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殿様やるじゃん~根津美術館「百草蒔絵薬箪笥と飯塚桃葉」

ピンポイントでマニアなテーマな展覧会だと思っていたが、足を運んでみると意外や意外、新たな発見があったりして面白い、ということがあるのでなかなか見逃せないものである。今回もまさにそんな展覧会。

蜂須賀家に仕えたという蒔絵師・飯塚桃葉。
この人のことは知らなったが、その蒔絵の技術は確かなものであることは、素人目にもよくわかる。件の薬箪笥だけでなく、笛や印籠なども多く展示されていてそれだけでも見応え十分である。

飯塚がこの薬箪笥を作ったのは仕えた大名の間のネットワークに由来するという。江戸時代も中期から後期にかかる頃には、大名同士はもはや親戚同士。その親戚同士で、自分ところの珍しいものや腕利きの職人たちを競わせていたわけだ。しかもこの時期は進取の藩では蘭学が起こり始めたころ。
この蜂須賀藩も親戚の松平藩とのやりとりにはその背景も関わっていたとのこと。あの平賀源内もひと噛みしているというから、じつは来年の大河ドラマにつながっていたとは!

その蘭学は下級武士だけではなく、殿様みずからも夢中になっていたケースがあり、展覧会では土井利位の業績が紹介されていた。

彼の見つけた雪の結晶。これが当時ブームになったという。しかも彼自身が書簡に使っていた紙にはこのマークをあしらっていたようで、なんとも可愛らしい。

それほど規模が大きいわけではないが、面白く良質な展覧会であった。

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