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「私信」とキャリアについて

何故この話を書こうと思ったのか

今日は受託先の社員の方と1on1MTGを行っていた。いろいろな話をしたのだが、その中の話題の一つに、かなり割愛すると「自分は今後キャリアとしてどのようなことをすれば良いのだろうか」という話があった。

しかし、この方だけでなく、何人かと1on1をさせていただく中で、似たような悩みを持っていられる方は多数見受けられる。昨今の不況や新コロの影響もあり、かつてのようにキャリアの先が見通しにくい時世というのもあるのかもしれない .

僕自身、何せ働き始めて2年弱ほどなので、それほどキャリア経験もない。私自身も、かつてこの点については相当迷っていた。
だが、ある時期からその点の迷いがさっぱり消えた感覚がある。
(とはいえ、それはつい半年前くらいだと思うが)
今回は自分がどのようにこの問題を考えているか、についてまとめようと思う。

私信が大事

結論としては、私信が大事と考えている。

全くの余談だが、この記事を描くまで私も知らなかったのだが、私信という単語は元々アイドルオタク用語らしい。
私はその元々の意味を完全無視し、ただ語感がいいから、という理由だけで「自分の信念、信じるもの」くらいのややラフな意味で使っている。

よくあるパターンとして、この私信の立て方として、以下のようなケースが見受けられる。

・会社の現状のリソース的に足りないプレーヤーはここで、自分はここを埋めていきたい
・業界でのトッププレイヤーがこういうことをしているので、自分もこういうことができるようになりたい

私の個人的な所感であるが、コレは私信に当てはまらないと考えている。

1点目について。まず、これをいうと憚られるかもしれないが、所詮会社はハコでしかないということだ。極論その会社が潰れてしまったり、別の会社に転職してしまっては全く意味のないものになってしまう。

2点目について。そもそも「何ができるか」を突き詰めることは、逆説的にキャリア設計の上では不確実性が高いと考えている、ということだ。

僕のnoteはデザイナーの方が多いので、「良いCDOになりたい」という人を例に考える。
例えばその目的を達成する上で、全ての人がジョナサン・アイブなどを目指す必要はない。当然人間向き不向きはある。

さらにいえば、彼が良いCDOであることの根拠は、彼が何ができるかでは定義できないということだ。
例えばジョナサン・アイブより単純にデザインのできるデザイナーは世界中にたくさん、もっといえばApple社内にさえいるだろう。しかし、結果としてAppleは間違いなく世界最強のデザインカンパニーであり、世界で最も美しいプロダクトの一つを作っている。彼自身が世界で一番技術が高い、というわけではなくても、結果として彼は間違いなく世界最高のCDOの一人になっている。

良いCDOになる、という目標を定めるとして、そのキャリアに進む上でどういうスキルを身につければ良いか、というのは案外当てにならず、しかも大変不明確だ。さらに、解法は一つではないと考えている。ジョナサン・アイブは間違いなく世界最高のCDOの一人だが、別にジョナサン・アイブ以外にも、彼とは全く違う理由から世界最高のCDOになり得る人間は存在する。そして、一様に彼らの能力、為してきたことは彼らごとに違う。

つまり、まずは「良いCDOとは何か」を定義するのは大変大事だが、それに登るために具体的なスキルとして何を身につければ良いのか、というのは具体的に見えるが、実はかなり曖昧で、ともすれば不確実性の高い登り方をしている可能性があるのだ。

となると「良いCDOとは何か」という定義の話になり得るが、それはそれだけでブログが一本かけてしまうので今回は省略する

私信とキャリア

私自身も以前は、まさにこのような考え方をしていて、実際かなり苦しんだ。
しかし、「私信」を重要視するようにしてからは、このような悩みは消え、比較的キャリア的にも明確にパスが見えてくるようになった。

要は、あなた自身がどうなりたいか?何を信じているか?ということだ。
それは会社や業界の先輩が定義するものではない、もはや仕事や職業から定義される物でもない。あなたが何が好きで、どういう考え方をしていて、そのために何故仕事をしているのか?ということを突き詰めることだ。

