零細起業の経営実務(13)バイオハックで低コストラボ
起業を考えている研究者の皆さんに、リーゾの経験をお伝えしています。今回は、「バイオハック」を地で行くリーゾの超低コストラボのセットアップ
についてです。
すいすい通信のバックナンバーでも、貧乏なラボならではの創意工夫をいろいろご紹介していますように、バイオベンチャーとしてスタートした以上、商売を始めるのに最低限必要な実験機器を、最低限のコストで入手しなくてはなりませんでした。
元飲食店だった店舗を居抜きで借りることで、冷蔵庫、製氷機、電子レンジ、エアコン、ガスレンジ台、おしぼりウオーマー(乾燥機代わり)などはタダで入手。オートクレーブ代わりの圧力鍋は、自宅で眠っていたものを活用。実験台代わりの事務机と事務用の椅子各2つは、知り合いに不用品(美品!)をタダで譲ってもらいました。
電気泳動装置(MupidとPAGE用のもの)とピペットマン、pHメーター、スターラー、UVトランスイルミネータは、大きな声では言えませんが、ラボのボスたる友人諸氏が「廃棄した物」を譲ってくれました。
電気泳動ゲル撮影装置は、トランスイルミネーターに底抜けの箱とオレンジ色のアクリル板を載せ、デジカメ撮影することで自作しました。
購入したものは、96穴でグラジエントつきのPCR装置(中古屋さんで、23万円)、電源装置(ヤフオクで2万円)、微量高速遠心機(同、4万円)、精密天秤(某製薬会社の研究所が撤退するときのオークションで2万円)、その他、安価な小物を数点くらいです。
純水製造機は高くて買えないので、純水そのものを必要分だけ買うことにして(ドラッグストアで、500ml入りが100円程度)、器具洗浄には家庭用の浄水器を通した水を使うことにしました。
前述のように、オートクレーブは圧力鍋で代用です。
クリーンベンチももちろん高すぎるので、ビニール製のミニ温室を実験台の上に設置して簡易クリーンベンチとしています(組み換え実験などは行わず、ホコリ防止程度の目的なので、これで十分です)。
必要な機器を絞り込むこと、原理を考えて家庭用品で代用すること、タダでもらえるものはもらうこと、中古品を探すこと(ヤフオクには実験機器が結構出ています)。これでかなり低コストでラボが作れます。
などと偉そうに言ってますが、実はバイオの実験を自宅でやっちゃおうという人たちがいて、その活動を「バイオハック」と言うんだそうです。海外では、クローゼットで組換え乳酸菌を培養したり、自分のDNAを抽出して自力で遺伝子検査をやったりするツワモノもいるようですよ。
日本でも、バイオハッカー・ジャパンというサイトがあります。
お金はなくても、目的から逆算して考えれば、工夫次第でかなりの実験ができるとは(できない実験ももちろん多いですけど)、起業するまでは夢にも思いませんでした。こんな経験はなしで済むならその方がいいのでしょうが、工夫する過程は知的なゲームとしてもかなり面白く、経験できてよかったと思っています。
不思議なのは、最初は「当座しのぎ」のつもりだったはずが、そこそこお金が使えるようになった今でも、新しい物に買い換える気持ちにならないこと。だって、使えるんですもん。壊れるまで、愛用するつもりです。
バイオハッカー・ジャパンのサイトはこちら
biohacker.jp/
貧乏ラボマニュアルはリーゾのブログに載ってます
http://rizo-inc.cocolog-nifty.com/blog/cat36785625/index.html
(2016年2月3日配信のすいすい通信より)
「すいすい通信」
https://rizo.co.jp/merumaga.html