言われてみればセザンヌらしさも~山種美術館「奥村土牛」
山種美術館ファンであれば誰もがその作品を目にしたことのある奥村土牛。
今回彼の個展であったが、改めてみるととても新鮮な発見があった。
彼は若いころ当時の師匠に買い与えられたセザンヌの画集を見て、強く影響を受けたという。
そう言われてみると、特に若いころの作品に色濃く表れているように見えた。
「雨趣」(1928年・39歳)
建物と緑とが、とても堅牢に画面を構築している。雨を主題としていることもあり湿潤を帯びている点、オリジナリティを出している。セザンヌと思ってみると、画面上半分にサント・ヴィクトワール山が見えてくるようではないだろうか。
「門」(1967年・78歳)
姫路城の「はの門」の内側から描いたもの。このようにほぼ直線だけで構成される主題は日本画には珍しい。木の扉や漆喰の壁の質感も表現しつつ、上部にかすかに沿えられた緑がアクセントになっている。
この絵を見て、実際に姫路城までこの門を見に行ったことがある。それがこちらの写真。
素人の撮った写真ということが丸わかり。。
「醍醐」(1972年・83歳)
彼の代表作とも言える作品。じっくりと対峙すると絢爛さだけでなく幽玄な趣が感じられ、夢か現かの境地にいざなわれそうだ。木々には精が宿ると言われるが、目の前の老木こそ桜の精そのものだ。
「舞妓」(1954年・65歳)
動植物や風景を多く描いた土牛。正直人物画はあまり得意ではなかったのでは?と思ってしまうのだが、そんな中でこの「舞妓」はその可憐さや上品さを、簡潔な筆遣いで描きだしているよう。
ということで、何度見ても味わい深い土牛。大満足の展覧会であった。