極論、どの会社で働くか、どの職種をやるか、どのスキルを磨くか、などは、その私信を達成するための手段でしかない。
それは全く身勝手な考えではないし、この先何十年にもわたって働くあなた自身のキャリアのことを考えれば、会社や社会が何を求めてるかなんて全く重要ではない。

貴方自身の私信、それと会社や社会が求めてることをすり合わせるために、まともな会社では採用、人事部門が存在しているのだから。
逆にいうとこのすり合わせが双方によって良いディールであればあるほど、お互いに長く付き合っていけるのだから。

余談だが、この言葉は以前私がGREEで働いていたとき、取締役の荒木さんから1on1で言われたことだ。以前はこの言葉の意味がよくわからなかったが、今ではかなりしっくりくる言葉になっている。

実際、周りのプロフェッショナルな方々を見ていると、大抵この手の私信を多かれ少なかれ必ず持っているものだ。そしてそのアウトプットは、やはりまだ持っていられない方に比べ、確実にクオリティが違う。

もちろんこのような考え方で仕事に望むことが必ずしも幸せとは限らないが、キャリアに悩まれている方は一度考えてみても良いかと思う。

私のケースでは

前回のnoteで、抽象的な話を抽象的なまま終わらせてしまうと死ぬほどnoteが伸びないという発見をしたので、最後に私自身のケースを書いて話をシメようと思う。

私自身の私信は「激しく抽象的な概念を実際のモノに落とし込むことで、価値を生み出す」である。

私個人の話をすると、そもそも抽象的な概念を考えるのが好きだ。
人が生きる意味は何か、人の意思決定はどのような構造をしているか、人の認知がどのようにビジネスに活きてくるか、どのような時に人は心が動かされているのか、など。
そこに一定の解や仮説を見つけ、それが証明された瞬間に最も楽しいと感じる。

そして、この好みは私の実際の仕事にも生かされている。

例えば、私自身はLP芸やUI改善・仕様変更によるマーケティング・売り上げへの貢献が比較的得意だ(と勝手に)思っている。
LPやABテストなど、いろいろな方法論はあれど、私自身はP&Gの方がよく言われる「First moment of truth」をいかに見せ付けるかの勝負と考えている。

顧客が商品を買うまでの意思決定を分解し、インサイトをえぐり、LPやUIでそのFMOTを見せ付ける。それが上手くハマれば当然売り上げが上がり、その瞬間は何事にも変えがたい。
もちろん外れる時も多いのだが、これはまさしく「激しく抽象的な概念を実際のモノに落とし込むことで、価値を生み出す」瞬間の一つだと思っている。

もっというと、これをLPやUIだけではなく、プロダクト全体、事業全体、会社全体でできればより楽しいのだろうな、と考えている。
そのため、現在は自分でプロダクトをいくつか作っている。

また、この私信は私の苦手な部分を補う役割もある。

過去に私は知能検査をテストで受けたことがあったのだが、その結果出てきたのは「他の能力に比べ、著しく口頭での言語化能力が低い」ということだ。実際、口頭で説明すると、自分で何を言っているのかわからなくなる時が多い。
もちろん改善しようとはしているが、脳の構造上最早ある程度は仕方ないことでもあると考えている。

だからこそ、それをモノに落とし込む、というのは自分に取って自分を守る方法の一つなのだ。言葉では伝わらなくとも、しっかりと最後までモノに落としこみ、結果として出せば問題はない。
(とはいえ、これはチームや顧客に説明責任を果たさなくても良い、という免罪符として使っているわけではない。)

だからこそ、自分は企画を考え、仕様を考え、デザインをし、コードを書くことが好きだし、これからも続けていきたいと考えている。

まだ自分はキャリアとしては2年目で、私がいうのも憚られる内容だが、キャリアに悩む人の何か参考になれば嬉しい。


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