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ハワイコナ
しつこく昭和の話。
学生時代に良く行った喫茶店。
頼むのはブラジルを中引きで挽いてもらうフレンチコーヒー。
若造は「キリマンジャロ」の領域には到底到達しない。
お店はカウンターの中に一人だけの小さな空間。
飲み物の他は、
口が真っ赤になる「ナポリタンと」
なぜか「焼きそば」
マスターは髪を束ねたポニテールがよく似合う小柄の
女性だ。
年は私より少し上ぐらいだろうか?
常連さんは彼女を「なっちゃん」と呼んでいた。
「なつこ?」いや?「なつみ?」
そんなことを勝手に詮索しながら飲むコーヒーは
つい、にやついてしまう。
「なっちゃん?」
「どうしてお店のメニューに焼きそばがあるの?」
タイミングよく店のBGMがとまり
CDを入れ替えながら店主は
「う~ん、母と離婚した父が子供の頃、私によく作ってくれた
料理だからかな」
聞いては行けないことだったかと思い。
目の前にコーヒーが出てきた。
「これも父が好きだったコーヒー、飲んでみて」
「お・おいしい。軽いというか、後味がすごくいいね!」
彼女は縛った髪をほどき
「ハワイコナっていうんだよ。美味しいでしょ~」
私はしばらくこの豆に心奪われた。
髪を振りほどいた彼女も小さなお店も今はもう無い。
1度だけ一緒にご飯を食べにいった。
なにっをて?
それは、もちろん!
お好み焼き屋さんで焼きそばさ、
青のりを目一杯かけて。
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