No.03 『プロセスエコノミー』
著者:尾原和啓 発行日:2021/7/30
おすすめ度:★★★
「ないものがない」そんな時代に生きている私達は、企業や個人のプロセスにお金を払うようになっています。
コロナ禍で会社や学校にも行けない。そんな時代において、自分の価値観(Why)を掲げ、みえないゴールを目指すプロセスを発信する。
それが現代における、売れるビジネスなのです。
ゴールから逆算するのではなく、「今の自分」が歩む人生のプロセスから、人を集める。
プロセス・エコノミーとは
私たちが生きる今の時代は、良いモノを生み出すだけでは稼ぐことはできない。
良いモノを世に出せば、すぐに同じクオリティーのモノがより手軽な価格で売られ、その価値は薄れてしまう。
このサイクルの繰り返しです。
では、どのように誰も真似できない「唯一無二」を売るのか?
その答えは、プロセスを売ることです。
プロセス・エコノミーの逆概念は、アウトプット・エコノミーです。
アウトプットエコノミーとは、「プロセスでは課金せずに、アウトプットで課金する」というものです。
アウトプットは同じでも、そこにたどり着くまでのプロセスは何通りもあります。
そのプロセスに価値を生み出し、共感を得ることで、ビジネスに繋げるのが、現代のやり方です。
その代表例が、キングコング西野さんが運営するオンラインサロンです。
彼は絵本を作るプロセスをオンラインコミュニティ内で発信することで、そこに価値を見出した7万人以上の会員が毎月1000円を彼に支払うようになりました。
その結果、プロセスが絵本というアウトプットをより唯一無二な存在にしました。
ゴールが決まった「オーケストラ型」ではなく正解のない「ジャズ型」になれ
プロセス・エコノミーは、ジャズのようなものです。
ジャズクラブでは、集まった客・メンバーが原曲が何なのか分からなくなるほど即興演奏で音楽にアレンジを加えることが出来ます。
この場所でしか生まれない音楽を奏でます。それは、明日や明後日には二度と聴けない特別なものです。
だからこそ、何度でもクラブに通いたくなる。
ゴール・完成形から逆算した「オーケストラ型」のアウトサイド・インの考え方ではなく、自分の内面からその時湧き起こる衝動を起点にした「ジャズ型」のインサイド・アウトな考え方が、非常に重要です。
例えば、今年流行したClubhouseも、気軽に打ち合わせなく、ゴールのない会話を繰り広げる。
そして、その会話はその場でしか聴くことが出来ない唯一無二なもの。だから、人気が出たのではないでしょうか?
逆算せずに、「今」に焦点をあてて、行動することが、プロセス・エコノミーでは重要です。
WhatよりもWhyが判断基準になる時代
プロセス・エコノミーで重要なのは、WhatでもHowでもなく、Whyです。
「What・How・Why」は、日本で言う「心技体」に似ています。
体がWhatで、技がHow。そして、心がWhyです。
この心技体をAppleに置き換えてみます。
Appleの「体」はMacやiPhoneなどのプロダクトで、「技」はAppleのテクノロジー、「心」は創業者スティーブ・ジョブスのメッセージです。
どうでしょう?Appleと他社の「体」「技」の差は、数年前に比べ少なくなりました。
しかし、今でも多くの人が、他社よりも高額なAppleのユーザーです。
なぜなら、彼らはアップルが発信する「We believe people with passion can change the world for the better」というメッセージ(コアバリュー)に賛同しているからです。
情熱を持つ人と共に、冒険を重ねていく。その企業の「心」「Why」に彼らは高いお金を払っているのです。
家族・仕事・近所という三大所属が希薄化した現代において、同じ価値観を持つ人々との繋がりを感じられる消費行動に、新たな所属欲求を求めているのかもしれません。
Mustの先にCanがあり、Canが増えてWillが生まれる
プロセスエコノミーを通じて、多くの人々を集める為には、スケールの大きな「やりたいこと」が必要です。
しかし、そう簡単に将来「やりたいこと」が見つかるわけでもないと思います。
だからといって、身の丈に合わない誰かの「Will」を借り物にするのも良くありませんし、行動しないことも何も生みません。
だからこそ、まずは一生懸命に「Must」(やらなければいけないこと)を行う。そうしているうちに、おのずと「Can」(自分にできること)の幅は広がり、得意なことも生まれてきます。
得意なことを好きになれれば、そのプロセス自体にも熱中することが出来、続けていくうちにやがて自分だけの「Will」に出会えるでしょう。
まずは、行動する。できることからやる。そのプロセスを共有する。
そうすると、おのずと道は切り開かれていくのではないでしょうか?