iOSエンジニア松館大輝氏×RIZAPエンジニア対談〈後編〉
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▶︎プロフィール
松館大輝/東京を拠点に活動する iOS Developer。世界中から Swift の開発者が集まる try! Swift Tokyo のメインオーガナイザーを務める。またスタートアップ数社、内閣官房 IT 総合戦略室(デジタル庁準備室)を経て、現在ではデジタル庁エンジニアユニット長を務める傍ら、さまざまな企業でアプリ開発の支援や技術顧問・アドバイザリーを行う。著書「iOS アプリ設計パターン入門」(PEAKS)
佐藤直之/プロダクト開発統括1部部長
山野井陽一/プロダクト開発統括1部エンジニア
コーディングだけがエンジニアの仕事ではない
――先ほどの鈴木社長との対談で「開発のスピードが上がるようにお手伝いをすることで、結果的にエンジニアの成長につながれば」というようなお話がありましたが、エンジニアとして自分の価値を高めていくために必要なことについて、松館さんはどのようにお考えでしょうか。
松館:企業に所属するエンジニアの仕事とはもちろんコードを書くことなんですけど、じゃあそれは何のためにやるかというと、事業を伸ばすためなんですよね。
よく「コーディングが事業につながらない」というようなことを言う人がいるんですけど、その事業でやりたいことをモデリングしていろんなパターンを想定して、それをソースコードに落とし込んでいくという流れは間違いなく事業と直結しています。
松館:それに、アプリの UI はAppleからフレームワークが提供されているとはいえ、結構難しいと思います。UIってデザインを考慮したり、ログイン・未ログイン状態、通信状態、表示するデータが空のときとか、状態がとても多いじゃないですか。
デザインもAppleのヒューマンインターフェースガイドライン(※)という標準的なルールがある中で体験を作り込んでいかなければいけない。
要は「ちゃんとアプリだよね」ということを、デザイナーだけでなくエンジニアも担保していく必要があります。
おざなりにされがちだけどやる必要があることはたくさんあります。たとえばアクセシビリティ。
標準的にある程度サポートされているものの、Voice Overで読み上げてみたらこのボタンを押すと何が起こるかわからない。画像が何を指しているかわからないので読み上げのテキストを設定して表現する。
端末の大きさも多様です。4インチのデバイスはもうないと見せかけて、iPadで2画面表示すると幅が狭くなってレイアウトが崩れることもあります。
アプリのセキュリティやプライバシーも重要です。ユーザーのデータをどうセキュアに扱うかはOSがサポートしている仕組みも勉強しなくてはいけません。特にユーザーの認証なんかは、アプリ共通の機能になってくるので、最初の設計を間違えると後で大変です。
そうしたコーディングそのものではないところで考えることが、爆発的に増えてきます。
山野井:そうですね。
松館:そんな中で、どのように優先順位をつけてやっていくか判断しなければいけないし、Swiftの技術に限らず国際標準的なトレンドなど、新しいものがどんどん流れてくる中で、どうやってそのアプリが取り残されないようにするかを考えるところも仕事だと思っているんです。なので一言で言えば「コーディングだけではだめですよ」と思っています。
なんならコードは書いて動いてくれればいいという考え方もなくはないわけです。ただそこに潜む問題とか、iOSのアプリの設定周りは非常に煩雑な上にドキュメントもよくわからない、というところに関しては「こういう設定がある」とか「こうやってCI(継続的インテグレーション。デプロイするコードの品質を確保しながら、開発スピードを向上させる DevOpsソフトウエア開発手法)は組んでおいたほうがいい」といった経験を僕はいろいろ持っているので、サポートができると思います。
モバイルアプリエンジニアはユーザー目線が要
――佐藤部長に質問です。来年以降、RIZAPテクノロジーズには引き続き新卒のエンジニアが入社することもあると思います。今後iOSのエンジニアチームとして成長していくために、松館さんに期待していることはありますか。
佐藤:私の中で明確にあるのは、新卒メンバーは概して「真面目で熱心」だということです。さらに中途入社のメンバーに比べて環境に染まりやすくもあるので、正しい方向へ導くことがやはり重要だと思っています。そういう意味で松館さんのように正しい道を知っている方がいて、道しるべがあると、最短ルートで正しく成長できるのではないかと。その辺りでのお力添えをとくにお願いしたいと思っています。
松館:短期間で結果にコミット。すごく RIZAP っぽい考えですね(笑)。
