がん患者における血糖コントロール
糖尿病で他院通院中だが、食事摂取不良や体重減少などの理由で精査した結果、切除不能進行癌で消化器内科に紹介されてくるの患者さんは少なくない。
特に、糖尿病患者さんにおける膵癌や肝細胞癌のリスクが高いことは知られており、本来ならば定期的な画像でのfollowが望ましいが、残念ながら進行した状態で紹介されてくる。
引用)
・Ben Q, et al:Eur J Cancer. 2011;47(13):1928-37.
・Renehan A, et al:Lancet. 2010;375(9733): 2201-2.
疾患/薬剤特異性の注意点
・肝細胞癌:最近はB型肝炎やC型肝炎からの肝細胞癌は減少の一途をたどっており、逆に非アルコール性脂肪性肝炎、アルコール性肝硬変からの肝細胞癌が増えている。もとから生活習慣が乱れていることが多く、肝硬変状態の場合は脾機能亢進による赤血球寿命の低下もあることから、HbA1cは実際の血糖コントロールより低値になる傾向がある。
→HbA1cでの経過をみるよりもグリコアルブミンのほうが実態を反映している。
・制吐薬として大量のデキサメタゾン投与を含むレジメン
mFOLFOXをはじめとする大量のデキサメタゾン投与を含むレジメンでは、糖尿病がなくても糖尿病が顕性化し、著明な高血糖を呈することがある。
そのため、ステロイドを多く使用するレジメンの場合は、糖尿病でなくても定期的な血糖測定が必要。
化学療法中の注意点
①化学療法による神経障害で、インスリン自己注射が困難となる
→内服薬でのコントロールを考える
②化学療法中の体調変化や食事摂取量低下をきたしやすく、低血糖のリスクが高くなる。
→シックデイの指導とともに、低血糖を起こしやすいスルホニル系薬剤とインスリン注射からの変更を考える。基本的に低血糖を起こしにくいDPP-4阻害薬を基本に組み立てる。
③食事制限は緩く、そしてある程度の高血糖は許容する。
固形癌の進行癌の場合は、残念ながら大半は完治を望めない。
その場合、好きな食べ物を糖尿病で我慢することはなく、食欲があるときに食べてもらうこともQOL向上のために重要だ。
化学療法中の血糖コントロールの目標値
化学療法中の血糖コントロール目標には、確たるエビデンスはない。
しかし、高血糖と低血糖は身体全体に悪影響を起こす可能性は高く、年齢にもよるがA1cは9未満に管理するのが一般的である。逆に言えば、悪くなければ緩く管理してもいいのではないかと考えている。(健常域の7未満を目指す必要はない)
低血糖は低血糖発作が起きないように、高血糖は糖尿病性ケトアシドーシスが起こらないように。