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降格した部下を復活させたモチベーション理論を分かりやすく解説

1.降格人事を発令するリスク


 経営に関わる立場の方から見て、ある部下の役割と能力がうまくマッチしていないと感じることがあります。例えば、店長としての管理能力が会社の期待に応えられていない場合などです。

 この場合、いつまでも店長の役割を担ってもらうのは、本人にとっても会社にとっても望ましいものではありません。そこで、店長から店長代理へ異動させるなど降格人事の発令を検討します。ただし、これを実施した場合、本人のモチベーションが大きく低下するリスクが発生します。

「降格人事は落ち込む。」

 ですが降格人事によって、本人が実力相応の立場になり、自身の能力不足を認識し、這い上がろうというモチベーションを保つことが出来れば、本人にとっても会社にとっても望ましいはずです。

 今回の記事は、降格人事を発令せざるを得ない人材に対して、経営陣・人事担当者・直属の上司が知っておくべきモチベーション理論をご紹介します。

2.この記事で降格した部下を復活させたモチベーション理論を解説する理由

「ガソリンスタンドで成果を上げたモチベーション理論をご紹介するよ」

 私は、かつて複数のガソリンスタンドを運営する企業に勤務し、現場で店長を担っていましたが、降格した他店の元店長が部下になったことがあります。この際に、中小企業診断士の勉強を通じてマスターしたモチベーション理論に基づいた接し方をしたことで、本人の復活を実現させた経験があります。

 その後、経営コンサルタントとして創業し、部下の育成に悩む様々な方に、この経験に基づいた支援をしてきました。これにより、活路を見出した事例も数多く目にすることができ、このモチベーション理論は普遍的なものであることが分かりました。

 また、このエピソードを講演・セミナー・研修で何度も伝えることで、私自身、モチベーション理論の理解を深めることが出来、より分かりやすく説明することができようになっています。

 そこで、降格人事の発令を検討する経営陣や人事担当者の他、部下のモチベーションに悩みを抱える方向けに、私の現場経験をもとに、降格した部下を復活させる具体的な方法を述べていきますが、この記事では、その際に私が用いたモチベーション理論について説明をしていきます。

3.ハーズバーグの動機づけ=衛生理論とは

 米国の臨床心理学者であるハーズバーグ氏が提唱したモチベーション理論である「動機づけ=衛生理論」は、従業員の仕事に対する「満足感」と「不満足感」が、それぞれ異なる要因によって左右されるというものです。それは「動機づけ要因」と「衛生要因」とされており、以下でそれぞれを説明していきます。

(1)動機づけ要因とは

 「動機付け要因」は、仕事に高い満足感をもたらし、モチベーションと積極的な姿勢を促進します。具体的には、以下の要素が挙げられます。

  • 承認:上司や同僚から認められること

  • 責任:重要な仕事やプロジェクトを任されることによるやりがい

  • 達成感:目標達成や困難な課題克服による充実感

  • 仕事そのもの:興味・関心のある仕事や、専門性を活かせる仕事

  • 昇進:キャリアアップや自身の成長を実感できる機会

(2)衛生要因とは

 一方、衛生要因は、仕事を取り巻く環境に関わる要素であり、不満足感を解消することで、モチベーションの低下や離職を防ぐことができます。具体的には、以下の要素が挙げられます。

  • 会社の方針:組織のビジョンや目標への共感、経営陣への信頼

  • 上司の監督:明確な指示やサポート、公平な評価

  • 給与:労働に見合った対価、業界水準との比較

  • 人間関係:同僚との良好な関係、チームワーク

  • 労働条件: 安全な職場環境、適切な休憩時間、ワークライフバランス

4.衛生要因の限界:モチベーションは天井がある?

 ハーズバーグ氏の研究によると、衛生要因を改善すればモチベーションは一時的に上昇するものの、長期的に見るとプラスの領域には至らず、ゼロ止まりになることが示されています。

 つまり、給与や人間関係といった衛生要因は、改善によって不満足感を小さくすることはできますが、満足感が大きくなって高いモチベーション得ることは困難ということです。

 例えば、衛生要因のひとつである給与を突然大幅に上げたとしても、従業員はその意図を疑ったり、現状に満足して向上心を持てなくなったりする可能性があります。また、同要因のひとつである人間関係についても同様で、良好な関係を築けたとしても、現状に甘んじて努力を怠ってしまう可能性があります。

 つまり衛生要因は、天井感のある要因であることから、その充足によるモチベーションの向上も天井感が訪れるということになります。

 従業員の真のモチベーションアップを実現するためには、動機付け要因に焦点を当てることが重要です。動機付け要因は、従業員に高い満足感をもたらすことで、持続的なモチベーションと高いパフォーマンスを引き出すことができます。下図は、この概念を図にしたものです。

 降格し、私の部下として赴任された元店長は、モチベーションが大きく低下していましたが、結果として、この理論に基づく接し方が彼の復活に繋がっていきました。

 なお以下の記事では、今回ご紹介したモチベーション理論の具体的な活用方法を述べています。

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