【詩】裏切前夜

私は知っている
お前が勝負を賭けてくるのは
明日だ

明日でなくてはならぬ

手塩にかけて
それをお前に教えこんだのは
私である

お前は今
絶頂の最中にいる

自分の力を試したくて
こらえきれないでいる

驕りは若さを引き立てる
眩しくもある

正直私はまだ勝てる
しかし明日私はお前に王座を譲ろう

お前の他に譲れるものがおらぬのだ

ギリギリの勝負をしてやる
私からの花向けだ

私を倒し
この王座の重さを知れ

お前はますます強くなるだろう

お前と
この重圧について語り合って
みたかったが

王座は一つだ
それはゆるされぬ

明日
お前は手に持つその剣で
私の喉を掻き切れ

私は死霊となりて
お前の働きを
守護せんと欲す

たまに
蹴飛ばすかもしれんが
それはゆるせ

遠慮はいらぬ
全力で来い

お前がことあるごとに
私を想い出すように
私も深手の傷を
お前に負わすつもりだ

それでも忘れろ
忘れてしまえ

私の死屍を超えてゆけ

ああ明日がたのしみだ
明日お前が勝負をかけてくる