白樺学園高校からモナーシュ大学へ!北海道の僻地から世界に挑む奇跡の物語
1. イントロ:山奥の高校から世界への挑戦
北海道は十勝にある白樺学園高校。外国人との接点もほとんどない、自然豊かな僻地。もちろん海外進学を考えている高校生も皆無と言っても良いでしょう。
そんな環境から、今年、オーストラリアの名門・モナーシュ大学(マレーシア校)に合格する生徒が現れました。
この異例の進学成果は、一人の教師の情熱と生徒たちの挑戦が生んだもので、白樺学園がこれまで培ってきた教育姿勢を象徴するものでもありました。今回は、その指導に尽力した福井先生にお話を伺いました。
2. 白樺学園高校とは?
白樺学園高校は、スポーツ強豪校として広く知られており、オリンピックメダリストも多数、輩出しています。今年の甲子園出場校でもありましたね。
公立志向の強い十勝エリアでは、私立高校は3校のみ。少子化の影響を受ける中、私立高校としては公立にない強みを打ち出していかなければ生き残れない。そんな背景の中、2022年、白樺学園は学校の特徴のひとつとすべく、「地域一番のグローバル校」を目指す決断をしました。
地元でも大きな話題を呼んだこの方針転換は、生徒たちの将来を広げる大きな一歩だったのです。
3. 海外進学への挑戦はゼロからのスタート
かつては、白樺学園で海外進学を考える生徒はほとんどいませんでした。「海外の大学進学は夢物語」と捉える生徒が大半で、自然豊かで食料自給率が高い十勝という土地柄もあり、地域全体に内向き志向が根強く存在していたのです。
しかし、福井先生は、子供たちの選択肢を広げることの重要性を感じており、まずは海外への扉を開くための第一歩を踏み出しました。
4. 海外大学との提携を情報発信
まず、白樺学園ではGIP(Global Innovation Program)を導入し、多くの海外大学と提携しました。これにより生徒が進学の選択肢を世界に広げられる体制を整えました。
十勝の大学が世界の名門大学と提携。このニュースは地域の新聞でも一面に取り上げられ、学校の取り組みは地域全体に広く注目されることになりました。
ワールドワンダーを実施
次に、福井先生は「ワールドワンダー」という留学経験者を招いたイベントも実施し、生徒たちに異文化や海外進学のリアルな体験談を直接聞く機会を設けました。
生徒にとって、異文化や海外を実感できる貴重な体験が、さらに海外進学への興味を育んでいったのです。十勝では外国人はもちろんですが、留学経験者も少ないため、生徒にとっては貴重な機会になったものと思います。
5. 少しずつ芽生える海外への関心
福井先生の熱心な指導と新たなプログラムの導入の成果もあって、海外に関心を持つ生徒が少しずつ増えてきました。
当初は「行ってみたい」「挑戦してみたい」と思う生徒はごく少数でしたが、それでも彼らが次第に周囲に影響を与え、他の生徒たちの心にも火をつけるきっかけとなっていきました。
6. IELTSへの挑戦と成果
とは言え、海外大学へ進学するには、「英語力の証明」が必要です。
多くの海外大学はIELTSもしくはTOEFLのスコアを受け入れますが、日本でもっとも普及している英検を受け入れている海外大学はごくわずか。よって留学希望者は世界で普及しているIELTSやTOEFLをベースに学習を進めるのが主流。
が、残念ながら、十勝にはどちらの受験センターもなく、試験を受けるだけでも最寄の札幌まで往復6時間の移動が伴うものでした。
生徒にIELTSの指導を
また、地域内には英語試験を専門に指導できる人材もほとんどいませんでした。そこで、福井先生はGIPのサポートのもと、IELTSの専門校イングリッシュイノベーションの講師からIELTSの指導法を学ぶ研修を受けます。
これにより、学内にいるネイティブ講師がIELTSを学内指導出来る体制を整えます。また、フィリピンの英語教育機関と連携し、生徒に個別対応のレッスンを実施する体制も整備しました。
つまり、学内でIELTSの指導が出来る体制を整えたのです。
