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最も大変で偉大な職業

その職業には、休みがない。
勤務時間は、365日24時間、1月1日から12月31日まで。常にフル稼働しているわけではないが、突発的な問題への対処も必要であり、人によっては気が休まらないこともめずらしくない。出勤や退勤という概念すらなく、「働く=生きる」なのである。

その職業には、給料がない。
どんなにがんばろうとも、定期的にもらえるお金は基本ゼロ。そもそも雇用主など存在しない、しかしボランティアでもない。給料がないから有給休暇なんてないし、病気休暇の取得さえままならない。

その職業には、余裕がない。
朝も昼も夕方も夜も真夜中も、いつもどんなときも必要とされる。代役はおらず、かといって楽な仕事などない。基本は立ち仕事、ときにはしゃがみ、ときには走り、濡れたり、汚れたり、ケガしたり。
常に時間や体力やクライアントの機嫌との勝負で、なのに自分の時間が取れるのは就寝前の数十分だけという人も少なくない。心身ともにとんでもなく負荷のかかる職業だ。

しかし、僕は思う。その最も大変な職業こそ、最も偉大だと。




おわかりいただけただろうか。
その職業とは、「お母さん」である。

毎日、毎時間、毎分、毎秒、家族のために一生懸命働く人。便宜上、本文ではそういう人たちを総じて「お母さん」と呼ぶことにする(男女平等参画等については、ここでは議論を控えさせてほしい)。

お母さんには休みがなく、給料もなく、余裕もない、というのが、日本におけるマジョリティーだと僕は思う。しかし、こんなに大変な仕事を請け負ってくれているというのに、あまりにも立場が弱すぎやしないか。

子どものいる世帯はさらに大変だ。わがまま放題の小さなクライアントを相手するのは、相当なストレスだろう。それでも、彼ら彼女らは大切な宝物であるからして、だからこそお母さんは一生懸命に東奔西走するしかない。
にもかかわらず、せっかく作った料理を残されたり、「明日着ていく服がまだ乾いてない」といわれたり、寝る直前に「明日お弁当だから」と衝撃の告白をされたり、である。

感謝されこそすれ、恩を仇で返される筋合いなどないはずなのに。


思うに、お母さんとは、ただ家事をこなす人ではない。それならば家事代行サービスで事足りる。
お母さんとは、料理人であり清掃員でありクリーニング屋であり卸問屋であり看護師であり保育士であり教師であり美容師でありカウンセラーでありテレフォンオペレーターでありタクシードライバーでありファッションコーディネーターでありお笑いタレントであり会計管理者でありゼネラルマネージャーである。
つまり、めちゃくちゃすごいビジネスパーソンなのである。

そのめちゃくちゃすごいビジネスパーソンのほとんどは、愛情を原動力にして働いている。そして、我々恩恵を受ける側は、その愛情に甘えてばかりではならない。
ここで「だれのおかげで飯を食えてると思ってるんだ!」などというような輩は、もう一度精子からやり直してこい。そして卵子争奪競争に負けてこい。

話が脱線したが、お母さんの仕事というのは、当たり前じゃない。本当は有り難いありがたいことのはずだ。このことを、たまにでいいから思い出してほしい。お母さんの誕生日だけでなく、母の日や勤労感謝の日なんかにも。そして、感謝の気持ちを行動でちゃんと伝えてほしい。

それが、「家族」というものだと思うから。


(おしまい)




本記事は、本田すのうさんの私設コンテスト「すのう杯」(ハッシュタグ【#私も家事が好きになる】)に応募したものです。

「家事が好きになれるきっかけが欲しい」とのことですが、残念ながらアルロンは家事が嫌いです。「家事が好き」という人を見つけたら、スネイプ先生の薬品庫から真実薬ベリタセラムを持ってきてそいつに飲ませたくなるほどには嫌いです。なので、このお題で書けるかどうか悩みました。

いろいろと考え、
「家事が嫌いなら、せめて家事をがんばっている人を応援しよう」
という結論に至りました。かなり遠回りな記事になりましたが。

執筆の際、下記の動画を思い出しました(けっこう前の動画ですが)。この動画では、お母さんの役職を「現場総監督」と表現しています。


本記事が募集意図に合っているかどうかは微妙ですが、お母さんに感謝するきっかけになればいいなぁと思います。

すのうさん、素敵な企画をありがとうございました!




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