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🐸カエルの合唱🐸

きょうだいが産まれる時に私は1人祖母の家に預けられたことがある。
2歳か4歳どちらかだ。

とても大切にしてもらっていたけれど、遊び相手のこどもは他にいないし、退屈だった。
家に帰りたい気持ちを抑えて、食べなれない味のごはんもちゃんと飲みこんで、わがままも言わずに過ごしていた。

ところが毎晩 大音量でとっても恐ろしい何かの鳴き声が聞こえる。
こんな声は聞いたことがない。

私は母に祖母の家でいい子でいると約束したので、怖いとは言えなかった。
怖いと言うのは別に悪いことじゃないんだけど、自分で禁止していた。

だけど気になる。
声の正体がわかれば安心できるのではと考えた。

祖母の話の長いのを警戒して、
私は会話を避けていたのだけれど
思い切ってきいた。

「おばあちゃん、
あのこえはなぁに?」


はじめ、祖母はなんの声だかわからないようだった。

私はあの声が聞こえないなんてウソだと思った。

しばらくしてなんの声かわかったようで祖母は口を開いた。

「ああ。あれはね。カエルの声だよ。」

私は祖母のことを大嘘つきだと思った。
カエルの声なら知っている。
カエルがあんな声で鳴くはずがない。
私が怖がることを隠してる。
この人は私を帰さないつもりかもしれない。

私はしっかり心を閉ざして、祖母とはもう口を聞かないことにした。

そうしていく日かたった晩、母が私を迎えにきた。

玄関に急いで、私は真っ先に
母に尋ねた。

「おかあさん。
あのこえなぁに?」

母はこたえた

「ああ。あれはね。カエルの声よ。ウシガエルというの。」

カエルだったのか。
私は拍子抜けした。

茶の間で祖母と母がだまりこくって過ごした私の話をしていた。

相変わらず祖母の話は長そうであったけれども、私はこの話が終わったら家に帰れることを知っていたので気にならなかった。

そして、ウシガエルがどんなカエルかだなんてもうどうでもよかった。


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