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零細起業の経営実務(53)設立10年の落とし穴

思えば11年と少し前。
前職場の経営破綻をきっかけに失業し、ハローワーク通いもした結果、「身の丈で起業して好きな実験をしながら人様の役に(立てるものなら)立つ」、という結論に到達し、売るものも決まっていないのにとりあえず会社を作るという、今から思えばずいぶん無茶なことをしました。

それから長かったような、あっという間のような時が流れ、おかげさまで今でも事業を続けることができています。10年続くのは立派なもんだよ、と先輩経営者の皆さんにほめられてウキウキでした。

・・・が!

そんな浮ついた気持ちに冷や水を浴びせる大事件が起こったのです。

ある日、自宅のポストを開けると、「水戸地方裁判所土浦支部」が差出人となっている封書が。

裁判所とかかわるような事態は何かあったか・・・あれかしら?これかしら?(それなりに心当たりがあるところが怖い)と、ぐるぐる考えながら封書を開けてみたところ、入っていたのは「過料決定」の通知でした。

過料とはつまりは罰金のこと。タイトルは、「令和1年(ホ)第***号 会社法違反事件」とあり、3万円払いなさいと書いてありました。

会社法違反??なんで?そしてなんでそれが会社じゃなくて自宅に??と、頭の周りははてなマークが飛び交い、もしかして新手の詐欺じゃないのか?とまで思ってよく読んでみたところ、ようやく事情がわかりました。

さかのぼれば昨年の夏。自宅を引っ越した際、代表取締役の住所変更の登記を行ったのですが、その時に法務局の人から、

「代表取締役の任期は10年で、それを過ぎているので、まずは重任の登記をしてから住所変更になりますね」

と言われ、そんなことまったく失念していたなあと、言われるまま株主総会議事録や就任承諾書を作って重任手続きをしました。

もちろん住所変更もつつがなく完了し、それでおとがめなしかと思っていたのですが・・・しっかりおとがめがあったというわけです。

本来は、満10年経過後2週間以内に重任登記せねばならないところを、1年3カ月後に行ったことが罪。ネットで調べたところ1年から2年程度なら3万円で済みますが、長期になるほど高くなるとか。自宅の引越がなかったらたぶん気づかなかったし、いくら払うことになったかと思うとぞっとします。

そして会社のことなのになぜ自宅に来るのかというと、違反したのは会社ではなく、代表取締役である個人、という解釈だからのようです。
従って過料は会社の経費では支出できず、個人で支払わねばなりません(痛い・・・)。

さて、件の通知には別の紙に注意書があり、事実が違ったり、遅れたことについて特別の理由があれば1週間以内に異議申立書を提出してください、れがない場合は納付告知書を送りますのでそれで納付してください、と(本体に比べて妙に)親切丁寧な文章がついていました。

遅れた理由は、代表取締役の任期が10年だってことを忘れていたためですが、これは特別の理由として認めてもらえそうもないと判断。異議申立書は送らずそのまま待っていたところ、2週間ほどして「納付告知書」が来たので、ゆうちょ銀行の窓口で即日納付しました。

起業して以来、「ずるいことはしない」を肝に銘じ、コンプライアンスをかなりまじめに遵守してきたつもりなだけに、今回のことはかなりショックでした。
「違反」とか「事件」とか「過料」とかいう言葉に、まっとうに生きてきた人間の心を傷つける力があることを初めて実感。半世紀も生きてきて、いちいち傷つく方がヤワすぎかもしれませんが。

リーゾは今年、設立12年目。代表取締役の任期満了まであと8年、元気に会社を続けていて、またまた忘れて怒られるような事態はある意味めでたいことですが、「20周年おめでとうと言われたら重任登記!」と覚えておこうと思います。

会社を始めて10年未満の方、これから起業される方、ぜひ覚えておいて、ぎょっとする文書を受け取らずに済むようにしてくださいね。

2020年3月4日配信のすいすい通信から抜粋
すいすい通信 vol.108 2020年3月号 株式会社リーゾ (rizo.co.jp)

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