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百人一首企画 MOMIJIオブ LIFE

三羽さんの企画
「百人一首で百人百色」
に物語と絵で参加します。

#32
山川に風のかけたるしがらみは流れもあへぬもみぢなりけり
(古今集 秋 303)春道列樹



地球人というのは
それなりの頭脳を持つのにも
関わらず、感情に翻弄されながら
ひどく愚かな暮らしをしている。

地球外の生命体にとってはひどく
不思議な生命体である。


「感情ってなんなん?」

この研究調査のため毎年かなり多くの宇宙人が地球にやってくる。

この任務の難しいのは帰還率がひどく悪い。
地球で「感情」を体験するためには、たとえ宇宙人といえども「赤ちゃん」の形態からはじめなければいけないのだが、どういうわけだか任務をみんなすっかり忘れてしまう。

「感情」に夢中になってしまうのだ。

この度帰還することになったKG-7N874104Kも宇宙から来たことを忘れこそはしなかったが、帰還する日を延長しまくった1人である。

延長の理由はさまざま。
「期末テストがあるんです。サイアクだけどこれ受けないと。」
みたいなのから始まり、
「フった男を見返したい。まずはダイエットをする。」
という謎の目標や、
「私がいないと彼が泣く。」
という前の男はどうなったというもの
「歌手になろうかと思う。この道は厳しい。もう少し時間がいる。」

「子育てに忙しい。ひと段落するまで無理。」
「親の介護をしなくてはならなくなった。」
などと次から次へと出てきて全く要領をえない。
「面白くてたまらないからもうちょっと。」
というときもたまにはあるのだが、そんなことはごく稀で決して長続きはしない。

延長につぐ延長の末、強制帰還となったKG-7N874104Kは宇宙船にのるとかつての自分を思い出してきたようだ。

「あんなにめんどうなことだらけなのに、なんでさっさと帰らなかったんだろう?」

KG-7N874104Kは離れゆく地球を窓から覗きながらおもった。

こたえは自分でもにわかには信じられないものだった。

あの一連のゴタゴタこそが私を地球にとどめる魅力だった。

なぜか目から涙がでた。

その一瞬、宇宙船へ影響する地球からの引力だけがグンと上がった。宇宙船はスピードを最大加速し、ことなきを得た。

まもなく窓から地球の姿は消える。KG-7N874104Kも感情を忘れ、本来の理性的な宇宙人に戻るだろう。


歌の解釈が本来のものと
少しずれるかもしれないのですが

風のつくった「しがらみ」(はなれがたくする、堰)は美しい紅葉の吹き寄せられた姿だったという発見。

面倒ごとと思っていることは、振り返ってみると、一つ一つは彩り豊かな紅葉🍁のようであるのかもしれないと思いました。

これがこの世から去り難い理由で、この世にとどまる理由になっているのかもしれません。

でも私は今のところゴタゴタは足りてるので、これ以上はないほうがいいです🤭

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