硫化水素と生卵

鉄と硫黄を混合して加熱すると激しく反応して、化合物たる硫化鉄ができます。
この硫化鉄に希塩酸を加えると、硫化水素が発生します。

硫化水素の性質として、中学の理科では「卵の腐ったようなにおい」と習うのですが、食品の品質管理その他が徹底されている日本において、卵の腐ったにおいを実際に経験したことのある人はまれだと思います。

よって、
硫化水素のにおいを「卵の腐ったような」と説明することは多いのですが、実際に経験するのは硫化水素のにおいが先で、卵が腐った時のにおいはこんなものなのか、と思うのがほとんどではないでしょうか。

食レポの彦摩呂が本物の宝石箱を見たときに、「ごはんや~」と言うようなものです。

日本での卵の賞味期限は年間を通じて約2週間、これは生食を前提にしたもので、加熱するなら1か月、冬は2か月くらいは問題ないそうです。(卵を腐らせるのも大変です。)

飼育環境や飼料など厳格に管理することにより、また出荷前に卵を洗浄するなどして、病原菌が付着しないよう対策が取られているため、食中毒のリスクは極めて低く、卵の生食に対する抵抗はほとんどないと思います。

一方で本来、生卵はサルモネラ菌による食中毒を起こしやすく、海外で生卵を食べる国はごく少ないのが現状です。(エッグノッグ等一部のカクテル、フレンチスタイルのミルクセーキ、韓国のユッケ、モンゴルのタルタルなど)

海外で生卵を食べたい、という場合、日本食材店などで生食用の卵を入手する必要があります。(アメリカくらいでしか見たことがありません。)日本食レストランなどで生卵、半熟卵を使うメニューがある場合、「食中毒リスクを理解した上自己責任で食べる」ように注意書きがある場合がほとんどです。

映画「ロッキー」には、主人公が起きぬけに卵を割って一気飲みするシーンがあります。

本国アメリカでは、「生卵一気飲み、そこまでやるかロッキー!」というのがありがちな反応で、強くなるための異常なまでの執着が生卵によって描かれているのですが、日本だと「まあありそうだよね、だししょうゆひと回しかけたいね」くらいであまり伝わりません。

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