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デザイナーが編集を通して伝えたいこと|編集長 新野さんにインタビューしてみた 前編


こんにちは!

2024年ももう半分過ぎてしまい、すっかり夏の暑い時期になってしまいましたね。実は、このnoteでお話ししていたタブロイドがついに完成し、今年の4/22に創刊されました。今回のnoteはロバート下北沢タブロイド『ROBERT』の創刊を記念して、編集長を務めた新野 瑞貴(にいの・みずき)さんに、企画や制作についてのお話をお聞きしました。

前回の記事では私の大学生時代の卒業制作についてお話しました。
▼noteはこちらから

ロバート下北沢のタブロイド『ROBERT』について

ーロバート下北沢とはどのような場所ですか?

新野 瑞貴さん(以下、新野さん):デザイン会社「SLOW」に入社した時に、「この場所は2020年7月にコワーキングとしてオープンしたものの、ただデスクワークをするためのコワーキングスペースではなく、本当はここでクリエイターたちが集まったり、仕事が発生するような場所にしたい」とBOSSの原さんから聞いて。誰かが何かを挑戦したり、みんなでひとつのものを創り出したり、それを周りのみんなが応援したり…ロバート下北沢の理想の在り方をSLOWのメンバーとイメージしながら、「Mixture Hub(ミクスチャーハブ)」という概念をつくりました。目指す人たちがわくわくする旗印になればいいなと、こういう場所にしていきましょうと銘打ったんです。

ーMixture Hubとはどのようなものなのでしょうか?

新野さん:ロバート下北沢では「人と現象が混ざる場所」と定義しています。

Mixture Hubについては新野さんの連載記事に詳しく書かれているのでこちらをご覧下さい。▼

私は大学生時代に「コミュニケーションデザイン」という、媒体を問わず世界と人との繋がりを活性化させる学問に惚れたんですけど、私自身もここを実験場のひとつとして、この学問を実践してみようと思ったんです。コミュニケーションデザインを使ってロバート下北沢を「Mixture Hub」という未来像にどうやって近づけていけるかなと、挑戦し始めました。

ー新野さん自身がタブロイドを作る決め手となった出来事はありますか?

新野さん:私が会社に入社してすぐにロバート下北沢で開かれたイベント「さらけだし」が全てのきっかけでした。イベントを主催者したyosemicという団体に、デザイナーながらも人生初の取材をしてみたり。yosemicの植田さんに、まだかたまりきっていなかった「Mixture Hub」の話をしたらとてもおもしろがってくれて、賛同してくれたのも大きかったかな。
いざロバート下北沢の未来像ができても、場所は短期的に変わるものではなくて、ロバート下北沢がオープンして3年たったときに、yosemicをはじめ、millenniumやTelttaなど、やっと人が集まってきたと感じるようになった。
まだまだ完成形ではないけれど、今までは、ただ目指していただけのロバート下北沢に、少しだけ片鱗が見えてきたからこそ、私たちの考えていることや、今この場所に集まってきてくれている人のことを紹介するためにタブロイドを作ってみようかなと考え始めました。

ー なぜタブロイドというアウトプットにしたんですか?

新野さん:日々更新され続けている、WEBやSNSのように、流れてしまう情報ではなく、紙という半永久的に変わらない、手に触れられる形で共有したかったからです。

ー特集テーマの「わざわざ」とはなんでしょうか?

新野さん:ロバート下北沢の考えだったり、ここに集まってる人の想いですね。ここにいる人は、時間の使い方がちょっとだけ周りと違う気がしていて、「あそびと仕事」ではなく、「あそびながら働いている」ような。「あそびと仕事」をわけていないし、自分の興味のあることにまっすぐに時間をかけたりお金をさいたり、全力で向き合っている。「わざわざ」やっていることがあると思います。

今、ロバート下北沢に集まっている人たちを総称でなんと呼ぼうかとなったときに、最初は「リアルを諦めてない」というワードがありました。けれど誤解を与えかねない、まずは「リアル」という言葉の定義を述べないとよくわからないものだったので、もっとわかりやすい横串が必要だと編集アドバイザーの中澤さんに指摘されて。こんなのはどう?とアドバイスして下さった言葉のひとつに「わざわざ」がありました。

ー今回の特集「わざわざ」では企画が10個も入っていましたが、企画はいつもどのように思いついていますか?

