見出し画像

月の夢

タイトル:「月の夢」
作ってて気に入っちゃって
作り直したり、もっと良く出来ないかなとかしちゃってるやつです。まずは1つ目を載せます。

基本的にぼくのストーリーに出てくるのは
佳代ちゃんと、もう1人の青年。

世界線はいろんなパラレルがあって
いつもは「ぼく」視点だけど、今回は初めて佳代ちゃん視点で作りました。よろ。

1. 深夜のカフェ

東京の夜、人気の少ない路地裏にひっそりと佇むカフェ。22時、静まり返った店内で、佳代は一人ココアを飲んでいた。マグカップから立ち上る湯気が、ぼんやりと夜の空気に溶け込んでいく。

その時、突然聞こえた声。

青年:「月、綺麗だね。」

佳代は顔を上げると、少し離れた席に座っていた青年が微笑んでこちらを見ていた。

佳代:「……だれ?」

青年:「僕は君を知ってるよ。一度逢ってるからね。」

佳代:「は?何それ。」

青年は椅子を引いて、勝手に佳代の向かいに座る。

青年:「いや、一度じゃないかもしれない。」

佳代は眉をひそめ、飲みかけのココアを見つめた。

佳代:「なんの話? 変な人。」

青年は少し笑って言う。

青年:「そのココア、いいな。僕もココア好きなんだ。」

佳代:「……ふーん。」

佳代は少し警戒しながらも、青年の柔らかい物言いに力が抜けていくのを感じた。

青年:「こんな時間にココアを飲んでる人って、あまりいないよね。」

佳代:「眠れなかっただけ。」

青年はうんうんと頷き、ポケットから何かを取り出す。

青年:「ねえ、もう少し話さない? 連れて行きたいところがあるんだ。」

佳代:「連れて行きたいところ?」

青年は立ち上がり、店を出ようとする。

青年:「ほら、そんなに怖がらなくていい。変なところじゃないから。」

佳代はため息をついて、ココアを飲み干すと、マフラーを巻いて立ち上がった。

2. 自販機のセブンティーンアイス

二人が歩いたのは、純情商店街の夜の道。深夜の静けさの中、商店街の看板だけが蛍光色にぼんやりと光っている。

佳代:「で、どこ行くの?」

青年:「すぐそこ。ちょっといいものを見せてあげる。」

数分ほど歩くと、街角にぽつんと佇む自販機の前に辿り着いた。

佳代:「……これ?」

青年:「そう。セブンティーンアイス。」

青年はポケットから小銭を取り出し、自販機に入れる。そして、ポトンと落ちてきたアイスを手に取り、佳代に差し出した。

青年:「夜中にアイスを食べると、少しだけ現実が軽くなるんだよ。」

佳代は呆れたように笑った。

佳代:「意味わかんない。そんな理屈、初めて聞いた。」

青年:「いいから、食べてみなよ。」

佳代は受け取ったアイスの包みを開けて、一口食べる。冷たいバニラの甘さが口いっぱいに広がった。

佳代:「……意外と悪くないかも。」

青年も同じアイスを手に取り、頬張る。

青年:「ほらね。」

二人は自販機の前に座り込み、静かな夜を共有する。

佳代:「ねぇ、なんでこんなことするの?」

青年:「なんでだろうね。でも、こうやって一緒にいると、少しだけ自由になれる気がするんだ。」

佳代は空を見上げた。夜空には、月がまるで二人を見守るように浮かんでいる。

佳代:「月、綺麗だね。」

青年:「うん。」

商店街の静けさと、時折聞こえる遠くの電車の音。二人の会話は途切れ、けれどそこには居心地の良い沈黙が流れていた。

少しずつ、二人の距離が縮まっていくのを佳代は感じていた。

3. 終わりのない夜

小田急線の踏切近く。静寂に包まれた線路が、月明かりを受けて鈍く光っている。

二人は線路脇に立ち、時折遠くから響く夜の音を聞いていた。

佳代:「ねぇ、本当にあなたは誰なの?」

青年は少し間を置いてから、ふざけたように答える。

青年:「え? 僕? 宇宙から来た秘密のエージェント。」

佳代は呆れたように笑い、肩をすくめる。

佳代:「ふざけてるでしょ。」

青年:「いやいや、まじめだよ。でも正体を明かすわけにはいかないからさ。」

佳代は少し眉を寄せ、再び尋ねる。

佳代:「どこから来たの?」

青年は空を見上げ、ゆっくりと月を指さした。

青年:「あそこからだよ。」

夜空に浮かぶ月は、少し欠けていて、まるで何かを隠しているように見えた。

佳代:「……変な人。」

佳代は笑いながら言うが、その声にはどこか小さなため息が混じっていた。青年はそれに気づいたのか、少し寂しそうに微笑む。

青年:「変って言われるの、嫌いじゃないな。」

二人はしばらく何も言わず、線路の先をぼんやりと眺めた。月の光が降り注ぎ、影がゆらゆらと揺れている。

青年:「佳代ちゃん、時間ってさ、時々止まるんだよ。」

佳代:「どういうこと?」

青年:「こうやって二人でいるとき、ほら……時間なんてなくなって、ただ夜だけがずっと続いている気がするだろ?」

佳代は少し考えてから、小さくうなずく。

佳代:「たしかに、終わりがない夜みたい。」

青年:「そう。終わりのない夜だ。」

青年は手をポケットに突っ込み、佳代の方を向く。

青年:「でも、この夜もいつか終わるんだよね。」

佳代は青年をじっと見つめる。

佳代:「あなたはどこに行くの?」

青年:「さあ、どこだろうね。」

青年はまた月を見上げる。

青年:「でも、また逢えるさ。夢の中でも逢おうね。」

佳代はその言葉に、どこか引っかかるものを感じながら、もう一度月を見上げた。

月はさっきと同じ姿で、何も変わらずにそこに浮かんでいた。

4. 目覚めの朝

目覚まし時計の音で目を覚ました佳代は、ぼんやりと天井を見つめた。

部屋はいつもと変わらないはずなのに、なぜか心がまだ夢の中にいるような気がした。

ふと、枕元に視線を落とすと、そこには昨夜の夢のように感じた「セブンティーンアイス」の包み紙が残っていた。

佳代はそれを手に取り、小さく笑う。

佳代:「……夢の中でも逢おうね。」

その言葉を呟くと、佳代はゆっくりと目を閉じた。外では遠く、電車の音が静かに聞こえている。

いいなと思ったら応援しよう!