見出し画像

落下する林檎のお知らせ(エッセイ)

昨晩遅くに
林檎を剥いた。
皿を持つ子の横で。

いいと思うでしょう?
幸せそうでしょう?
私も思いました。

剥き終えた林檎を皿に置く。
ところが僕ちゃん
いったいどうして流しの上に
差し出した皿を
突然引っ込めてしまうのか。
不思議。

あちらからみると
まな板に置けば僕が皿に盛るのに
いったいどうして剥いた林檎を
母は突然流しに落とし始めるのか
不思議。

二つ落としたこの林檎
洗って私が食べるから
残りの林檎を皿にのせ
食べるといいわと笑っても
林檎なんかいらないと
黙ったまんまでむくれ顔。

しばらくしたら舞い戻り
「落とした林檎は僕食べる。」
「そういうわけにはいかないな。」
そしたらまたまたむくれ顔

それならそれで折衷案。
落ちた林檎と
落ちない林檎
それぞれ一つ
母さんと
一緒に食べるのどうでしょう?

そんなのダメだと怒ってる
林檎なんかもういらない

そうかそうかと諦めて
立ったまんまキッチンで
落ちた林檎を洗って食べた

やっぱりちょっと味落ちる。
二つめかじったその途端
坊やはまたまたやって来た。

母さん勝手に食べてるの?
一つずつの約束は?
あらまたプンプン始まった。

「だったらこうする」と言いまして
お皿の林檎を落とします。
そして洗って食べました。

約束なんかしたかしら?
私はとっても不思議です。

返事をしてないはずなのに
林檎食べちゃうお母さん。
坊やもとっても不思議です。

あちらからみると
私はちょっとせっかちみたい。
私はまだまだゆっくりしていいんだな。

へーんなの。

いいなと思ったら応援しよう!