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零細起業の経営実務(32)「やらないこと」を決める

突然ですが、米倉涼子さん主演の人気ドラマ「ドクターX」ご存知
ですか? 美女なのに率直すぎて嫌われる、フリーランスのスーパ
ー外科医の話です。何があっても手術は成功して、最後にスカッと
できるところが魅力です。

主役の大門先生、教授の論文の手伝いや、回診のお供など、医師免
許が要らない雑用は一切、『いたしません!』と切り捨てます。
権威へのへつらいなどみじんもないこの言葉に憧れる人、多いので
はないでしょうか。

ちょっと無理やりな前振りでしたが、実は、経営にとっても『いた
しません!』はとても大切・・・というお話です。

起業したてのときには、いただければどんな仕事でもうれしいもの
で、つい、「何でもやります!」と言ってしまいたくなります。
私が起業したときも、もちろんそうでした。

でも、冷静に考えてみれば、実際にはできないことばかり。がんば
ればできるかもしれないですが、体力面でもお金面でも、無理をす
ればすぐに破綻するであろうことは、経営のど素人でも想像がつく
ことでした。

そこで、リーゾでは、思い切って「しないこと」を決めました。
それは・・・

『お客様が望まないこと』 
『ほかの会社ができること』 
『無理をする必要があること』

すべて、『いたしません!』です。

正直に言いますと、全く最初からそうできたわけではないです。
最初のうちは、ポリメラーゼのプレミックスのような、どこのラボ
でも大量に使う汎用製品を売ることも試してみました。でも、同じ
ようなもので値段も同程度なら、知名度のある製品を買うし、安く
すれば逆に怪しい印象を持たれてしまいます。

これでは勝ち目がないな、と早々に実感し、以降、自社製品を考え
る際には、必ず、
『それはリーゾにしか提供できないものか?』
を自問し、イエスであるものだけ、商品化することにしました。

難しい材料に特化した核酸抽出試薬シリーズはもちろんですが、
イグサのDNA鑑定サービスの提供を頼まれたときも、
交配袋を作ってほしいと頼まれたときも、
主婦の実験補助者の養成や紹介を頼まれたときも、

『他ではどこもやってくれないから』

という理由が、決め手になりました。
(そう言われると弱い、というのもありますが・・・)

リーゾのウェブサイトを見ていただくとわかりますが、結果的に、
提供している商品・サービスの全てが、「他では買えない」ものに
なっています。

ほかの会社ができることはしない、という弱腰にも見える戦略が、
なぜ経営に大切で、特に零細に向いているのでしょうか。

その最大の理由は、『値段を自分で決められること』です。
これは、小さな会社にとって、最大の強みになります。

大企業なら、赤字になるほど値引きをして売っても、他で取り返す
力がありますが、資金力がない零細が価格競争に巻き込まれると冗
談ではなく命取りになります。自社しか提供できない製品なら、そ
の心配がないので、小さな会社でも安心して商売できるわけです。

ただし、大前提は、お客様が必要としてくれること。
ここがないと、もちろんだめです。

つまり、最初の「いたしません!」をひっくり返すと、

『自分にしかできないこと』 
で、かつ
『お客様が喜ぶこと』

これを見つけだせば、どんなに小さな会社でも(個人でも)、競争
なくビジネスができる、ということです。

蛇足ですが、リーゾの「いたしません!」は他にもいろいろありま
す。

『接待』 
(公的機関のお客様が多いので、控えるという意味もあります)

『泊まりの出張』
(お金もないし、起業時は2歳児の母でとても無理でした)

『値引き、安売り』
(美食同玄米が売れなかった時代にも、安売りだけはしないと決め
てました。売れなければ自分で食べる覚悟でした)

『残業、休日出勤』
(収入大幅ダウンは覚悟した代わり、ワークライフバランスは死守
するつもりでした)

『会社の体裁を整えるための出費』
(開き直れば、貧乏もファッションとして楽しめるものです)

できるようになるまでとりあえずの「いたしません!」のつもりで
したが、やってみるとなかなか快適で、9年経ってすっかりリーゾ
のカラーになりました。オバサン軍団の強さ?いえ「主婦力」のな
せる業かもしれません。

(2017年12月6日配信のすいすい通信より)

「すいすい通信」
https://rizo.co.jp/merumaga.html

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