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【雑談シリーズ】話題の『オンライン飲み会』に参加してみた! ~垣間見えた会話の限界と可能性~

もう7年くらい前になりますが、私がまだ大学生だった頃。
毎週金曜の午後は哲学科のゼミがありまして、日本の伝統芸能(能とか狂言とか落語とか)を題材に、時に稚拙に、時に雄弁に、人間が持つ「業」について語り合っていました。
そのゼミは2コマ分なので、だいたい3時間くらい、休憩10分挟んで、ぶっ通しで進んでいくわけですが、終盤になってくると教授・学生含めてみんなそわそわし始める。
いよいよ言葉も軽くなり煮詰まってくると、教授がぼそっと言うんです。

「そろそろお酒でも入れますか」

それがゼミ終了の合図。座る位置の関係で、その言葉が一字一句聞き取れなくても、教授が終盤に何かをぼそっと言えば、それは「もう終わりにして居酒屋に行きましょう」という意味だと、学生であれば誰しもが分かりました。

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自分で言うのもなんですが、私が所属していたゼミの飲み会は非常に健全です。SNSで話題になるような大騒ぎする若者もいないし、悪酔いして人間関係を壊すような学生もいない(目の前で女子が女子をビンタするなんて事件はありましたが)。おそらく学生だけでなく教授も交えて飲むという点が一番の抑止力になっているのだとは思いますが、とにかく健全で、なんなら居酒屋でもゼミの続きが始まり、あーでもないこーでもないと語り合うことも少なくありません。
時にはお酒の力も相まって、本来のゼミの時間では出てこないような「コペルニクス的転回」が破綻しかけた言葉を持って生まれてくるわけです。教授にとってはそれがひとつの楽しみであるようで、だからこそ酒を交わしながらの議論を重んじるわけですが、価値観が揺らぐような意見が出たところで、お酒が入っているので、翌日には誰も覚えていない。

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そんなある種の伝統がこのゼミにはあったものですから、社会人になる前から「花金」を堪能していたような学生でした。もはや金曜に関しては、講義を受けるためではなく、酒を飲むためにキャンパスへ行くというスタンスで、それだけ聞くとなんとも親泣かせな学生生活だったわけです。

ですが、新型コロナウイルスにより、我がゼミの伝統も強制停止。そもそも大学自体が封鎖され、前期の授業がすべてオンライン講義になるとのこと。オンライン講義ってもはや講義と呼べるのかどうか……。「いっそ教授もyoutuberになればいいんじゃないですか」という滑稽な冗談が出てしまう始末。
新型コロナウイルスの副産物として、前回記事に書いた『リモート面接/Web面接』や避けては通れない『インサイドセールス』ように、業務効率を上げるための方法が日々蓄積されていく一方で、相手の温度感や空間の匂いなど、不可視性を重んじる機会が排除されつつあります……。

ただ自分はX-MENのような超能力者でもなければ、FLASHに出てくるメタヒューマンでもないので、新型コロナウイルスは如何ともし難い。「今までの方が良かったなあ」と呟くだけの人間に明日はありません。

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ということで、時代の波に乗っかり、巷で噂の『オンライン飲み会』をやってみました!

※今回使用したツールは、Web商談Web面接にも役に立つ『Zoom』です。

今回集まったのは、大学時代の教授+ゼミ同期&後輩で総勢11人。お酒とおつまみを各々用意して、平日20時からスタートしました。
(▼私が今回用意したのはこんな感じ。如何せんお酒に弱いので、すぐジンジャーエールに頼りがち。)

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最初の1時間くらいは私含めて5名が参加。もちろんみんな自宅でカメラ越しに映像をつないでいるので、十人十色のプライベート空間が垣間見えるわけですが……。

なんだろう、この言い知れぬ緊張感は。

通常の飲み会であれば、居酒屋という同じ空間を共有しているので、そこにあるのは肉体としての「個人対個人」なのですが、『オンライン飲み会』ともなると、個人の背景にあるプライベート要素が否が応でも視覚的情報として入ってきます。
ある者は真っ白な部屋で(どこの隔離施設だよという感じ)、ある者は同期&後輩の夫婦で(幸せにあふれたメルヘン世界)、ある者の部屋にはテトラポッドのぬいぐるみが置いてあったり(商品化されているのがすごい)、ある者は自宅待機による髭面+殺風景なリビングで(まるで時限爆弾を作っている潜在犯のよう)、ある者は部屋の光源がタバコの火だけ(完全に闇属性のキャラクター)、などなど……。
なんかこう見てはいけない心の内面性も反映されているような「個人対個人」なわけなので、そこには変な緊張感が漂っていました。
また参加者には女性もいるので、男性からすれば一生知らなかったであろう異性の部屋が目の前に広がっているわけですから、中学生レベルの思春期パワーを持っていたとしたら、それはもうけしからん状態なわけです。

2時間くらい経過すると、「あいつも呼ぼう」「こいつも呼ぼう」となり、いよいよ画面は11分割に。そうなってくるともはやカオスと呼んでいい状況になってきます。

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結局、20時~23時過ぎくらいまでワイワイやってお開きになったわけですが、結果としては面白かったというのが第一印象。
ですが、時間が経つにつれて、実に異様な空間だったという印象の方が強くなっていきました。
「面白いんだけど、〇〇なんだよなあ」という、この「〇〇」の部分を今回はざっくばらんにお伝えしたいと思います。