新卒の面倒をみていたこともあるのでその経験から考えるに、いかに彼らの「アプリを作れるようになりたい」という意欲を削がないようにするかが重要で、そのためには失敗してもいい環境を用意しておくことでしょうか。
シニアなエンジニアがコードをレビューしたり、アプリのデバッグをする中で気づきを提供してあげる。レビューした以上、シニアにも責任がありますから。その先甚大な問題が起きないようにセーフティーネットを提供することです。
もちろん言語や技術を習得していくことも大事なことですが、この会社でアプリを作れることに対してどうやって貢献できるか、そういうところにフォーカスして周りがサポートしてあげるといいと思います。
――では松館さんから、RIZAPのエンジニアたちに期待することはありますか。
松館:ユーザー目線を失ったらアプリの作り手としてはおしまいですので、常に使う人のことを考えてほしいですね。アプリ開発はもちろん会社の利益のためにやるわけですけど、世の中にはダークパターンも数多く存在しているじゃないですか。たとえば、画面をスクロールしようとしたら広告が出てきて誤タップするとか、そういうの。
あれって会社には短期的な利益が上がりそうでも、ユーザーにとっては不便でしかないので、すぐユーザーは離れていきます。そういうことをするようになったらおしまいなので、徹底してユーザーファーストでいてほしいです。
エンジニアとして、どこに行ってもちゃんと使う人の目線に立って設計し、アプリOSの標準の機能を使いこなす、そういうことができる人になってほしいなと思います。
山野井:はい。僕も自分が使いたくなるようなサービスを作りたいと思って開発をしているので、そもそも使いたくなくなったらおしまいだなと思います。松館さんのような目線はとても大事ですね。
松館:自分がユーザーになれるサービスって本当にいいですよね。
ただ、仮に自分はユーザーになれなかったとしても、ユーザーを観察するのは非常に重要です。
僕は昔女性向けメディアのアプリを開発していたのですが、ネイルをしている方は爪が長いじゃないですか。そうすると、スマホ画面の触り方もネイルしてない人とは違うんです。その上でどこが触りやすくてどこが触りにくいのかを検討しなければいけないのですが、僕はネイルをしないので、同僚の指の使い方などを観察していました。
山野井:その点、chocoZAPはジムに行けばユーザーがどう使っているかも見られます。そこで得た気づきを開発に生かしていきたいですね。
松館:ユーザーの様子を間近で見られるのはとてもいいですね。もうchocoZAPで仕事すればいいんじゃないかな(笑)。
山野井:確かに(笑)。
松館:ワークスペースやカフェサービスの導入も始まっていることですし(※2023年秋より、ワークスペースや無料で利用できるドリンクサービス「ちょこカフェ」などの新サービス開始。全国の店舗に順次導入予定)。「ちょっとカフェが使いにくいな」とか、いろいろ気づくかもしれません。僕もカフェの会社に在籍していたときは結構お店に行っていましたよ。カウンターの内側に入ったこともありますし、ふつうにお客さんとして行って、自分で注文してドリンクを飲んで、その体験をレビューしたりしていました。
山野井:松館さんもそういうことをされていたんですね。僕もchocoZAPに行って気づいたことや体験したことなんかを、Slackでちょくちょくみんなに伝えています。
chocoZAPを街のインフラに!
――最後に、山野井さんからは今後chocoZAPのアプリをどのようにしていきたいかという展望を。松館さんからはRIZAPの今後に期待することを伺えますでしょうか。
山野井:chocoZAPは今ジムとして運営していますけれど、今後本当にいろいろな事業が動いていく予定です。それに追随できるようなアプリに仕上げていきたいと思っていますので、松館さんにもお力添えをいただきながら、どんどんいいものを作っていけるように発展したいと思います。
それと共に、僕たちはまだまだ一緒に開発を推進してくれる仲間を探しています。これを読んで「chocoZAPのアプリ開発って面白そうだな」と思ってくださった方はぜひお気軽にお問い合わせください!
松館:今日の対談を通して、chocoZAPは本当に街のインフラ的な機能になることを目指しているんだという熱意を改めて受け取りました。それに応えられるようなアプリを作れるエンジニアたちが集うチーム作りに貢献できたらと思います。
ですので、興味を持ってくださったエンジニアの方はぜひ来てください。
山野井:松館さん、今日はありがとうございました。これからどうぞよろしくお願いいたします。
松館:こちらこそありがとうございました。
(了)
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