iOSエンジニア松館大輝氏×RIZAPテクノロジーズ社長対談〈2/3〉
↓↓↓ PART1「RIZAPテクノロジーズが松館さんを技術顧問に迎えた理由」はこちら ↓↓↓
↓↓↓ PART3「chocoZAPの未来とそのために必要なこと」はこちら ↓↓↓
▶︎プロフィール
松館大輝/東京を拠点に活動する iOS Developer。世界中から Swift の開発者が集まる try! Swift Tokyo のメインオーガナイザーを務める。またスタートアップ数社、内閣官房 IT 総合戦略室(デジタル庁準備室)を経て、現在ではデジタル庁エンジニアユニット長を務める傍ら、さまざまな企業でアプリ開発の支援や技術顧問・アドバイザリーを行う。著書「iOS アプリ設計パターン入門」(PEAKS)
鈴木隆之/RIZAPテクノロジーズ代表取締役社長。RIZAPグループ執行役員。
カンファレンスへのリソースのかけ方に気合を感じた
――では、松館さんはRIZAPのどんなところに興味を持たれたのでしょうか。
松館:僕がRIZAPさんを面白いなと思ったのは、カンファレンスのスポンサードもやり始めたばかりだというのに、めちゃめちゃ目立っていたからなんですよ。
とにかく配布しているノベルティが大きかった上に、それを持ち運ぶためのchocoZAPのロゴ入りの大きなバックまでもらえたことがまた結構よくて。
カンファレンスって各ブースでいろいろなノベルティをいただけるんですけど、入れるものがないから、みんなあの大きなバッグに入れるじゃないですか。そうするとそのロゴが会場中を回って…あれはいいなと思ったんです。
おまけにいきなり「Drinkupやります!」という、その勢いというかリソースのかけ方に、ほかのスポンサー企業にはない熱量を感じて、本当にエンジニアを集めたいのだなという気持ちが伝わってきたんです。
鈴木:RIZAPって会社自体の知名度は高いのですが、chocoZAPを始めとした自社サービスのアプリを内製化で開発していることやエンジニアを採用しているイメージはまったくないので、それを打ち出すためにもエンジニアが集まるカンファレンスは基本的にすべてスポンサードしていく方針なんです。
ただ、スポンサー企業としてロゴを載せるだけだと、知っていただくことはできても深い関係にはなれないので。実際にブースを出したりDrinkupを開催したりすることで、参加者の皆さんとのつながりを作れればいいなと思っていました。
松館:すごくいいと思います。なおかつiOSとAndroidの内製化を急ピッチでやりたいというお話を鈴木さんから伺って、「じゃあ、技術顧問を入れたらいいですよ」とお話させていただいたのですよね。
私自身はtry! Swift Tokyoのスポンサードのご相談もさせていただきましたし。
鈴木:組織としては立ち上がったばかりなので、社内のスキルや経験だけに頼るのではなく、外部のプロフェッショナルの方に入っていただくことで開発のレベルを上げていくことも重要だと思っていることも、あの場では少しお話させていただきましたよね。その後、改めてお声をかけさせていただくことになるわけですが。
松館:私自身はtry! Swift Tokyoのスポンサードについてご相談をしていたつもりだったので、「技術顧問お願いします」というメールをいただいて、正直ちょっと拍子抜けしました。「そっち?」って(笑)。
松館:ただ、chocoZAPについては今やその名を見ない日はないぐらい、広告も店舗も身近に存在していたので、このフェーズで関わると面白そうだなっていうのは率直に思いました。
あとは、RIZAPテクノロジーズさんの取り入れている技術スタックもわりと私がお手伝いできそうなものだったので、マッチするんじゃないかなと思ったのが、お引き受けした理由です。
鈴木:ありがとうございます。
chocoZAPはフィットネスにとどまらない、
テクノロジーをテーマにした面白い事業
――松館さんは、ヘルスケアという領域について興味や関心をお持ちでしたか?
