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【短編小説】逆ホワイトデーってなんだろ

「もしもし、いま家にいる?」 「いるよ。どうしたの?」  突然、通話してくるのにも、もう慣れた。メッセージだって、私が1分も空けずに既読するってわかってるくせに。どうしても会いたいときにだけ、通話してくる。 今日はどうしたんだろう。バイトで嫌なことあったかな。店長に連絡してほしいとか、授業のこととか、なんかあったかな。 「まあ、ちょっとさ。交差点のとこまで、出てきてよ」 「うん、わかった。何時ごろになりそう?」 「あと、10分くらいで着くから」  わかった、待ってる。そ

    • 推しのいる生活と同居人

      斜線堂有紀「愛じゃないならこれは何」のなかの一遍、「ミニカーだって一生推してろ」の、新作恋愛短編「ミニカーを捨てよ、春を呪え」が公開されてた。2023/9/1 https://note.com/jump_j_books/n/nf299826cb1ca めるすけの彼女 瑠璃が文字の中から一生懸命情報を手繰り出そうとしていた、噂の”彼女”の話だった。 「君の長靴でいいです」の妻川の彼女みたいな、ふつうで黄緑色の長靴をはく女の子だと予想していた。すべて予想に反していた訳ではない

      • 寒さはひとを寄らせるらしい

        冬の寒さを具体的に感じなくなった。 高校まで公立のところへ通っていたから、教室にエアコンはなくて、廊下はきんきんと冷えてた。 通学は自転車で、冷たい空気が体中に張り付いて、ぶるぶる震えながら、強張る首が痛くなった。  冬の具体的な寒さを感じるたび、大人が羨ましかった。エアコンがあるところで活動して、車でどこへでも行ける大人になるのが待ち遠しかった。 いま、文明の利器に存分に浸かれるようになって、季節の候を感じなくなった。快適だ。非常に快適。やはり、体温の変化は生命にかかわ

        • 心捕われちゃった!!

          初めてじゃないけれど、心が慌てふためいて、生娘のようにさせる。きっと、あなたに感想をもらえた、この事実が私だけをそうさせる。 たぶん3回目です。なろう小説をひとに見せることは、とんでもなく恥ずかしくて、馬鹿にされても良いひとにしか見せられない。おざなりで、子どもが書いたものだけれど、時間を掛けたものだったからひとに見せるなんて、軽く馬鹿にされたらきっと耐えられない。未熟で完結もさせられなかったけれど、あの頃の私はちゃんと書いてたから。 だから、きっと読んでもらえて嬉しいが

          愛とは、恋愛とは

          「愛じゃないならこれは何」 斜線堂有紀 面白い、救いになった。 恋愛について悩み、ひとに気持ちを表すのが難しい、わたしの陳腐な日々に、言葉を与えてくれた。 あと何回、わたしの人生でこの瞬間が訪れるのか、まだ生きていたいと思えた。 このひとが書く言葉を、まだ知りたい、教えてほしい。ひとがひとに持つ気持ちを、言葉にしてくれる。ありがとう。 「ミニカーだって一生推してろ」 もしこの話が人生なら、ただの一幕に過ぎないのだと思う。だって、めるすけは結ばれようとしていないし、瑠璃は

          愛とは、恋愛とは

          拝啓 深水さんへ

          いつか、ここに書くことをあなたに伝えられることを、切に願います。 あなたのことが大好きです。あなたが優しいから、あなたがひとを見ていて、ひとに苦しんでいて、幸せになりたいと願う姿が好きです。 こうして書くと、本当にわたしは偉そうで、まるでわかったふうに見当違いをお披露目しているのです。それでも、好きです。  あなたが生きてきた世界が私とは違いすぎて、あなたが使う言葉も、考えている全てが思いもよらないのです。あなたともっと話すことができていたら、もしかしたら、いますでに共通を

          拝啓 深水さんへ

          人間非対応な君に会いたい

           てれかすさんに似合うのはどんな場所だろう。てれかすさんのふんわりランドリーは、イメージぴったりで、すごく良いワールド。あれを作ったひとは天才だと何度でも思う。もしあそこで会うことができたら、僕はなんて言えるかな。いざ会えたら、きっと言葉が詰まって、大好きですしか言えたいんだろうな〜〜。  VRCに温度や空気が存在してたら、どんな感じかな。てれかすさんって息してんのかな。  冬の夜のコインランドリーの、暖房の風にぬるっと包まれながら、ときおり刺さるような隙間風に体を縮こませて

          人間非対応な君に会いたい