AUA Language Center┃構造を用いたクローズドとオープンの対比
AUA Language Center / EAST Architects, 2021
構造を用いたクローズドとオープンの対比
1. 建物概要
BTS Ratchadamri(ラチャダムリ)駅近くのアメリカ大学同窓会によるラーニングセンター。
BTS沿いにあるので、電車から綺麗に見下ろすことができます。
細い間口に長い奥行。
背も高く、とても細長い建物になっています。
建築設計はチュラロンコーン大学(日本の東大みたいな位置づけ)出身のユニット建築家、EAST Architects。
構造設計者は分かりませんでした。
ざっくりとプランを描くとこのようになります。
通りに面した西面と、眺望の良い北面は外壁沿いに吹き抜けになっており、南側に居室(教室や職員室)が並んでいます。
2. 構造概要
構造はRCのラーメン架構。
パッと見、シンプルな短手方向ワンスパンのフレームかなと思いましたが、
意匠と設備(環境)との融合を目的とした一工夫がありました。
それは廊下側の柱の位置。
最外部ではなく、少し内に入った、廊下と教室の境界部に配置しています。
クローズドな教室空間を構造体として固めて、
オープンな廊下側はそれにもたれかかるように軽いフレームになっています。(もちろん外装支持としてのフレームは必要)
長手方向に走る細長い半外部廊下に、
十分な光と風を差し込ませる。
意匠設計と設備(環境)設計と上手くマッチした構造デザインですね。
廊下の床スラブは内側の構造から跳ね出すことにより、
外壁側を開放的な吹抜け空間としています。
タイの教育施設をいくつか見てきましたが、
廊下を半外部、教室に入って初めて内部空間、という構成が主流です。
日本ではあまりやらない考えです。
暑い!というクレームが出そうですが、
その代わりに廊下空間が非常に開放的になります。
3. エントランスホールと階段
各階の廊下・教室以外にも、
天井が高く、連続したラーメンフレームが綺麗に見えるエントランスホールは、側面の端正な階段も含めてとても印象的でした。
リズミカルな構造体の間に挟まる設備も
黒で統一されていてスタイリッシュな空間によく合っています。
階段は鉄骨でできており、モルタル+レンガ仕上の踏み板が両端の鉄骨ササラで支持されています。
あまり構造で特別なことはしてないですが、
無骨な鉄骨梁は上手く隠されており
綺麗に仕上がっていました。
ただ、手摺に謎な納まりがあったのと、
部材断面的に攻めたフレームのせいか、歩行振動が少し気になりました。。
踏板の上で足踏みすると結構揺れを感じます。
ササラ受けもササラもピン接合であること、
スパンが大きい割に部材断面が小さいことが理由でしょうね。
まぁ、階段なんて多少揺れても…という考えもあります。
応力と変形がクライテリアに収まっていれば何も問題ありません。
(私も「多少揺らしてこそ格好良い階段だ」と思うことはあります。)
4. 外装材のレンガ
少し中世の趣のあるレンガの外装も、
非常に細かいスケールで構成されていて
かっこよかったです。
レンガって外壁としての変形追従性ってどうなんですかね?
私は経験ないので分かりませんが、
多少ケアしないと割れそうですね。
地震を考慮せず、風荷重も日本よりも小さいこの土地では、外装材でも色々とチャレンジできそうですね。
全体的なデザインは近代建築っぽさがあり、
RCのエッジの効いた構造体とよく合ってました。
外部環境との調和が撮れていて、
タイっぽくて格好良い建築でした。