松館:コロナ禍で運動不足になったので、パーソナルジムにずっと通っているんですよ。でも、これまではジムにテクノロジーを掛け合わせるということがあんまりイメージできませんでした。だってフリーウェイトって重量つけて上げ下げする極めてアナログなものだし、トレーナーも多少エクセルを操作したりiPadで事務処理をしたり、というイメージですので、すごく高いITリテラシーが求められるものでもないと思うんです。
でもchocoZAPの取り組みを伺ったときに、確かにこれならあるなと思いました。たとえばアメリカなどにある「Amazon Go」という無人のコンビニがありますが、あのアイディアや設備を日本でも実現するのは強いな、と。
また、私は前職で自社のカフェのモバイルオーダーシステムを作っていたのですが、実際にお店で使われるハードとの連携部分って、「想像で作ってはみるものの、実際は全然うまくいかない」ということだらけなんですよ。
ましてふつうのエンジニアはソフトウエアを作ることだけに専念しがちで、そうした経験が乏しくなりがちなので、chocoZAPなら私の経験が生かせるんじゃないかなとも思いました。
なので、ヘルスケア領域だからというよりは、RIZAPさんだからこそ「この事業はなんかうまくいきそう」という印象ですね。
鈴木:おっしゃる通り、chocoZAPはもちろんフィットネスという領域ではありますが、完全無人であるがゆえに、リアルの店舗でありながら利用者さまは100%アプリを使っていて、それによって顧客体験やサービスが成立するという、ほかにあまりないスタイルなんですよね。
さらに小売業の場合は、たとえAmazon Goであっても結局裏で物を補充する人員の確保が避けられないものですが、フィットネスジムならマシンさえあれば本当に人がいなくても稼働が可能ですし、備品を補充するといっても頻度は限定的なので極めて無人化がしやすい業態なんですよね。それをやれるというのは正直、面白いです。
松館:そうですね。
鈴木:しかも、立ち上げから1年程度で無人店舗を直営で1,000店舗出して、きちんとお客さまも集めてこの規模で収益も立っているというのは、日本はもちろん、世界でもあまり類を見ないのじゃないかなと。そういう意味では非常にチャレンジングな取り組みで、それをやれるのは面白いです。
それと、うちはセルフエステやセルフ脱毛のマシンなども置いていますけれど、店舗と設備とそれを動かす仕組みがあればそこに人員がいなくてもお客さまに提供できるサービスは、こうした美容領域に限らずほかにもあると思っています。
そういうものをテクノロジーの力を使って作れるというのは面白いですし、しかもそれが松館さんのおっしゃる通り、ソフトウエアだけではなくて、店舗と連動したりとか、体重計とか体組成計とかウエアラブル端末と連動したりということをやれる。そういう会社はほかにはないので、結構面白いと思います。やるのはすごく大変なんですけどね(笑)。
松館:今おっしゃっていただいた通り、ジムの領域となると興味がない人も結構多いでしょうけれども、ジムだけじゃなくて「ふつうにカフェとしても使えますよ」とか「美容の領域でも使えますよ」という感じでリーチする層を変えたとしても、すでに店舗はあるし、システムもそう変わりませんからね。スキームをそのままほかに転用しやすいのはすごくいいアイデアだなと思って見ていました。
開発時間を「ショートカット」することで
エンジニアの成長につなげたい
――RIZAPテクノロジーズでは、松館さんにどのような役割を担っていただくことを期待されていますか。
鈴木:二つありまして、一つはまさに先ほど申し上げた通り、開発のレベルを上げていくことです。あともう一つは、仲間を集めることですね。まだまだエンジニアを採用していることや、ただのフィットネスというよりはテクノロジーをテーマとして面白い事業を手がけていることを世の中にお伝えできていないので、そこをしっかりお伝えして仲間を集めたいという思いがあります。
松館さんは非常に能力の高いプロフェッショナルですし、try! Swift Tokyoのようなカンファレンスを運営されるほどのネットワークやインフルーエンス力もお持ちですので、そのあたりでもお力をお借りしたいと思っています。
松館:ありがとうございます。私も自分のミッションはまさにその2点だと思っています。
技術顧問がやることとは何かというと、私は、現場のエンジニアの能力を引き上げることは結果であって、そのためのショートカットをさせてあげることだと思っているんです。
たとえばある機能を実装するときに「やり方がわからない」となると、インターネットを探したりとか、先人たちの知恵をあさったりすることになるわけですが、調査の時間も取られる上に、果たしてそれがうまくいくのか、試行錯誤の時間も必要なんですよね。
でも実は僕に聞いてくれれば一発で解消する、という。3時間かけて調べたことも5分で終わる、そういった開発時間のショートカットができます。
松館:また、未知のものにどうアプローチしたらいいかという勘どころって、正直「経験がものをいう」ところがあるので、そうした部分でも「この辺を当たってみたらいいよ」ということがお伝えできると思います。これを経験として吸収していただくことで、その後類題が出てきたときに「あのときこうやったから、今回もこうやってみよう」となれば、結果的にエンジニアのレベルアップにもつながるのかな、と思っています。
鈴木:そうした知見を共有していただけるのは、非常にありがたいです…!
正しく技術に投資している「保証」として
松館:二つ目の広報的な観点でいえば、「RIZAPさんはまだ人を集めているフェーズだけれど、少なくとも松館が入っているから技術的に間違った方向にはいかないだろう」という、保証や保険のような存在としていただけるのではないかな、と。
加えて、こうした技術顧問を招請していることで、技術的にちゃんと投資をしている企業であることの対外的なアピールにもなるのではないでしょうか。
…って自分で言ってしまいましたけれど(笑)、はい。投資対効果が得られるように頑張ります。
鈴木:おっしゃる通りだと思います。アピールという点でいいますと、chocoZAPという事業自体は今大変な勢いで成長していますし、今後も認知はまだまだ広げていけると思うんです。
いっぽうエンジニアの採用においては、皆さん「内製化しているといっても、適切なやり方で開発ができているのか」とか「誰がリードしているんだ」ということを非常に気にされると思うんですよね。
組織とかマネジメントという話だけではなくて、本当に適切な技術スタックでやっているのか、テクノロジーの使い方がされているのか、というところですね。そこに関していうと、僕はRIZAPテクノロジーズの代表ではありますがエンジニアではないので、そのお墨付きを出せる人材ではないんです。
鈴木:もちろん弊社の開発部長である佐藤がおりますし、僕も彼に全幅の信頼を置いていますけれど、一言でエンジニアといっても領域は幅広いじゃないですか。
すべての技術スタックを1人でカバーするというよりは、それぞれの領域のプロフェッショナル――たとえばRuby(プログラミング言語)なら松田さん(Rubyコミッターの松田明氏。2023年春よりRIZAPテクノロジーズの技術顧問)、iOSなら松館さんに入っていただく、というのは、非常にいいやり方なんじゃないかと思っています。
・・・
PART3では、フィットネスという領域を超えてさらなる成長を目指すchocoZAPと、松館さん・鈴木社長がそれぞれに思う「今後の展望」についてコメントしました!
>>>PART3「chocoZAPの未来とそのために必要なこと」へ続く