★面白いんだけど、「テンポが合わない」んだよなあ

これは正直仕方ない部分もありますが、オンラインである以上、どうしても会話のラグは発生してしまいます。対面の息遣いが伝わらないので、相槌するにも突っ込むにもワンテンポ遅れてしまう
すると、誰かが発言する度に小さな静寂が訪れるので、これがなんともじれったい。すべり芸と称されるような会話スルーですら「ただの回線ラグ」となってしまうので、小さな笑いの息吹がことごとく死んでいく可能性があります。

★面白いんだけど、「複数会話ができない」んだよなあ

例えば2~3人で飲み会となると1つのグループで会話が回っていきますが、4人以上になると、まとまって会話を回し続けるのは難しい。自然と2人と2人に分かれたり、3人と4人に分かれたり、数が多ければ多いほど、グループは細分化され、時にグループ間を行ったり来たりしながら、それぞれの土俵で会話が盛り上がっていきます。
しかし、『オンライン飲み会』では、その同時多発的な会話が生まれない。「生むことができない」という方が正しいでしょうか。
そもそも参加しているオンライン上の部屋が1つのグループという括りになっているので、「一は全、全は一」という錬金術の真理のような状況がずっと纏わり付いてきます。すると、必然的に会話の方向性もひとつに絞られ、同じ土俵で大多数がぶつかり合う群雄割拠が訪れます。
この状況が行きつく先は、「沈黙」です。誰かが発言し、誰かがそれに応答すると、残りのメンバーは待ってましたと言わんばかりにスマホをいじりはじめ、休戦ポーズを取ります。もちろん中には「聞き専」に徹する楽しみ方もありますが、せっかくお酒を交わしているわけですから、何かしらの会話には参加していたいというのが欲というものです。会話したくても入りにくい話題というのもありますし、小さなグループでのんびり話したい方にとってはけっこう苦痛かもしれません。むしろすべてを俯瞰する神様的な楽しみ方が好きな方にとっては居心地の良い空間です。

★面白いんだけど、「温度と匂いが伝わらない」んだよなあ

話している相手の温度匂いが伝わらないというのは、会話をする上でかなり致命的な気がします。
温度というのは、例えば相手(もしくはグループ)の反応に出ます。「今はこの話で続ければもっと盛り上がる」「今これをいったら場が醒める」など、言葉は本来相手の温度を反映しながら発せられるべきものです。誰かが笑っていれば、その人の周囲の空気は温かいし、誰かが泣いていれば、周囲は冷たく湿っています。その見えない温度を肌で感じながら、言葉を紡いでいくのが会話だと思っています。
また匂いというのは(やや下世話になりますが)、その場にある料理の匂いだったり、泥酔した人のアルコールの匂いだったり、気になるあの子のシャンプーの匂いだったり、漂うタバコの匂いだったり、「こいつは誘ったらはしご酒できそうだな」という匂いだったり、先ほど言った温度にも形容しがたい匂いがあります。雑多な要素ではありますが、この雑多がけっこう好きな人は一定数いると思います。少なくとも私は好きです。
会話のテンポが乱れる原因にも繋がってきますが、この「温度」「匂い」が伝わらないのは、話していて違和感しかない(=不安になる)というのが正直な感想です。傍から見れば会話のキャッチボールも成り立っているわけですが、その内実は個と個のボールを投げ合っているだけ。相手の温度や匂いを汲み取った言葉のやり取りは、オンライン上だとどうしても難しくなります。

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これって実は、『インサイドセールス』にも似たようなことが言えるのではないでしょうか?
日本はまだまだ『フィールドセールス』の割合が高いですから、営業となれば実際に訪問して対面で話を進めていきます。相手の空気感が分かるからこそ、適切な次の一手を打ちながら、次第に互いの心を溶かしていくわけです。
でもいざ急に『インサイドセールス』で仕事を始めると、商談が事務的になったり、温度感が伝わりづらい分、言葉の印象が冷淡なものになりがちです。いつも以上に抑揚をつけて話したり、感情の機微を大きく表現したり、ある程度の「過剰」をしないと、相手に自分の心は伝わりません。
分かっちゃいるけど、なかなか板に着かない……。営業である自分はまだまだ改善の余地ありです。

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『オンライン飲み会』を試してみたことで、自分の中ではより一層「言葉」という概念の重みが伝わってきた気がします。ただ発するだけでなく、周囲の情報を総動員させて文字を思考し、紡いでいるのだと。「飲み会」というラフな状況ですら、上記のような煩わしさを感じたくらいですから、仕事の上ではもっと緻密にいろんな要素が絡み合っているわけです。

じゃあどうするの?という説法めいたことは特に記載しませんが、ふと思ったことを雑談として書いてみました。
いつまで続くか分からない新型コロナウイルスの影響下にありますが、もしかしたら今後『リモート面接/Web面接』『インサイドセールス』を推奨する中で、壁を打破できる改善のヒントがあるかもしれませんので、もし良かったらみなさんも一度「会話」の限界と可能性について考えてみてはいかがでしょうか。

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在宅勤務ばかりになると、誰とも全く話さずに1日が終わるなんて方もいるかもしれません。
こんな不安定な時代だからこそ「雑談」は必要です。もちろんリフレッシュがてらの適度な雑談ですが、この『オンライン〇〇』という枠組みがマジョリティで主流になってくれば、「言葉」の持つ力も徐々に進化していくのでしょうね。

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遠い未来の話ではありません。その内、教授なんかもゼミ終盤にこう言うかもしれません。

「そろそろネットにでも入りますか」

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