難問:「私のどこが好き?」

 様々な障害を乗り越え、「私のこと好き?」をクリアした男の前に立ちはだかる新たな難問である。

 なぜ、「好き」というところは前提になっているのか?などというツッコミはなし、一度仮定されたら事実として扱うのが作戦計画(operation planning)の基本である。そして無粋である。

思えば、「私のこと好き?」は「私のどこが好き?」に比べて難易度が低かった。

「私のこと好き?」の場合、小さな安心が求められている、と思う。

分からないことや疑わしいことについて訊くのが質問である。

 まず、分からないわけではないだろう、なぜなら、その場合質問の内容はもっとマイルドになるはず。単に分からない程度の段階で自意識過剰であると誤解されるリスクを冒すことはないだろう。

 次に、疑わしいわけでもないだろう、その場合は「最近私からのメールばっかりだよね」、「最近すぐ寝るよね」など、谷川名人ばりの「光速の寄せ」が待ちかまえている。大抵は詰み上がり予想図が完成した状態であり、その状況でこのような訊き方はしないだろう。。ただし、軽く確認して安心したい、というくらいのささやかな疑いだったらあるかもしれない。この場合、ネガティブな回答は期待も予想もされていない。ある程度の自信がなければ訊かないだろう。

 よって、この質問の主旨はちょっとした確認であり、目指すところは小さな安心である、と考える。「私が好き?」
 以上のことから、最善の行動方針も自ずから見えてくるというものである。要はこの小さな安心を実現すればいいのだ、と。そもそもそれを言わせた自分に反省するところ有りでしょうけど。

しかしながら、
「私のどこが好き?」
これは難しい。もはや小さな安心などという手がかりもない。そして選択肢も多過ぎる。なぜなら、yes/noの決定疑問文に対する答は大まかに2通り、しかし、補足疑問文(5W1H)に対する答は無限大だからである。

 17世紀、航海の難所ホーン岬を初めて越えたスホーテンもきっとこう思ったに違いない。「さて、この後どこに向かうか。。」*note1

【例1】
男「多すぎて、数え切れないよ」
女「例えばどんなところ?」

男「ぜ、全部、かな」
女「具体的には?」

・あまり深く考えていないと疑われる。
・大阪冬の陣から夏の陣くらいの進展、サッカーW杯オランダ代表スホーテンのオウンゴール
・外見に言及するのも危険だろう。

【例2】
男「は、恥ずかしいから秘密。。」
女「いや~ん!言って!言って!大丈夫っ!恥ずかしくないから!!ほら~!」(ぴょこたん跳ねながら)「耳塞いでてあげるから!」(え?)
・「私のどこが好き」殺人事件に発展する可能性有り。

【例3】
男「君の瞳に映った僕かな」

【結論】
そもそも、上記のようなロジック(論理)は1ミリも期待されていない。かつ無粋である。
求められているのはきっとレトリック(修辞)だ。
人はロジックではなくレトリックに心動かされる生き物だ、きっとそうだ。

なので、
散々こねくり回しましたが、「そのときのフィーリング」で良いと思います。

個人的には、
「私のどこが好き?」
みたいな問答よりも、

「○○君て私のこと好きで好きでしょうがないんでしょう?」

と言われた方がずっとドキドキします。
思いの丈を吐露する、そのしきい値も下がるというものです。
少なくとも私はそうです。

【*note1】
 ホーン岬、南アメリカ最南端にあるフエゴ島のそのまた最南端にある岬である。付近の海流は流速が早く、年間を通じて荒天も多いため現代でも航海の難所であり、ヨットセイリング界ではこの海域をクリアした者はケープホーナーとして称えられる。国際水路機関により、岬を通過する経度線が太平洋と大西洋を分けている。
 17世紀、伝説の大陸テラ・アウストラリス、新たな太平洋航路、現在の東南アジアへのルートを求めて、オランダ人スホーテンが初めてこの岬を回り、太平洋に出る。岬は彼の生地にちなみホールン岬(蘭)と名付けられた。

【参考】
ホーン岬、子供の頃よく見ていた番組、「世界一周双六ゲーム」で登場する都市の一つ。プレーヤー(視聴者参加)がスタートの東京に戻らなければならない「ガックリ都市」になることが多かった。

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