新野さん:企画のアイディア出しには苦戦はしなかったですね。今回に関しては、ロバート下北沢のタブロイドの創刊号だったので、私の中では「今ロバート下北沢に集まっている人たちを主人公に」というのが裏テーマでした。なので、本当は10個では足りなくて、もっと取りあげたい人がたくさんいたんです。企画を生み出すというよりも、まっすぐに伝えすぎないための切り口を考える方が難しかったですね。

ー「まっすぐに伝えない」ということはどういうことでしょう?

新野さん:「これを聞きたい」「これを伝えたい」をそのまま文章にしたって、真面目すぎて面白くない。説明的になりすぎると、押し付けになるというか、その人の魅力が半減してしまうというか…。雰囲気や輪郭を言葉やそれ以外でどのように伝えられるかにはいつも悩んでいますね。

ー新野さんは普段はコミュニケーションデザイナーとしてお仕事をされていますが、今回デザイナー目線ではなく、編集者としてタブロイドを制作して思ったこと、感じたことはありますか?

新野さん:相手の伝えたいことを読み取ったり、そのための構成を整理したり、どのような方法で伝えるかを考えるのが編集だと思っていて。その内容に対して、どのようなアウトプットにするかを考えるデザインと似ているなと思うところもあります。ただやっぱり、編集の引き出しがなさすぎて…(笑)

さっきも苦戦したことで話しましたが、Aさんのことを伝えるにしても、「Aさんの口調を伝える」のか、「私から見た視点のAさん」を伝えるのか、もしかしたら文章じゃなくてもいいのかもしれないなとか。そこは中澤さんにアドバイスをもらいながら進めていました。

ー私がいつも新野さんにデザインの引き出しを教わっているような感じですね。

そう。そんな感じです。あそび心でもいいし、「私ならこんな長い文章読まない!」というひねくれ精神でもいいので、柔軟に発想転換のチャンネルをどんどん増やしていったら、もっとみんなも楽しめるような企画になるかなと思いつつ、やっぱりまだまだ難しいなっという感じです。

編集の「定量的視点と定性的視点」や、「統一表記表」を学んだのも初めてで、まだヨチヨチ歩きをしている気持ちです。でも編集視点を鍛えるとコミュニケーションデザインにもいい影響がそのうち出るかもしれないと思っています。単純に編集をするのは結構おもしろいです。元々本を読むのも好きだったし、好奇心旺盛で人が好きな性格なので、それは活きている気がしていますね。編集でもコミュニケーションデザインでも。

ー逆に今回編集者として私やデザイナーさんに指示をして困ったことはありましたか?

新野さん:おすず(すずね:インタビューアー)に文章を書いてもらったけど、文章の書き方や言葉のニュアンスなど、どう指摘していいか不安はありました。「ここはもっと言い方ある気がするけれど、私がこう思ってるだけだしなー」って、その感覚が正解かわからない。ベターになるように、自分も勉強しながらでした。そういう意味では今の自分の限界からしか、おすずに教えられないというプレッシャーが大きかったです。もちろん中澤さんやBOSSにチェックはしてもらうものの、自分の限界がこのタブロイドの最大値になってしまうので。今回のタブロイドは私と奥谷さんの最大出力なんです。それを出し切ったという点では誇れるところですね。自分たちを制限しないためにも、自分をアップデートし続けなきゃいけない。クリエイターとして、そこに向き合わなくてはならないなと思います。

(後編に続く)

さいごに

後編では、制作での秘話やZINE FESについて新野さんとお話ししていきます。すでに制作がスタートしているというタブロイド「ROBERT」の次号のテーマについても伺っていますのでお楽しみに!そしてロバート下北沢 タブロイド 「ROBERT」の創刊を記念してイベントを2日間に渡って開催いたします!


⚫︎7/26(金)19:30〜:レセプションパーティー19:30〜
タブロイドの世界観をロバート下北沢の空間に投影!私たちタブロイド制作チームと交流しながら、空間装飾の最後のピースをきていただいたみなさまと一緒に完成させる日です。

⚫︎7/27日(土)19:30〜:創刊記念パーティー
バンドやDJの演奏を聴きながら、タブロイドの世界観に合わせたフードやドリンクが楽しめるパーティーとなっています。

詳しい情報はロバート下北沢のインスタグラムに載っていますのでご確認ください。


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