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発達障害の本を100冊読んで「片付けられない女たち」を選びました

発達障害の本を100冊よんで、ここから一冊選ぶ。うーん、悩みます。悩みますが、、、これにします!サリ・ソルデン「片付けられない女たち」です。

自分の発達障害の体験に1番近いのがこの本だったからです。

この本は、1995年発行、日本では2000年に翻訳版が出て、発達障害ブームを引き起こしました。私もテレビで「片付けられない女特集」を見て、これダァって思って、このおかげで人生変わりました。

ちょっと古い本だけど、再読したらやっぱりすごかった。

特にすごいのは「成人女性の発達障害」の事例数!

大人の発達障害、しかも女性のケースをこんなに集めた研究は、もしかしたら30年たった今もないかもしれない。

サリ・ソルデンは全米のADHD(注意欠陥・多動)、ADD(注意欠陥のみ、多動なし)の女性にインタビューし、カウンセリングし、大会を開き、著者自身も「私もADDだったわ!」と気がつき、自分自身も研究に織り込まれていきます。

当時、発達障害は男性や子供の病気だと思われていました。片付けられないのは女性失格、なまけ者だと思われていた。いや、今だってそう思われる事はよくある。

20年前、読みながら「あーそうそう、そうなんだよ!」ってなって、目から鱗がぼろぼろ落ちて、自分だけじゃない、めちゃくちゃ沢山いる、どこにでもいるんだってほっとした。そして大量の困り事と解決策、それは昔も今も変わらない。

20年前、私の青春時代のこと

当時、TVの特集を見て「わー、おんなじだ!」「片付けって努力じゃできないんだ」ってびっくりしたのを覚えている。マジで天地がひっくり返った。本屋にいったら店頭に山積みで、おんなじ悩みの人が沢山いるんだと思いました。

この帯!これですこれ!!!Amazonに帯付きの画像がありました。https://www.amazon.co.jp/dp/487290074X

読んでみて、片付けられない事例や、発達障害の女性が社会とぶつかる事例がたくさん載っててスゲーっなるほどーって思いながら読んだ。そして、困った時の対応や、普通の人との付き合い方を考え直した。それまでは自分が悪いって思ってて、いつも惨めな気持ちを引き摺っていた。そしてどうにもならない事は精神科に相談するといい・・・とあった。

でも精神科にいくのは怖かった

近くの精神科を調べて、行こうと思ってやめたり、様子を見に行ってやっぱり無理って引き返した。ようやく心療内科でもいいらしいとわかって、探して、見つけた。それでも地獄の門をくぐる気持ちだったんだよ。門をくぐって受付をして待っている間も、あーもうだめだって、とても惨めで、押しつぶされそうな気持ちだった・・・。

この気持ち、忘れないようにしたい

なんとか診察を受け、子供の頃の話を聞かれ(何でそんな事聞くの?嫌すぎる!って思った)、今現在の事を聞かれ(そんな恥ずかしい事言えるわけない!)、「片付けられない女のテレビを見て来ました・・・」とようやく言えた。長いアンケートに答えた(めんどくせぇ)。

そこで診断されたのが「あなたは立派な発達障害です」(やっぱり!)「一生治る事はありません」(がーーーーん!!!)「家事代行をおすすめします」(えっ、なにそれ!)

家事代行・・・!?

「片付けられなくても、誰かに片付けてもらって立派に生きている人は沢山います。」「まずはやってみてください。」

た、たしかに!!!!!

青天の霹靂でした。それから週一でカウンセリング(5000円?たっかいなー)とリタリン(たっかいなー)の処方を受ける事になって、なんかよくわからないけど、すっきりした気持ちだったのを覚えている。

家事代行を頼んだ事で生活が劇的に改善し、カウンセリングは意味がわからなかったけど日々むかつくことを話すと楽しいので、おじさんがキャバクラに行くみたいなもんかなと気楽に続けました。今考えると、すごくいいカウンセラーさんだったんだわ。

当時はぜんぜんわからなかったけど、今ふりかえってみると、どうにもならない状態から、どうにかする方向へ舵を切った、転換点だったと思います。

そして、20年ぶりにもう一度読んでみたわけです。

いやーもー思い出だらけ!きゃー転がっちゃう!青春だわー!!!

