見出し画像

アジャイルの森から出て妖精の輪に取り込まれた話

シン・アジャイル Advent Calendar 2024 19日目の記事です。

妖精の輪、それは欧州のむかし話に登場する妖精たちが夜な夜な踊る輪。足を踏み入れた者は方向感覚を失い、永遠に森の中を彷徨うと言われています。
そして、今年も結局、迷子の話。


1. 妖精の輪へのトラップ

どんなアジャイル開発チームも、結成直後からいきなりベロシティが出るわけではありません。私たちのチームも、チームビルドの初期は実現したいものやプロダクトバックログへの認識不足、そして、スクラムそのものの理解不足の状態でした。実際に軌道に乗るのには数か月を要しました。その後は、順調にプロジェクトを進め、そして約1年後には、初回リリースも終えました。
そんなある日のこと、ひとり、メンバーが抜け、またひとりと、次々とメンバーは別のプロジェクトにさらわれていきました。そして私も…
新しいプロジェクトは WBS 管理。みんな、WBS管理のプロジェクトの経験はありますが、アジャイル開発に慣れた身には大きな変化です。そして、新しく導入した WBS 管理ツールへの不慣れもあり、私たちは気づけば戸惑いの森の妖精の輪へと誘い込まれてしまったのです。

2. 濃霧注意報

WBS 管理への移行で最も困ったのは、タスクの持ち主と状況が見えづらくなったこと。
アジャイル開発ではタスクボードで誰が何のタスクを持っているか一目で分かります。
一方、ガントチャートベースの WBS 管理では状況捕捉方法がまるで異なります。初期検討段階では特に要調整・要調査項目が多く、仕掛が増えていきます。WBS上はスケジュール通りに進んでいます。しかし、多能工でのイテレーティブな開発に慣れた後に、改めてこの方法に戻るのは、かなりのもどかしさがあります。
それは、深い霧の中で迷って行きつ戻りつしているかのような感覚。
タスクの重複や担当の不明確化による進捗の停滞は、チーム全体を混沌へと引きずり込んでいきました。

3. 大きすぎる荷物と消耗戦

WBS 管理では、タスクの粒度が大きすぎることも問題でした。
アジャイル開発ではタスクの粒度で細かく管理していたレビューやプルリクエスト。WBS では多段階に階層化して管理することもあり、ドキュメント全体のレビューが完了するまで親タスクがクローズできない状況にもなり得ます。
さらに、レビューとモブワークを頻回に行っていたため、クローズするまでに大きな消耗を強いられる場面も。
まるで妖精のいたずらで荷物が重くなったような、苦しい日々。「今、あれ、どうなってる?」と、それぞれ迷子になり途方に暮れる日もあったような、なかったような。

4. 輪から抜ける地図

さて、こんな場合、どうしたらよいのでしょうか。
ひとつは、ミニマルレビューの導入です。
WBS 管理下でも、小さな単位でレビューを行うことで、進捗を可視化し、タスクのダレ感を解消できるかもしれません。ただし、重箱の隅レビューに陥らないように注意する必要はあります。
ふたつめは、チームの外の事情も使ってドライブさせることです。
スクラムのスプリントレビューのような、チーム外のステークホルダーを含むイベントを意図的かつ短めのサイクルで実行することでズレを抑えていく作戦です。
これらが、妖精の輪から抜け出してチームを向かうべき方向に前進させる力となるかもしれません。
「まずは、現在のタスクを完遂していくこと」が大切ですから。次の工程を意識しつつ進められるとなおよし、です。

5. 迷子の森から学んだこと

WBS 管理へ舞い戻った迷子の森で学べること、それは、WBS 管理とアジャイル開発、それぞれのメリット・デメリットを理解し、状況に応じて適切な手法を選択することの重要性、でしょうか。
そして、どんな状況でも私たちは進んでいかなくてはなりません。
そのためには、まずは、「現在のステータスと次の工程を意識すること」が、迷子の森から脱出するための羅針盤となるでしょう。
まるで妖精からの贈り物のように、このような経験は、チームの成長にとって貴重な財産となる・・・・ことを祈ります。


いいなと思ったら応援しよう!