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日本企業と海外スタートアップの間の埋まらない溝

さて今回は、文化・組織プロセスの違いの話です。
日本企業とアメリカやヨーロッパのスタートアップ企業が提携を模索するとき、様々な局面で日本企業が「何をしに来ているのかわからない」と言われていることを目に、耳にすることが何度もありました。どうしてこういうことが起こってしまうのか、見てきたケースについてお話しします。


よくあるケース1:日本の企業が海外企業と提携をしたい(または日本の政府関連組織が海外のエコシステムを学びたい、等)といった内容でアメリカを訪れることが最近は多いかと思います。そういう局面で、日本側は得てして複数名でツアーを組んで、相手企業や土地の様子をよくわかっている人や、ビジネスにおける意思決定力をもつようなポジションの人に「表敬訪問」をします。日本人グループはツアーをこなして満足して帰国するのですが、その旅の間に行われたことは「ご挨拶」と「お勉強」だけで、ツアーの間には特に何の意思決定も進みませんでしたので、訪問を受けた側は、何をしに来たのかわからない日本からの度重なる訪問団に辟易し、徐々に協力をためらうようになってしまいます。


よくあるケース2:提携が実現し、一緒に働くことになった日本企業とアメリカスタートアップ企業。当然、急いで決めなくてはならないアジェンダが沢山あります。週次ミーティングに、今回はこれとこれを決めるぞ!と意気込んでMTGに現れるアメリカ側チーム。ですが日本側は内容を議論はするものののらりくらりとかわし、結局その場では決まらない。いつ決められるのかも明言してくれない。週次MTGには未決のアジェンダがどんどん積み重なっていく。アメリカ側は不安ととまどいでオロオロしてしまいます。


どうしてこんなことが起こってしまうのでしょうか。

日本側には、勿論日本側のロジックがあり、最適な手順を踏んで動いています。むしろこのようなプロジェクトには、組織内でも勤勉で優秀な人々が関わっているはずです。

それでも海外スタートアップから見たら意思決定が非常に遅く、不透明に見える理由の一つには、日本の組織における上下関係や合意形成のプロセスがあります。確実な意思決定を行うための準備、また組織内で広く合意を得ることに重きを置くため、ミーティングは「情報の共有」や「関係者の意見を取り入れる」場と位置付けられがちです。「根回し」「合議」を経ないで、誰かが意思決定をその場でしてしまうことは、日本のトラディショナルな組織においては許されないことが多いです。

また、その背景として、日本組織の意思決定はクオリティと合意を最重要視し、速さの優先順位が非常に低いのです。更に誰が何の意思決定をするのかが明確でないことが多く、違う文化圏の組織から見ると意志決定プロセス・責任者が不明瞭で、不安を招いてしまうことがあります。

このような日本型の意志決定は、日本社会の中での組織の信頼性を何より重視するビジネススタイルにおいては最適であったと思います。意思決定における見落とし・ミスや関係者の中でのミスアラインメントを徹底的に除外することができるからです。今後も、そのスタイルが必要となる領域・局面もあることと思います。

ですが、特に海外のスタートアップとの提携など、意志決定のスタイルが大きく異なる相手の場合、相手の考え方を一定尊重した付き合い方が必要となることもあります。まずは、このようなカルチャーの違いがあることを双方が理解することが第一歩であると考え、日本語のnoteとしてまとめておきたいと思った次第です。


*こちらの記事に、海外から見た日本組織の意志決定方法の特徴が簡潔に記載されています

https://www.businessinjapan.com/japan-decision-making-process/

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