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検証 私は仕事ができたのか?

6年ほど前の2月あたり
だったと思う。
私は自信を必要としていた。

複雑な流れがあり、PTAの役員になることになったのだった。
仕事を離れ、ずっと子育てに明け暮れていた私には荷が重い。

「私にできるかな?」

そこで思い出したのが
それより数ヶ月前の大学時代の友人からの一本の電話だ。


「やっほー!同窓会これなくて残念!。けっこう楽しかったよー。ミルコの上司だった人も来てたよ。あいつ来てないの?ってきいてきた。ミルコのこと褒めてたよ!」

かつての私の上司で、私の研究室の先輩といえばあの人物ではないか。

「あっ。それ嘘だから!!めっちゃ外面いいからその人。私怒られてばかりいたし、いい先輩みたいに思われたくて言ってるだけだわ。信用しちゃダメだよ。マジで。」

「えー?そんな感じじゃなかったけどな。めっちゃ褒めてたよ。あれから女性技術職けっこう採用したけど、あいつが1番仕事もできたし頑張った。伝説だって。

仕事ってラウンジ1日体験か?
全く意味不明である。



いや、あの話マジかもな!
私レジェンドなのかもな!

藁にもすがる思いで
自信を必要としていた私は
検証の誘惑に勝てなかった。

「ミルコは伝説なのか?」

しかし、どうやって検証すればいいのだろう?

昔の会社に電話をかけてみる

「もしもし、かつてお世話になっていたゆらゆらです。そうです、そうです。ご無沙汰しております。時に一つお伺いしたいことがあるのですが、今私はそちらで仕事ができた女として伝説になっているというのは本当でしょうか?」

ダメだ!
格好悪い。


しかし、私は諦めなかった。
考えに考え、伝説検証に適任な1人の人物を思いついた。
M。あいつだ!

説明しよう。
Mは私と同い年の職場仲間であり、会社公認で家業を引き継ぐまでの間社会勉強として同業のうちの会社に勤めていた男である。

Mはもう会社を辞めて、家を手伝っているはずだし、同業者としての付き合いも切れていないのだから もし、私がレジェンドならば知っているだろう。知っていなくても探ってくれるだろう。

Mに決定!!

こうしてMに白羽の矢を立てた。私は早速彼の携帯番号を探した。



無い!!

当たり前である。会社をやめてずいぶんになる。
私は会社の電話番号と会社をやめてもしょっちゅう電話をかけてくる常務の電話番号以外消去していた。


Mの電話番号をかつての会社に電話して聞くのはおかしい。


さてどうするか。

私は諦めなかった。


Y子だ!!

Y子ならばMの電話番号を知っているはず!


説明しよう。Y子は会社ぐるみの付き合いのあった別の会社の社員である。なんか知らんけど私以外にうちの会社のMと仲良かった。


私はMの電話番号を聞くのに
久しぶりにY子に電話した。



おじいさんがでた!

話が通じない。
Yの関係者ではないようだ。

え?
そういや年賀状に手術する
って書いてたよ。
大丈夫だったのかな?

新たな心配が増えてしまった…。


しかし私は諦めなかった。


何の気なしにネットでMの会社を調べてみた。
おお!社長になってんじゃん!
あのお父さん引退したのー?
(こちらも会社ぐるみの付き合い)
会長になってるわ。

元気そうじゃん。


あれ?

お問い合わせ先に
携帯番号書いてる。

このご時世になんと
不用心な!!

私はガッツポーズを決めた!


携帯に電話する。


でない。


ショートメッセージが返ってきた。


「今電車です。
折り返し連絡します。」

…なんかめんどくさくなってきた。

ショートメッセージを送る。


「お久しぶりです。ゆらゆらです。ちょっと聞きたいことがあったのですが、大したことないのでもういいです。」


「気になるけどわかりました。」


あーあ。くだらんことに1日費やしてしまった。



夜ある恐ろしい考えが
頭をよぎった。

「お問い合わせ番号の携帯持ってんのMとは限らない。」



説明しよう。かつて私の勤めていた会社はろくでもない連中の巣窟であった。
お互いの携帯に来る出会い系メールの返事を男同士熱心に力を併せて練り上げている。
そのような光景を私はよくみていた。


眠い目をこすり
私は再びショートメッセージを送った。


「やっぱり聞きたいので、明日いつでも良いので連絡下さい。」


なんてことだろう!!
伝説を確かめるどころか
私はY子の近況とMの電話の持ち主と新たに2つの謎を手に入れてしまった!!


そういや
こんな感じだったな…。
勤めていた時も。


「おうい。もしもしー?」
「なんのはなしだったの?」

翌朝1番にMは電話をくれた。

良かった。本人の電話だった。

Y子に電話したらおじいさんがでた話をした。


「こないだ喋ったけど元気だったよ。」


電話番号を確かめたら数字が一つ違っていた。私が携帯を買い替えた時に間違って入力したのかな…。


気になる伝説の話をしたら
大笑いされてしまった。

「また聞いとくわ〜!」

「聞いたらダメ!この話絶対に言わないで!!伝説が壊れるから!」


しばらくくだらない話をして電話を切った。

それから常務からおちょくりの電話はかかってこなかったところをみると、Mはちゃんと黙っててくれたに違いない。


こうして伝説検証は
失敗に終わった。

知りたい
けど知りたくない
神秘をとっておきたい

この法則は
ここに発見されたのである。


なんのはなしですか

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