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PERFECT DAYSは、本当に完璧な日常の映画だった(ネタばれ注意)

おはようございます!

今日はこちらの映画「PERFECT DAYS」について、短めにです。

ネタばれアリの内容なので、観ていない方はぜひ観てから読んで下さいね。




2つの映画「素晴らしき日々」と「パーフェクトデイズ」


カンヌ国際映画祭で賞を受賞して話題になった「パーフェクトデイズ」。

役所広司が演じるトイレの清掃員の話ですが、まず、東京の街の描写がリアル。

10年、20年後に見たら、東京の風を肌で感じられるくらいの人間関係の密度、そして情景描写の粒度です。

また、都内に住んでいても、ほぼ見かけないし行かないようなとても素敵な公共トイレが、映画の見どころの一つかと思います。

出てくるカセットや文庫本が並ぶ古本屋が化石化している今、どこか村上春樹の小説の主人公を見ているような、レトロな懐かしさを感じました。


真面目に働く日本のブルーワーカー的な存在の映画って、たくさんいる人たちのはずなのにほとんどないような気がしますよね(蟹工船とか、坑夫とかは思いつくものの、現代版は私が知らないだけ?)

評判を聞いてこの1本前に(パーフェクトデイズと間違ってしまい)見た映画、

素晴らしき日々(どちらも主役は役所広司なのだが、まったく正反対の刑務所から出てきた人の話)」と同じようなボロアパートに住んでいる主人公。

生活が楽ではない低賃金労働者であるところがどちらの映画も共通していて、カップラーメンを食べるシーンなど既視感があります。

素晴らしき日々は、限られた刑務所の外の人生での「素晴らしさ」と、変わらない主人公の仏性のようなものの対比が描かれていましたが、

では、こちらの「パーフェクトデイズ」は、どうパーフェクトなのでしょうか?


その、完璧で羨ましい生活。


毎日ルーティンの日常の中で、公共トイレの清掃の仕事をする姿を淡々と追っていくのですが、その日々は、同じことをしているようで、毎日少しずつ違っている。

というのが一般的な解釈なのかもしれません。

単調な日々は存在しない。

というメッセージですね。


私は、それよりも、主人公が行っていることすべてが、実は私がやりたいことだった、という意味で「パーフェクトな人生とはこれだ!」と思いました。


具体的には何かというと、主人公が以下のような生活をしているということにです。


・日々のルーティンワーク(トイレ掃除)を職人的に仕上げている
・最低限の出費の中で、音楽や休憩時間を楽しみ
・行きつけの店を持ち、特別な時に飲みに行く店を持ち
・日々の些細な事に楽しみを見出している

さらに、

・無口でも健康的に人に働きかけ、関わりながら生活している

あれ、

これってすべて私がやりたいことを、(大変失礼な言い方ながら、低賃金労働者であったとしても)しっかりと、

むしろ私以上に、楽しく達成しているではないか!

なんだか、とても豊かな生活ではないか!


とびっくりし、心の底から、羨ましく思ったのです。

金があれば幸せか?というと、そうではない、という理解していたはずの概念が、腑に落ちた感覚です。


十分(質素でも面白くきらきらとした日常である)パーフェクトな生活をしている主人公。


どんな状況でも、パーフェクトな日々になる。


例えば、超高給取りのオフィスビルで働き、密封された高層マンションに電車で帰るルーティンと、

この主人公の住む風通しのよいアパートとバンで繰り返されるルーティンはどちらが豊かなのか?

スタバのコーヒーを毎日飲む生活と、缶コーヒーを2本買う贅沢と、どちらが豊かなのか?

これまでは「もちろん高層ビルっしょ!」とどこかで思っていましたが、


なんだか、楽しそう。

羨ましい。と素直に、映画を観ながら思いました。


特に、行きつけのお店と公園でのランチ。ちょっとした趣味。


これは貧富の差ではなく、どう生きるか、という問題なのだ、と理解しました。

ポール・ウイリスの「ハマータウンの野郎ども」を読んで、労働階級といういわゆる「ブルーワーカー」が、ホワイトワーカーと違う価値観の中で暮らしている、ということを頭では理解していましたが、

どの階級・階層にいたって、

どんなにルーティンワークだって、

結婚ステータスなどを問わず、

「完璧な日々」というのは送れる

ということを、はじめて映画を観て、腹落ちしました。

それが、どんなにつまらないサラリーマンという社畜の、ルーティンワークであっても、です。


これのワーママ版を見てみたいな、と思ったのは私だけ?


究極的には、「つまらない日常」と自分が決めつけなければ、人生は経済的な状況に関わらずいくらでも豊かに鮮やかになる。

というメッセージを、繰り返される日常の描写で伝えたかったのだと思います。


ここまでルーティンにはならなくても、どんなことに心を動かされ、予想外のことに翻弄され、自分から人に働きかけ、自然と向き合うんだろう?

与えられたことの中で、どういう楽しみを見つけていくんだろう?

ということを考えました。


日々、何がちょっとした楽しみで、何がちょっとした贅沢で、何が生きがいなのか。

それは、缶コーヒーや、トイレ清掃の仕事や、バンを運転することや、音楽を聴くこと(そして気づいたらカセットテープが高く売れる世界になっているような違和感)

自然の光や影、移ろいを楽しみ、植物を育て、人を育てること。

いろいろな人と関わりながら生きること。

そんな小さいけれども、幸せなことの積み重ねが「パーフェクトな日常」をつくる。

ということを、改めて学習した良い映画でした。




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