本の概要

第1部 生きのびる

第1章から第5章では、ADD/ADHDを持つ女性の事例が紹介されています。「散らかったクローゼットから」に始まり、「片付けられない少女が大人になったとき」までの各章では、診断が遅れる背景やその影響について詳述されています。今だにあるあるだらけで泣いちゃいました。

(以下、イラストはアメリカの電子図書館、インターネットアーカイブで公開されている、原著から引用したものです)

アメリカ人もそうなのかー!(30年前)(Sari, 1995)

第2部 隠す

第6章から第9章では、ADD/ADHDをもつ女性がどのように社会の期待や自己の不安と向き合いながら生きているかに焦点を当てています。「女性の役割とADD」や「足を引っ張るマイナスメッセージ」など、文化的背景が彼女たちに与える影響を詳細に分析している。

きっとあれだ、フェミニズムの運動と連動している。男の子は片付けてもらえるけど、女の子はだらしがないって怒られる。私にとって生きる事は常識に逆らうことだった。その事にずっと引け目を感じでいたけど、この本は自信をもたせてくれた。この章はよく覚えている。20年間本当に役にたちました。必読。

女性の発達障害はめちゃくちゃ大変だというイラスト(Sari, 1995)

第3部 開く

第10章から第13章では、診断と治療のプロセスについて取り上げている。

特に「診断から逃れる女たち」では、困難を訴えて受診しても、型通りの診断では漏れてしまうケース、「診断を受けに行く前に」では、診断を受ける際の課題や準備について具体的なアドバイスがかかれている。

今でも医療や支援、誰かにお願いする時の基準になっている。
医師やカウンセラーの中には「発達障害は甘え」「微細脳障害」という人もいた。そういう診断にあったら回れ右して帰ることができた。発達障害のガイド本の中には、やっぱり気持ちの問題とか親のせいだとかいうものもあった。ゴミ箱にポイだ。家事代行の人の中には「どうしてこんな簡単なことができないの?」って小馬鹿にする方もいた。そんな時、以前だったら傷ついておしまいだったけれど、この本にはそうした毒になる支援は断われ!って書いてある。それでチェンジをお願いした。

いま、自分にあった医療や支援を受けることができているのは、この本のおかげだと思います。ありがたい。

毒になる支援のイラスト(Sari, 1995)
それにつけても壁の高さよ(Sari, 1995)

第4部 認める

第14章から第18章では、ADD/ADHDを持つ女性がどのように自己を受け入れ、再構築していくかを探る。「乱雑さを受け入れる」や「キャリアと三つのR」など、具体的な方法論が提示されており、自己理解と成長のプロセスが描かれている。

再構築の3Rのイラスト(Sari, 1995)

いやちょっと、この章はすっかり忘れていたのだけど。たぶん、かなり厚みのある本なので、前半をパラパラ読んで感動して満足して、後半はほったらかしだったのかも・・・😅

普通に生きるだけではなく、キャリアアップして成功を収める事が目標

って、すごい。
大抵の障害をなんとかしましょう本は、普通に生きることを目標に、つつましく、わきまえて暮らすように導いている。この違いって大きい。他と違っても、常識から外れていても、うまくいく所を探して、そのサイクルを回していけって事でした。いやはや、これはもうやるしたないですね!

原著

1995年発行の「Women with attention deficit disorder : embracing disorganization at home and in the workplace」がアメリカの電子図書館、Internet Archiveで公開されていました。(https://archive.org/details/womenwithattenti00sold/)

一冊まるまる無料で読める。音声読み上げと読みが困難な人には貸出延長とダウンロードのサービスがあり、申し込んだら1週間でOKになりました。アメリカ太っ腹だわー。続いてほしいので、ちょっとずつ募金してます。1ドルとか5ドルとか。

英語はよくわからないけど、目次はなんだか歌みたい。くすくす笑いたくなる感じ。イラストが大きくてたくさんある。パンチがきいてて見ているだけで楽しくなる。

冒頭の「Essay: The Buried Treasure」のイラストは宝探しの旅に出ようと誘い、中盤の「Essay: Diamonds in the Rough 」ではADDの女性をダイヤモンドの原石に例えている。
「CHAPTER 5 Disorganization: The Disorder of Dis-order」無秩序: 秩序の障害は、なるほど、まさにその通りと思った。

単なる悲劇で終わらせない、楽しみながら戦い、幸せとお宝を手に入れようというメッセージが心地よい。日本語版はそれにくらべると穏やかな印象だ。2000年の日本では難しかったかもだけど、令和の今ならありなんじゃないかな。

感想

「片付けられない女たち」は、1995年当時、子供や男性の障害とされてきた発達障害が、成人の女性にもあり、同じ障害でも社会からの要求が異なるため、現れる症状や立ちはだかる困難が異なる事を示していました。

30年たった今も結構そうで、CAARSなど発達障害の問診票は同じスコアでも女性の方が評価が重い。ここらへんは問診票を作った経緯がわからないから推測だけれど、同じ症状でも女性の方が生活や仕事への影響が大きいという事なんだと思う。

これを30年前に研究して書いたって事もすごいし、これを超える本が見つからないのは、その後の予算やブームや大人の事情が絡んじゃっているんだろう。でもさ、でもだよ、人生は続くんだよ。これから先がどうなるか、知りたいじゃない?必要だよね?

続編が何冊かでているのですが残念ながら翻訳はされてません。いやいや、翻訳して出版してほしい。それまでは、ChatGPTもあるし、ちょっとずつがんばって読んでみようと思っています。




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