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万年筆

万年筆
一時期必ず携帯してた。
必ずボールペンと万年筆の両方をスーツの内側に
挿していた。
特別良いものではないがモンブランを携帯していた。

当時はレストランがある施設の運営を任されていたため、
ホテルでもレストランでも客にペンを貸すことがあったからだ。
若かったこともあり「自分が何ができるのか?」と思いつくと
試さずにはいられなかった。

その日は関西でテナントビルと多数所有されている
オーナーさんが食事に来られていた。
「あの社長は変わり者だからと!」と聞いてはいたが、
何かしら喜ばしたいと思って機会を伺っていたのだろう(笑)
会計時にサインを求められたので、100円の
ボールペンを渡すスタッフを
静止して私は万年筆をオーナー客に差しだす。
すると客は「合理的ではないな!」
「インクの書き損じの確率の低い100円
ボールペンの方が正解だ!」と言われ、
私は「お客様には100円ではここでお食事をされた事自体が
がっかりされるのではないかと私の万年筆を
お渡し差し上げました」とつい言ってしまった。

それが私なりの敬意の表し方だと思っていたからだ。
「それは自己満足だよ君!万年筆をいま時代に使うことが
ないだろう。電卓を取り上げてそろばんをよこす様なものだよ」

当時は夢の無い男だと決めつけていたが、今の年になり、
いろんな考えの人間がいて合理的ではないという考え方も
あることはわかる気がする。

それ以来、モンブランは机の奥にしまっている。
今はジェットストリームの05.が好きだ。
#万年筆 #小説#職場#ビジネス#気遣い

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