まがいもの

　「ときにはなんの役にも立たないものを
買ってみるのもいいもんだよ」

どこか死人の匂いがするこのまちで
がらくたに埋もれた骨董店
くすんだ銀の蝶板と金の剥がれたソーサーに
歪んだレコード、黄ばんだ真珠
染みの散らばる振り袖に欠けた石の帯留めと
ゼンマイの切れた柱時計、壊れたペン先の万年筆よ
どうかどうか私だけに買われてはくれないか！

　「手垢がついた色眼鏡も役立たず　
焦点の合わないお目々だってどうだか」

どこか死人の匂いがするこのまちで
がらくたに埋もれた骨董店
まがいものでもほんものでも　
貴方が欲しいのなら私も欲しい
奥に座る薄ら笑いの老婆には
見覚えのある眉下の黒子
冷えた饐えた空気の中　
硬貨が落ちてちゃりん