高校選手権にも出られず、Jリーガーにもなれずに卒業する若者たち
みなさん明けましておめでとうございます。ジョン・レスターです。
Jリーグはシーズンオフ真っ盛りで、国内サッカーといえば高校選手権の話題がもっぱらという状況。今回はその選手権について、ではなく、Jリーグユースのお話です。それでは、どぞ!
Jリーグユースは「エリート」なのか?
何かと対比される「高体連」と「Jユース」だが、高体連にしてもJユースにしてもひとくくりにするにはあまりにもチーム数が多く、またそれぞれのチームの置かれた状況が違う。
高校サッカーにおいて全国出場・制覇を争う強豪校とそうではない学校をひとくくりにできないのは当然だが、エリート集団と目されがちなJユースについても、クラブによって所属カテゴリは随分と異なるわけだ。
大人リーグがJ1>J2>J3≧JFL>地域>都道府県という階層で構成されているように、ユースリーグもプレミアリーグ(東西)>プリンスリーグ(地域)>都道府県リーグという階層になっている。
※↑画像はレイジェンド滋賀HPより拝借
そしてJリーグ各クラブU-18の所属(2019年)はこちら↓
※赤字が昇格で青字が降格。2018シーズンの結果を踏まえているはず。。。
プレミアは全国の猛者が集う最高峰リーグ。高体連からも青森山田高校などの全国制覇を狙えるレベルの強豪校が参戦している。Jリーグクラブでもプレミアで戦える、留まることの出来るクラブは限られ、J1クラブのユースでもプリンス(地域)リーグとの昇降格を繰り返しているクラブが多く存在する。そして、上記の表を見てもらえれば明白だがJ2~J3クラブの多くは「県域」リーグに留まっている。これは転げ落ちてきたというわけではなくて、今まさに昇っていこうとしている、何度も跳ね返されているという状態なのだ。
レノファ山口U-18の現実
レノファ山口U-18を例にとると、母体である「レオーネ山口」から移行した2015年より県2部Aリーグに所属(経緯はwikiとかで見ていただければ…いろいろありました)。その2015年に2部A優勝果たし1部に昇格するが、その後は高川学園や西京高校といった県内強豪校の後塵を拝し足踏み。しかしながら、少しづつ力をつけていったレノファ山口U-18は2018シーズン、先日の選手権でも好試合を見せた西京高校を上回り県1部を優勝。プリンスリーグへの挑戦権を手に入れる。
最終節では、選手権県決勝のスタメンを6人擁する西京高校を圧倒し参入プレーオフへの弾みをつけた。
そして12月22日、プリンス中国への参入戦を迎える。
トーナメント形式だが、プリンス中国の結果などから優勝する必要は無く、2回勝てば昇格確定となる。1回戦の相手は就実高校。
初の舞台への緊張もあるのか、固さの見えるレノファユース。これはちょっと話が逸れるが、天然芝に慣れていないのかな?という感じも見受けられれた。山口県でも人工芝のグラウンドが増えて、リーグ戦を土のグラウンドで戦う、みたいなことは減ってきた(それでもまだまだありますが…)。しかして天然芝ピッチで試合をする機会は限られており、これはこれで新たな課題なのだろうか?などとと愚考した次第。
話を試合に戻すと、相手のプレスが弱まった後半はペースをつかみ、自分たちのやりたいサッカーが出来ていた。
見事な崩しからの同点弾。その後は両チーム疲弊して消耗戦となり、矢継ぎ早に交代を繰り出す。
※ユースの○○というのはわたしの主観です。。。
試合は延長戦までもつれ、その後もあっぷあっぷになりながら何とか防ぎ、反撃するレノファ。しかしながら、いよいよPK戦突入かと思われたラストプレーで失点。選手たちは皆、泣きながら崩れ落ちた。
https://youtu.be/3kTj6FDQA6o
後日、就実高校の近年の成績を調べてみると、インターハイや選手権県予選で概ねベスト4の実力という全国にはあと一歩届かないクラス。しかしながら、客観的に観て実力にはやや開きがあったと思う。レノファユースも発足時と比べて大きくチーム力を伸ばしてきたわけだが、まだまだ及ばず。岡山県でいえば、作陽高校などはこの就実よりもさらに強いわけだ。
変わらずに残るもの
このように多くの都道府県で、「全国大会常連クラスの県内強豪校に対して2~3歩劣る」というのがJリーグユースの実情ではないかと思う。当然のごとく、トップに昇格できる、すぐにプロの試合に出られるような選手もなかなか存在しない。
選手権のような檜舞台も無く、プロになれるわけでもなく、エリートとも程遠い。プレミアリーグで鎬を削るような強豪ではないクラブの、Jユースには存在価値が無いのだろうか? プロになれないユース選手とは? 高校の部活に入ったほうが良かったのか?
その答えは、選手たちのツイートにあると思う。
Jユースといえど、単なる個人の集合体ではない。ひとつのチームだ。プロのクラブとも、部活動ともなんの違いも無い、襷(たすき)の引継ぎが行われる。環境の違いはあれど、そこで自分が得るもの、後に残すもの、託すものについて、それらは何ら変わること無く存在するものだろう。
ユース選手であることを誇ろう、ファンはユースを観に行こう
レノファユースは2部から始まった。初年度に所属した選手たちは、当然というと失礼かもしれないが、上手い子たちではあったがプロになれるほどの選手たちではなかった。それでも、県1部昇格を置き土産に、後輩たちに襷を繋いだ。その後2年間は1部優勝を果たせなかったが、後輩たちが成長し、可能性を感じとった新たな選手が入団して、確実に強くなっていった。そして2018年、プリンスという一つ上の舞台へは上がれなかったが、その入り口を垣間見た。
テレビ中継もない、お正月に大観衆の前で試合をすることもない。そしてトップチームに昇格することもなく卒団・卒業していく…。端からは何も残らないように見えても、当人たちは成果も、満足感も、悔しさも得て残していく。そしてその志は増幅され受け継がれていく。選手たちはそれを誇って欲しいし、大人たちはそれを汲み取ってあげて欲しい。
大多数の、エリートとは程遠いJユース。下積みからのスタート。それは、オリジナル10などの初期クラブを除いた後発Jクラブ、Jリーグを目指すクラブにも重なるところがある。県リーグや地域リーグからスタートして、いつ昇格できるのかはわからない。その時点ではプロになれそうな、プロで通用する力の選手は所属していない。何年かのちにJリーグに昇格したとして、選手はそっくり入れ替わってしまっているだろう。では、それまでの年月は無駄なのだろうか?
「Jリーグに昇格したら観に行くよ」
「J1に昇格したら観に行ってもいいかな」
誰かを誘った時に、そんな台詞を言われたことはないだろうか。ユースについて、自分が同じことを思っていたりしないだろうか?
「トップに昇格するような選手がいるのなら」観に行ってみてもいいかな?
そんな勿体ないことを言っていないで、ユースを観に行こう。彼らもクラブの一部であり、ファミリーだ。ユースはトップチームの縮図でもある。プロの試合にも、選手権にも負けないドラマがある。さあ、リーグ戦が始まったらユースを観に行こう。