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整体院が提供する新サービス:高齢者の困りごとを解決する経営革新計画

1.代表1名で運営する整体院の強みと課題


 当事業所は、代表者1名で運営する整体院です。来院する患者への施術の他に、自宅や最寄り駅まで送迎をするサービスや、患者の自宅へ出張をして施術するサービスも提供しています。患者からご要望があれば、早朝深夜、週末も対応しており、そのような世話好きな代表の人柄が口コミで広がり、高い集客力がありました。

「今回は整体院の事例ば紹介するんず」

 反面、代表者1名での事業運営であることから、手が回らないこともありました。また、万一代表の身に何かあった場合は、事業が停滞するリスクも抱えています。

 外部環境に目を転じると、少子高齢化が進み、一人暮らしの高齢者が増加傾向であることや、低価格でマッサージを提供する大手チェーン店の進出が相次いでいることが、トピックとして挙げられます。

 このような状況の中、同院代表は、今後の事業展開を今まで以上に盤石なものにするべく、地元の商工会へ相談に行きました。

2.経営革新計画策定の取組み

 同院代表から相談を受けた商工会の職員は、経営革新計画の策定を提案しました。経営革新計画の詳細は以下のリンクをご覧ください。

 代表は商工会の職員からのアドバイスを受け入れ、商工会が派遣した専門家からの支援を受けながら、経営革新計画を策定することとしました。

 専門家と面談を重ねる中、同院代表は以下のことに気付きました。

  • 日常生活が不便になっている高齢の患者が想像以上に多い。

  • 誰かの役に立ちたいと思っているが、何をすればいいのか、何ができるのかが分からず、生き甲斐を感じられない患者も想像以上に多い。

 そこで、同院の患者に限らず、このような「自分の困りごとを解決して欲しい方」と「他人の困りごとを解決したい方」を結び付けるサービスを新規事業として立ち上げることとし、これをテーマとして経営革新計画を策定しました。

「新規事業のアイデアはそこにあったか」

 当初は「困りごとを解決して欲しい患者」と「他人の困りごとを解決したい患者」をマッチングしていきますが、徐々にインターネットやチラシを用いて、同院の患者以外に「困りごとを解決して欲しい方」や「他人の困りごとを解決したい方」を募集していくことにしました。

3.新サービスの具体的な内容と提供方法

 当経営革新事業で想定している主なサービス内容は以下のとおりです。

(1)同行

 買い物、食事、病院、美容院、花見などに同行します。これらはもともと代表が無償で対応していましたが、代表1人では手が回らなくなったことや、有償の方が頼みやすいという声が多く挙がってきたことから、事業化することとしました。

(2)代行

 自宅の水回りトラブル、不用品の販売、畑仕事、配達、廃品回収、掃除・洗濯・料理などの家事、車両の運転の代行などを行います。

「買い物の同行もするのさね」

 例えば、水道のトラブルに見舞われた方が、同院に連絡をすると、水道のトラブルを解決できる専門家を紹介するというものであり、1時間当たりの料金設定をします。その料金は、同院と専門家で折半という形で分配します。

4.当経営革新事業の利点

 この取組みは、同院が持つ患者との強い関係性を活用したものであり、外部業者を活用することによって、代表1名では手が回らないという弱みを克服するものです。さらに、地域に一人暮らしの高齢者が増加しているという環境を機会としてとらえたものであり、大手チェーン店との差別化が可能となります。

 このようなビジネスアイデアは、日常生活に不便を感じている方や、誰かの役に立ちたいと考えている方が多いという問題意識に基づくものです。

 このような顧客が抱える問題の解決に寄与しようという視点は新規事業を見出す際に有効であり、例えば、理容店に行ってカットだけしたいのに、カット・シャンプー・シェービングのサービスもセットで提供され、高額な料金を支払わなければならないといった問題意識から1,000円カットの理容店を立ち上げた事例に通じます。

「日頃の問題意識が新規事業アイデアに繋がる」

5.まとめ

 このように、経営革新計画を通じて、地域のニーズに応える新たなサービスを提供することで、事業の安定化と成長を図ることができます。高齢化社会において、困りごとを抱える方々とその解決を手助けしたい方々を結びつける取り組みは、地域社会全体の活性化にも寄与するでしょう。

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