カナメくんは脇を締めた美しいフォームで内角高め時速146kmのストレートを打ち返す
カナメくんは脇を締めた美しいフォームで内角高め時速146kmのストレートを打ち返す。
打球を目で追うカナメくんは、打ち方を教えてくれた人の名前をもう思い出せないでいる。思い出せないことについて考えることもなくなっていて、やがてまもなくこのままいっさいを忘れてしまう。死んだ父のことが嫌いで、出て行ったカナメくんの母の再婚相手になる人だった。父よりも背が高かった。野球がうまくて、優しかった。カナメくんはゆっくりとホームベースに帰ってくる。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?