とは言え、この時点で海外大学の進学を検討している学生も数名程度。まずは手を挙げた2名の生徒がIELTS対策に取り組みました。
半年でIELTSスコアを取得
IELTSの対策をはじめた高校3年生になったW君。モナーシュ大に合格した生徒です。
彼は4月から勉強を初めて、半年で出来るだけのスコアを取得する事が目的でした。目標は最低IELTSのバンドスコアが5.0。ですが、10月には5.5を取得する結果となりました。
7. モナーシュ大学への合格という快挙
そして、ついに、白樺学園の生徒がオーストラリアの名門モナーシュ大学(Monash University)に合格しました。
モナーシュ大学は、メルボルンに本部を置き、世界大学ランキングでも東京大学とほぼ同等の評価を得ている名門校で、世界中から優秀な学生が集まります。
このニュースは十勝にとっても、「やればできる」という希望を象徴するものであり、地域の若者たちに大きな夢と勇気を与える出来事となりました。
8. 福井先生の情熱的な指導が生んだ成功
今回の成功は、福井先生の地道な指導によって生まれたものです。福井先生自身、留学経験が豊富にあったわけでもなく、英語試験対策のエキスパートでもありません。
しかし、彼は生徒と共に学び、指導方法を模索しながら一歩一歩進んできました。生徒がくじけそうになるたびに背中を押し、信頼関係を築きながら2年間支え続けたその姿勢が、今回の成功をもたらしたのです。
9. 今回の成功がもたらす未来
この成功は一つの合格通知を超え、白樺学園にとっても地域にとっても、新たな可能性を示す象徴的な出来事となりました。
「十勝から世界へ挑戦できる」という事実が、次の世代の生徒たちに大きな希望を与え、さらなる挑戦を後押しすることになるでしょう。
ひとりの海外進学者が繋ぐ未来
多くの学校がまずは一人の成功モデルを輩出することから始まります。
合格した先輩が後輩に経験を共有することで、後輩たちは「自分もできるかもしれない」と新たな挑戦に取り組みやすくなります。
先生が言うより、歳の近い先輩が言う方が自分ごととして捉えてくれます。
白樺学園のこの第一歩は、十勝にグローバルへの扉を開く大きな意味を持つ出来事となりました。
「十勝から世界へ」――この物語は、まだ始まったばかりです。
白樺学園高校の改革成功のポイント
今回、白樺学園からモナーシュ大学に合格者が出たことは、もちろん生徒の努力の賜物ですが、同時に、学校全体で生徒の挑戦を支える仕組みを築いた福井先生の力があったからこそ実現した成果だといえます。
白樺学園では、当初「海外進学なんて夢物語」という考え方が主流でしたが、福井先生は地道に生徒たちの意識を変えることに取り組みました。
やる気がゼロに近い状態から、粘り強く指導し、少しでも興味を示した生徒に対しては丁寧にフォローを重ね、海外進学に向けた意欲を引き出すことに尽力しました。
このように、生徒一人ひとりと向き合い、海外進学を可能にするためのサポート体制を整える努力が、今回の快挙に繋がったのです。
さらに、私(大塚)の経験上、結局のところ、学校改革に成功する学校にはこうした「生徒と学校の未来を最優先に考え、変化を楽しめる教師」が必ずいるものと感じます。誰でも変化は怖いし、面倒なものですが、そこにどれだけの情熱を注げるかがキーになると思います。
白樺学園では福井先生がキーでした。生徒たちと共に新しい道を切り開いたことが、学校の改革を成功させた大きな要因となったと思います。
このような意識と情熱を持った教師が、各学校にとって一人でも多く存在することが、今後の日本の教育における大きな課題であり、また可能性でもあるものと思います。
教育の現場においては、生徒と最も近い距離で接し、彼らの成長を支えるのは担任や進路指導の先生方です。彼らがその情熱を持ち続けることが、学校全体の発展においても重要なんだと思います。
白樺学園でのこの成果は、その重要性、先生の影響力の大きさを私たちに強く示してくれた事例だと感じています。