも等しいですので、会社や組織のカルチャーを時間をかけて学んで、そのうちに、上司が「あれ」とか「これ」とか言うと、部下はそれを察して動く、という場面もなくなってきました。

 そもそも、日本は他国と比べて、そういった「あうんの呼吸」のコミュニケーションに大きく依存してきましたので(そういった社会をハイ・コンテクストと呼びます)、そこに是正が入ってバランスが取れてきた、と見るのが自然なのだと思います。

https://eikaiwa.online/tips/high-context-low-context/

「発信者責任」を悪用する受信者

 ここで少し釘を打っておくと、「発信者責任」であることを逆手に取る受信者が出てくるということです。「情報が分かりにくかったから、動こうにも動けませんでした」「あなたの説明が悪いので、もっと詳細に教えて」というやり方で、コミュニケーション・コストを増大させる人たちは既にいますし、今後も増えてくると思います。

 そういった輩にはどう対応すれば?というところを、chat GPT O1(汎用AIの中では最もIQが高いモデル)に聞いています。全部を貼ると長いので、有用と考えられる部分に絞りました。

目的やゴールを先に共有する
「このやり取りで最終的に達成したいのは何か」を明確に共有すると、「説明不足だから分からなかった」という言い訳がしにくくなります。双方が“目指すゴール”を認識しておくことで、必要最低限の情報が何かが明確になります。

想定している知識レベルや役割をハッキリさせる
「この説明は、ある程度○○の実務を経験している人を想定しています」と事前に示すことで、説明を受ける側も「自分には合わない」と判断しやすくなります。
- もし受信者が「もっとかみ砕いてほしい」と要求するならば、その追加説明が“想定範囲外”であることを示し、追加対応の負担が正当化される(別途時間やコストがかかる)という話に繋げやすくなります。

双方向コミュニケーションの前提づくり
「まず○○をやってみて、結果を報告してください」「事前に△△を調べたうえで質問してください」というように、何かしら受信者側が“確認・実行”しなければ次のステップに進めない仕組みを設計します。
- 受信者が「あなたの説明が悪いから…」と責任転嫁してきても、「では事前タスクはどこまで完了しているか」など確認しやすくなり、相手の不誠実な態度を可視化できます。

 なるほど、厄介ではありますし、手間もかかりますが、対策が打てないことはなさそうですね。

理系のコミュニケーションはどう変わるか

 職場によって差はあるのかもしれませんが、これまでは「上意下達」だったコミュニケーションが変わりつつあります。

 特に理系は、これまでは互いの専門分野を尊重し、ある特定部門の意見が出れば、その内容がたとえ分からなくても、「詳しい人がそう言っているのだから、まあ、そうなんでしょ」で済まされてきたものが、そうでなくなってきています。

 その分野に詳しくない「素人」が、丁寧に質問を繰り返して、他の部門が言っていることに疑問を呈して、場合によってはひっくり返すような場面も目にしつつあります。

 それで、そもそも、自分たちの領域を日ごろから分かりやすく発信をしておけば、こういった事態も起こりにくいのだとは思うのですが、なぜそうならないか(しないか)と言えば、自分たちの築き上げてきた専門領域にかけてきた時間やコストを考えると、そう易々と分かってもらっては困る(?)、という心理的な抵抗もあるのかもしれません。

発信力の戦略的強化が必要

 そうすると、理系の職種グループとしては、「自分たちの領域をいかに分かりやすく説明し、かつ、自分たちの意見をきちんと評価してもらうか」という戦略的な発信力強化が求められることになります。分かりやすく伝えたは良いが、ボコボコに叩かれたあげく、炎上するようなことがあったら、発信も何も、コミュニケーションの意欲がそがれてしまいますので。

 そのためには、AIを活用してみるのはどうでしょうか。自分たちの書いた記事やプレゼン資料を、例えば「高校生程度が分かるように」と指示を出しながらAIに要約をしてもらいます。前回の記事で引用したハエの遺伝子に関わる東京大学の記事をchat GPTが要約したものがこちらです。

ポイント1:攻撃性を抑える「ブレーキ」の発見
ショウジョウバエ(小さなハエ)を使った研究で、“nervy”という遺伝子が攻撃性を抑えるための“ブレーキ”として重要な働きをしていることが見つかりました。

ポイント2:社会経験がカギ
普通、ハエを集団(たくさん一緒)で育てると攻撃性が低くなることがわかっています。一方、1匹だけで育てると攻撃性が高いままになります。
「nervy」という遺伝子が正常に働いていると、集団での生活という“社会経験”によって、攻撃行動にブレーキがかかるのです。

ポイント3:nervy遺伝子がないとどうなる?
「nervy遺伝子」を壊した変異体のハエでは、集団で育てても攻撃性があまり下がらないことがわかりました。
つまり、本来なら社会経験でブレーキがかかるはずの攻撃行動が、nervy遺伝子がないと止められないというわけです。
個別飼育した場合は、変異体でも普通のハエでも同じくらい攻撃的になるので、nervyはあくまで「集団生活を経験したときに働くブレーキ」だと考えられます。

ポイント4:ヒトにも似た遺伝子がある
ヒトにもnervyとよく似た遺伝子があることがわかっています。
これがヒトの脳でも同じように“攻撃性を抑えるブレーキ”として働いている可能性があり、暴力衝動や行動の制御を考えるうえで重要な手がかりになるかもしれません。

ポイント5:わずか100個の神経細胞がブレーキ役?
ハエの脳には約10万個の神経細胞がありますが、そのうち約100個ほどがnervy遺伝子を働かせている細胞でした。
光を当ててこの細胞を人工的に活性化すると、ハエはすぐに攻撃をやめることが確認され、特定の少数の細胞が攻撃性をコントロールしていることがわかりました。

まとめ
ハエに社会経験をさせると攻撃性が低くなる現象に注目し、攻撃を抑える「ブレーキ」遺伝子(nervy)を突き止めた。
この遺伝子は集団での生活をきっかけに働き、攻撃行動を抑える。
ヒトにも似た遺伝子があるので、人間の暴力衝動や行動発達を理解するうえでも役立つかもしれない。
この研究は、社会的な経験が脳の働きに影響し、攻撃性を調節する仕組みを世界で初めて具体的に示した重要な成果といえます。

 なるほど、このような形でAIを活用する事でも、コミュニケーションコストは下げることができそうです。

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