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戦術論全盛の今だからこそ読みたい、魂のサッカー漫画「コラソン」

 いつの間にか、スポーツ漫画はファンタジーではなくて「現実的リアリティ」が必要なジャンルになってしまった。【努力・根性・魔球】が3大原則だった野球漫画には「スラッター」のような最新用語や「セイバーメトリクス」の考え方が取り入れられ、影腹を切って試合に臨むような選手はいなくなった。

 サッカー漫画も同様に、ゴールポストに登ったり、バック転でシュートを止めたりモンゴリアンチョップが炸裂することはなくなった。ここ最近人気を博しているサッカー漫画はというと

◇ユース世代に焦点を当てた
  『アオアシ』
◇日本サッカーの常識を疑う蹴球版センゴク
  『フットボールネーション』
◇女子サッカーのリアルをえぐる
  『さよなら私のクラマー』
◇お金とデータを主題にした
  『マネーフットボール』
ポジショナルプレーの漫画化に挑む
  『ティエンポ』
女子サポアウェイ遠征グルメ漫遊記
  『ぺろり!スタグル旅』
◇島本節謎理論全開の
  『男の一枚 レッドカード』

 などなど、何かしら説得力のある「リアリティ」を土台としている。

 そんな中で、今回ご紹介したいのは少々古いこちらの作品。

『オフサイド』『Jドリーム』でお馴染みの塀内夏子先生作『コラソン サッカー魂』でございます。

 『コラソン』は2010年3月から2011年12月にかけて週刊ヤングマガジンで連載され、コミックスは全9巻が発売されている。20XX年という架空の日本が舞台だが、「ドイツ大会のままで終われるか!」という作中人物の台詞から【2006年ワールドカップの惨敗後】を意識した状況となっている。そして次のW杯アジア予選に苦戦する日本代表に外国人新監督が招聘され、型破りな主人公ストライカーを新戦力して招集するところから物語は始まる。

 僕はJドリームを読んで浦和ファンになってしまうくらい塀内先生の作品に影響を受けていたが、ちょうどこの頃はあまりサッカーを観ておらず、ヤンマガもほとんど読んでいなかったため『コラソン』は最初の1話を読んだ記憶がおぼろげにあっただけだで、作品自体のことも忘れてしまっていた。しかしカエルさんのツイートにて記憶が呼び覚まされる。

 ちょうどAmazon kindleで超バーゲンセールになっていたので全巻購入。しかして、私自身の「積ん読」がすごいことになっていたので半年以上放置状態なっていた。そしてようやく、先週の東京遠征帰りの新幹線で一気読みした。泣いた。

 正直なところ、塀内先生の漫画はサッカーの内容としてはけっこう怪しく、独自解釈みたいのもしばしば登場する。Jドリームにしても、この『コラソン』にしても、戦術的な面だったりサッカーの内容的には、今となっては見るべきものはほとんどない。
 ただしかし、しかしである。いちいち熱く、魂に響いてくる。いい年した大人が、新幹線の中でちょっと泣いてしまった。なんというか、リアルな正解ではないのかもしれないけれど、サッカーにとって大事なことを教えてくれる、教わったと感じる尋常じゃない『熱』があるのだ。ヘルマン監督からはこれでもかと矢継ぎ早に名言が飛び出し、主人公の戌井凌駕(いぬい・りょうが)は漫画のキャラクターにしても破天荒すぎだが、すぐに中指を立てるところを除けば見習うべきメンタルの強さを持っている。

 私たちはサッカーを、物事を、流行りの基準や分りやすい理論で断罪してしまいがちだ。技術・戦術・戦略・経営論…たしかにロジックは大切だが、魂が伴わなければ良いものにはならない。最新の戦術や理論の詰め込みに疲れたら、コラソンを読んで魂をリフレッシュ&ブーストさせてみてはいかがだろうか。 

その顔だ、その顔でピッチに入れ!闘う場所だ!闘う顔で往け!!
闘志は内に秘めている?
外国人の私から見ればそんな顔は「自信がない」としか映らんぞ!…
失うものがない?
いいやあるだろう
FWとしての意地はどうだ?誇りは?ボールを追って走る本能は?
…お前が悪いことは何一つない
どん欲に戦った末に起きた不運な事故だ
サッカーではしばしば起こる
引きずるな、忘れるんだ
忘れることもプロの仕事だ
忘れられないのなら
背負っていくしかない
肩の重さに負けぬよう
顔が下がってしまわぬよう
「常に攻めろ」というのは
敵陣であれ、自陣であれ
闘う意識を忘れるな!ということ
一瞬たりとも!!
君らはがんばった…本当によくがんばった
それでも、もっとがんばってる者が世界にはいるんだ
例えばライン際
がんばって追い付いた背後から
さらに伸びてくる足がある
シャツに手をかけてでも
食らいついてくる顔がある!
死にもの狂いで…時に見苦しく…わかるか?
甘いんだ
ひとつひとつが
少しづつ甘い!
もう一歩!さらに一歩!がんばれ!食らいつけ!
勝てる!大丈夫!!

 いくらか名台詞を抜粋してみたが、いかがだろうか?
 ぜひ全巻通して読んでみてほしい。最初から最後まで名台詞のオンパレードだ。Kindle Unlimitedなら読み放題だぞ。


※トップ画像はヤンマガ公式サイトより引用しました。

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