対人関係で怯えてしまうのは、相手に親を投影しているからかもしれない
私たち人間には、過去の大切な人との関係性を、新しい人間関係に無意識のうちに投影してしまう傾向があるんです。
特に親との関係性というのは、私たちの心の奥深くに刻み込まれていて、
知らず知らずのうちに他人との関係性に影響を与えてしまうことが多いんです。
先日、ある相談者Aさんは、こんな悩みを抱えていました。
「職場の先輩に『それ、違うんじゃない?』と指摘されただけで、急に涙が出そうになってしまって。なんでこんなに傷つきやすくてメンタル脆いんでしょうか…」というご相談でした。
Aさんのお母さんは完璧主義で、過干渉で、些細なことでも厳しく叱責する方だったそうです。
「お皿を置く位置が2センチずれているだけで怒られた」「本棚の本の順番が少しでも違うと叱られた」という経験が、今でも心に深く刻まれているとおっしゃっていました。
かく言う私自身も、以前は人間関係で悩むことが多かったんです。
特に、仕事などで40〜50代くらいの男性と関わると途端に「完璧でなければならない」「失敗は許されない」「失言だけは絶対にダメだ」「可愛い後輩だと思われなければいけない」というプレッシャーに押しつぶされそうになったり、必要以上に媚びてしまったり、些細なことを指摘されただけで心が張り裂けそうになったりしました。
ネットマーケティング業界だったのですが、仕事で関わる機会も結構多く、その時は「なぜ自分はこんなにもいわゆる『オジサン』が苦手なんだろう」と自己嫌悪に陥っていました。
でも、カウンセリングや心理学の勉強を進めていく中で、気づいたことがあります。
私の中の「完璧でなければならない」という思いは、実はヒステリックですぐキレていた父親の姿が重なっていたんです。
父は決して手が出るタイプではありませんでしたが、とにかく急にキレるタイプで、かなり喜怒哀楽の波が激しい人でした。モノには平気で当たり、ドアを蹴り飛ばして穴が空いてしまったりということもありました。
今でもその光景を思い出すと身体が少し緊張してしまうくらいなので、きっと幼少期の私にとっては「恐怖」以外の何ものでもなかったことでしょう。
その体験が、知らず知らずのうちに、私の「年上の男性が苦手」「特に40〜50代くらいの男性が苦手」という感じで、人間関係にも影響を与えていたんですね。
Aさんの例や私の例は「投影」という心理です。
母親や父親を、似たようなタイプの人に映し出して過剰反応してしまう。
投影対象の相手は、性別が同じだということもありますし、異なることもあります。(彼氏に母を投影する、女性上司に父親を投影するなども全然あります。)
主観的にみて、「反射的に似ていると感じてしまうかどうか」が投影のキーポイントです。
誰もが程度の差こそあれ、親との関係性を現在の人間関係に投影してしまうものなんです。
そしてこれは、Aさんの例や私の例のように対人関係や仕事、恋愛での生きにくさに繋がってきます。
大切なのは「気づく」こと。
投影に気づくことができれば、少しずつ変化を作っていくことができます。
私の場合は、投影が生じて緊張した時には、まず「これは過去の記憶が現在に影響を与えているんだ」と認識することから始めました。
そして、現在の相手は父ではない、まったく別の人なんだということを、意識的に思い出すようにしました。
アファメーション的に自分の脳に「この彼は父ではないんだよ」と、意識的に刷り込んでいきました。
さらに、「俺はもう幼少時代の小さな子供ではなく、自分の身は自分で守れる大人なんだ」と何十回も何百回も意識してきました。
Aさんも、先輩からの指摘を受けた時に「これは今の先輩であって、母親ではない」と自分に言い聞かせることで、少しずつ心の安定を取り戻せるようになっていきました。
投影は長年の習慣のたまものなので、簡単にすぐには変われません。
私自身、今でも時々、過去の影響を感じることはあります。
でも、何より大切なのは「気づけていること」なんですね。
「俺には父親の影響が深く残ってる」「私には母親とのネガティヴな感情が強く残ってる」と、意識できるだけでも楽になります。
そういった自分の傾向に気づけることは、大きな一歩だと思います。
そして何より大切なのは、こういった「気づき」を得たからといって、急激な変化を求めすぎないことです。
私たちの心は、長年かけて形作られてきたものです。
だからこそ、変化にも時間がかかって当然なんです。
焦る必要はありません。自分のペースで、少しずつ向き合っていけばいいんです。
本日は以上です。
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