ロンドン、メリー・ポピンズの舞台
去年初めて見た私が言うのも僭越ですが、ロンドンは映画「メリー・ポピンズ」の舞台です。
「桜通り17番地」などは架空の地名で、大半はセットで撮影された映画ですが、登場人物のMrバンクスはシティの銀行に勤めていたりします。
主人公、メリー・ポピンズの仕事は「ナニー」、母親に代わって住み込みで子供の世話をする、育児や教育の専門知識を持った女性です。(イギリスでは国家資格もあります。)
この度、ナニーの養成学校として100年以上の伝統と歴史を有する名門、イングランド南西部バースにあるノーランド・カレッジが、カリキュラムにテロ対策訓練を加えました。
サイバーセキュリティーや不測事態における危機回避のための方法などについて教えるそうですが、ナニーを必要とするのは主として名家や富裕層と考えられるため、誘拐などの対象になりやすい、などということであれば理解できます。
スティーブン・セガール主演「沈黙のナニー」、セガール扮するナニーがテロリストをナイフ(又は傘)1本で次々と倒す。ふとそんなイメージが浮かびました。
(映画「沈黙」シリーズは、実際には関係のない別々の作品だそうです。)
テロは、直接引き起こしたダメージを超えて、広く人々の心に作用します。
テロリストがリスペクトしないものの中の一つに、「border」があります。
グローバル化と技術の進歩は、テロの脅威もグローバルなものにしました。
テロの存在、活動により、ターゲットとなる社会の中に生じせしめた「恐怖」が、
人々の考え方、行動に影響を及ぼしている、ということになります。
当該ナニーの学校であれば、
本来もっと別の、relevantな教育に当てるべき時間を奪われています。
ところで、
この年になって初めて見ると、映画「メリー・ポピンズ」の主人公はバンクス家の主人、Mrバンクスにしか見えません。楽しげな映像や音楽とは対照的に、彼の男としての、父親としての孤独と苦悩を描く映画に見えてしまうからです。
ますますwickedになる現代は、メリー・ポピンズにひとつ暗い影を落とそうとしています。