町という地場~「遠い空の向こうに」と「ギルバート・グレイプ」
感動ものの映画やドラマは、あまり得意ではない。
その、ぐいぐいと迫ってくる、
”どや、泣けるやろ? 泣いていいんやで?”
という押しつけが、どこか感じられるからだろうか。
でも、ほのかにじーんとくる程度であれば、とても心地がよい。
そんな心地よい作品に出会うことができた。1999年公開「遠い空の向こうに」
主人公のホーマーを取り巻く環境はなかなかに深刻だ。
とても閉鎖的な炭鉱の町。アメリカは宇宙にロケットを飛ばさんとしている時代、徐々に石炭産業は傾いていっているのに、いつまでも自分らの仕事・生活が一番と思っている。
ホーマーは、炭鉱の責任者を務める父の思いと自分の夢との葛藤に悩むが、最後には町を出て自分の夢を実現させる。その父や友人、恩師たちとのやりとりの積み重ねが、ラストシーンに上手に収斂していっているようだ。思わず目頭が熱くなってしまった。
さて、ここで別の映画の話題に移る。
閉ざされた町を出たのがホーマーだったが、町に残ることを選んだ主人公を描いた映画もある。1993年公開「ギルバート・グレイプ」だ。
主演はジョニー・デップなのだが、それ以上にまだ未成年のディカプリオの演技に圧倒されてしまう。この映画で助演男優賞にノミネートされている。
それで本題だ。こちらの主人公ギルバートの深刻さはホーマーを凌駕していると言えるだろう。小さな町の雑貨屋で働いているが、近くには大型資本のチェーン店が開店し多くの人が流れていこうしている。さらに過食症でひきこもりの母、知的障害を抱えた弟を持ち、これからどうすべきかを考えてながら悶々と過ごしている。
そんな中、旅行途中にしばらく滞在することになった女性と出会うことで、様々な出来事が起きていく。それらを経て、改めて家族同士の関係を確認し、ギルバートはこの街で生きていくことを決めるのだった。
正直、一回見ただけではぴたりと共感できないかもしれない。さっさと出ていけばいいのに、そう思うかもしれない。
その点、「遠い空の向こうに」は分かりやすいかもしれない。誰でもわかる、まさに家族で見られる映画であろう。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?