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【ドイツの鉄道】ヒンデンブルクダムと島鉄道のトロッコ


島鉄道を見にドイツへ

ドイツ北部、ユトランド半島西側のワッデン海沿岸には知る人ぞ知る鉄道がある。
ドイツ語では Halligbahn (ハリヒバーン)というらしい。この言葉はいかにもドイツ語らしい合成語で Hallig と bahn がくっついてできている。前半の Hallig はワッデン海に浮かぶ平たい島のことで、この地域特有の地形を説明する半分固有名詞みたいな言葉だ。後半の bahn はおなじみの Eisenbahn (鉄道)の bahn で、単独だと道路の意味にもなるが、ここでは鉄道として理解しておく。つまり「ワッデン海に浮かぶ平たい島を結ぶ鉄道」というそのままの意味の言葉だ。
もう少しこなれた言葉にしていくと「島鉄道」とでもなろうか。

ワッデン海は干潮になると干潟が広がる遠浅の海で、沖合いのHalligの中には干潮時は本土から歩いて渡れる所もあるくらいだが、そこに鉄道という文明が伝わった時に、島の人々は本土まで土手(堤防)を築いて線路を敷いた。海を渡る海中鉄道である。
とは言え、大きな産業があるわけではなく、島の人々が本土に渡ったり島に荷物を運ぶためのものだから、安上がりな軽便鉄道の規格で造った。線路の幅(軌間)も900mmしかない。そのレールの上を島の人々が自ら運転して、エンジン付きのトロッコを走らせて交通手段としている。

荷車にエンジンを取り付けたようなトロッコ。エンジンはホンダの汎用ガソリンエンジンGX270、排ガスの排出かエンジンの熱放出か板製のカウルを開けて走っている。バッファー(緩衝器)は古タイヤ。手作り感あふれるところが島鉄道の魅力。

軽便鉄道と言うと通常の鉄道より一回り小さいためまるで玩具のような可愛らしさがあるのだが、それに加えて島鉄道には島の人々の手作り感もあって、とにかく魅力的なのだ。

ドイツでは鉄道の軌幅は1,435mmが標準で、これはヨーロッパ各国で標準的に用いられている規格のため「標準軌」と言われる。一方、日本では新幹線や一部の私鉄は「標準軌」を採用しているものの、それ以外は一般的に「狭軌」と呼ばれる1,076mmの幅だ。
そのため、ドイツと日本で「軽便鉄道」の定義も異なっていて、ドイツでは1,000mm(いわゆるメーターゲージ)以下のものを「軽便鉄道 Feldbahn/Lorenbahn」とみなしているのに対して、日本で「軽便鉄道」と呼ばれるものの多くは軌間762mmとなっている。一般の鉄道の軌間が狭い分、日本では「軽便鉄道」の軌間もドイツより一回り小さくなっている。

島鉄道はドイツのワッデン海沿いに2か所ある。この2か所を、2年間かけて訪れた。本土側の堤防から眺めただけだが、いつかは実際に乗って島にも渡ってみたいと思っている。

  • Halligbahn Dagebüll–Oland–Langeneß

  • Halligbahn Lüttmoorsiel–Nordstrandischmoor

さて、実は、島鉄道と言うには規模も風情もかけ離れているのだが、同様にワッデン海に土手を築いて線路を敷いた鉄道がもう1つある。
本土とジルト島と結ぶヒンデンブルクダムは、11kmの海の中を走る土手で複線分の幅がある。軌間も、軽便鉄道の900mmではなく、標準軌の1,435mmだ。1927年に複線で鉄道が開通しているが、当時、共和制ドイツ(ワイマール体制)の大統領であったヒンデンブルクの名を冠するほど、国家的な大土木工事として建設された。鉄道で結ばれたことによってジルト島はリゾート地として全国に知られるようになり、今もドイツ鉄道が(DB)がSylt Shuttleという2段式のカートレインを運行している。
という具合に島鉄道には含めたくないのだが、これはこれで鉄道趣味的には面白いものだし、実際、島鉄道はヒンデンブルクダムの建設に触発されて建設されたという経緯もある。ドイツに行って一緒に見てきたことだし、合わせて紹介しようと思う。

赤丸で囲った部分、上(北)から
ジルト島と結ぶヒンデンブルクダム
Halligbahn Dagebüll–Oland–Langeneß
Halligbahn Lüttmoorsiel–Nordstrandischmoor

オラント・ランゲネスの島鉄道

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