出品作の傾向が変わった?~「改組 新 第8回日展」
毎年の楽しみにしている展覧会。数えると今回で5回目の訪問。
特に親戚・友人で出品しているわけではないけど。
さあ、今年はどんな優品に出会えるか。
昨年の記事はこちら。
まずは個人的殿堂入りの方から。
福田季生「春爛漫」(日本画)
昨年は残念ながら出品されていなかったのだが、今年はお目見えできた。
他の作品と比べるとその完成度に目を瞠るばかり。惜しむらくはこの方の個展が関西中心のため、普段見に行くことができないという点。Facebookで動向は要チェックですわ。
歳嶋洋一朗「サン・ジャン・カップ・フェラ(南仏)」(洋画)
昨年の作品に比べると筆致が粗めな印象。でも、青と緑がとても心地よく目に飛び込んでくる点は今年も変わらず。洋画コーナーで真っ先に探してしまった。
さて、次からは今年の個人的優品を続けて。
岸本志津「花咲き、光となる」(日本画)
モチーフの一つ一つはとても丁寧に描いていながら、色がとても華やか。
その場の空気・光を、巧みな色使いで描き出しているようだ。
岡本徳子「ザワザワと」(日本画)
ひとつ前とは真逆のような作品である。モノクロームの画面の中で、ところどころ色づいた花や葉が。特に中央の鬼百合?が目を引く。
加藤智「寂日」(日本画)
この方は日展審査員とのこと。東山魁夷や加山又造のといった日本画の系譜に連なるような作品。
松田絵理「此岸」(日本画)
背景の流水紋に真っ赤なレースをまとう白い肌の女性。やはり加山又造みたいだなあと目に留まった作品。
西谷之男「夏雲の池」
正統派な風景画でいつまでも飽きの来ることのない作品。
坂井信子「ヨットハーバー」(洋画)
中央に縦長のヨットを配しているが、その奥の陸地や手前の水面の描き方が秀逸。
鈴木順一「海潮音」(洋画)
タイトルは仰々しいけれど、どこかの港町の風景を描く。
これ、点描なんですよ。現代のスーラ。昨年も写真撮ったかも。
鈴木清明「カサブランカ」(洋画)
超絶技巧に奔りすぎず、人物の魅力を自然に切り取る画力にくぎ付けになった。
中山忠彦「洋灯のある部屋」(洋画)
写実絵画の先駆けたる画家の最新作。おや、と思ったのは、いつもはご令室をモデルにされることが多い(というかそれしか見たことがない)のだが、今回は違う方?ご令嬢?そういう変なところに気を取られてしまった。しかし御年86にして画力はまったく衰えない。現代の北斎か。
全体の印象は、日本画はまあいつもどおりだったのに対し、洋画は昨年に比べて純粋な風景画が多かった気がした。原点回帰ということなのだろうか、それでもその古典的な画題の中で工夫を凝らして見ごたえのある作品に仕上げている作品が例年に比べて多かった気がする。この点は来年がますます楽しみになってくる。
それに比べて、彫刻の方はまだまだ画一的というか、正直面白みに欠ける気がした。いっそ、仏像のようなアプローチを取り入れてもいいのではないかと思うのだが、そこは何かお題のようなものがあるのだろうか。