水彩画は即興演奏に似ている
写真を一通りやったから、水彩画が以前とちがうように見えたと書いた。
同じように、音楽をつづけてきたからこそ発見した水彩画と音楽の共通点もある。
それは、水彩画が、即興演奏に似ているということ。
下絵は、作曲または演奏プランのようだ。細部まで書き込む場合もあるし、大まかな枠組みにとどめる場合もある。ちなみに今回の個展は大まかな下絵を用いた。
パレットで色をつくるのは、音色を決めるのに似ている。楽器の選択、シンセサイザーの音づくりだけでなく、たとえば同じピアノの和音でも、音の高低や強弱で表情は違うし、アルペジオにしたり、密集/乖離和音のちがいでも差が出る。それを考えるのは、パレットでの色づくりに似ている。
そして、紙に彩色する作業は、即興演奏に似ている。
水彩画、とくににじみを活かしたり透明感を出そうとすると、油彩などとちがい、塗り始めて乾くまでの一発勝負。一度乾いたら魅力的なにじみはつくれないし、重ね塗りをすれば透明感が薄れていく。
そのときの緊張感は、即興演奏のそれそのもの。前もって頭のなかで描いたとおりにはなかなかならない。瞬時の判断を繰り返しながらリズミカルに塗っていく。すごくむずかしいが、それゆえに思いがけない色ができたりする。