【下町編集室OKASHI】商店街に拠点ができたことについて
先月15日に始まった「いと-をかしプロジェクト」。
全国菓子工業組合連合会が制定した「おかしの日」が毎月15日ということで、「をかし」に絡めてその日をオープニングにしてみた。それから早くも1か月。
舞台は横浜の下町情緒が残る横浜橋通商店街(南区)。
商店街のちょうど真ん中あたりに位置する元菓子店の空き店舗を、商店街でフリーマガジンなどを制作する学生メンバーが中心となって1年間の実験的に「アーカイブ」「居合わせる」拠点として運営してみよう!というのがこの「いと-をかしプロジェクト」だ。
さまざまな(いと)企画を通して、このまちの文化や美的意識(をかし)を楽しみ、隣の人と「好き」を介してなにかがうまれるかも、しれないような、これからの時代のまちのひと同士が「居合わせる」場の魅力を探っていくことをめざした。
はじまった経緯
ことのはじまりは、今年の5月あたまに商店街の高橋理事長からもらった電話。「タカナシさんのところ、借りることにしたから!」というなんともびっくりな一言。通学途中、大学手前、何が何だかよくわからない状態。元お菓子屋の「タカナシ」さんがお店を閉じたときもお話をもらっていたけれど、一人で借りるのはちょっと。でも何人かで借りれたらいいなあということで一旦お話が止まっていたところを、理事長さんのご厚意で「はじめはお金を気にせず学生メンバーで運営をしてみて」というなんとも嬉しいかたちで再開することができた。
横浜橋通商店街 学生スタッフ
本題に入る前に私が気付いたら代表?になっていた学生スタッフとこれまでの活動についてお話したい。
もともと南区には、地域振興課の方が窓口となり商店街と商店街に関わりたいひとをつなげる「南区商店街ボランティア」というものがある。当時私を含め2名いた学生メンバーでフリーペーパー制作をはじめる段階で名乗りはじめたのが「学生スタッフ」だ。
「南区商店街ボランティア」との出会いは高校2年(2017)の冬。地域のアートイベントでの写真コンテストの表彰式で地域振興課の方に商店街愛を熱弁してしまった記憶がある。それからこの取り組みを紹介していただき、さっそく加入。弘明寺商店街と横浜橋通商店街でイベント時のお手伝いをさせてもらいはじめた。
弘明寺ではクリスマスイベントや抽選会、野菜の詰め放題。なんとあのサ〇チに変身させてもらったりもした。
横浜橋では始まったばかりの「大人の縁日」のほか「子供の縁日」や抽選会、ラグビーのときのお神輿、大通り公園での「歌丸桜フェスティバル」など。だんだんとまちに顔見知りの方が増えていくことや、企画の機会をいただけることがとても楽しかった。
演奏するのは地元のシンガーさんや踊りのグループ、マジシャンなど。通っていた高校の吹奏楽部にもたしか2度でてもらったが、いちばんはじめ、横浜橋商店街の名誉顧問でもある歌丸師匠がなくなられてすぐの夏の大人の縁日で一曲目に演奏してくれた「笑点」のテーマ曲がとても印象に残っている。
そんなこんなで徐々に居場所が商店街にでき初めていた頃、横浜橋通商店街で同じくボランティアをしていた方と「こんなに面白いイベントをたくさんやっていること、元気な店主さんたちがいること、もっといろいろなひとに知ってもらいたいね」と、フリーペーパー「いきな下町商店街」を2018年秋に発行。それから「横浜橋通商店街 学生スタッフ」という名前が定着するようになっていった。
創刊号はまさかのパワポ!!でしたが自分たちなりにインタビューをしたり、イベント情報や商店街の歴史を書いてみたり、思い入れのある一作目。
それから私は大学生になり、そして相方さんは就職で九州へ。しかし始めたことは続けたく、どうにかひとりでvol.2を発行(ついにadobeデビュー)。このあたりから情報発信はSNS、フリーペーパーは冊子ならではのものにという気持ちに変わっていき、インタビュー記事のほか、「食べ歩きグルメ」「ハマモードさんに選んでもらう格安コーディネート」などを企画した。
その後、別のイベントで知り合い、意気投合していまも一緒に活動を行っている当時まだ高校生だったみきちゃんとvol.3を2019年秋に発行。イベントがあるときは変わらずお手伝いをさせていただいていたが、やはり取材をして編集をするとなるとお店の方々との関係がギュッと近くなったようで歩くことがもっともっと楽しくなり。キムチ特集からの流れで商店街裏の韓国料理屋さんへ連れて行ってもらいビビンバの食べ方を教えてもらったり、通りがかりにお話がはじまってお茶を出していただいたり。
憧れの「あ、どうも~」が叶ってきて、さらにまちの歴史もだんだんと見えてくる。嬉しい。
きっかけとしての冊子制作も面白いし、まだまだ地域のことを知りたい。
そんななか、コロナがやってきた。
イベントも軒並み中止。なにか力になれればと思いつつ、もともと動きたがり密大好き人間としてはまいってしまいなかなか動けず。あるとき商店街でミーティングがあり、デリバリーとかやっていかなきゃねえなんて話をしているときにハッと、
「いやいや、そうだ。今だからこそ商店街の対面の何が魅力的だったのか、これから販売のかたちが変わってもなにか受け継ぐべきものがある気がする。次の号のテーマにしよう。」
と燃え上がり、学生スタッフ3名に加え、同じ大学のまちづくり専攻をしているなわさんと高校が同じでデザインを学んでいるまりんにも参加してもらい、vol.4の制作を開始。テーマは「対面」。
よく店前で立ち話をしているよなーと思っていた「布施食品」さんと「男子専科KUBO」さんへのインタビューと、テイクアウトガイド、そして編集部が語る商店街の魅力、などを紙面に載せた。
身近なまちを、いつもとちがった視点で歩く楽しさを多くの方に届けたいということや、メンバーが増えてより大事な一冊になったこともあり、今回からは配布場所を拡大。
横浜駅と桜木町駅の観光案内所や、横浜市営地下鉄の各駅、そのほか区役所やことぶき協働スペース、石川町マーケットテラスカフェなどにも置かせていただいた。反響は想像以上で、メディアにも取り上げていただいた。
▽ヨコハマ経済新聞『横浜橋通商店街のフリー誌「いきな下町商店街」 学生スタッフが対面の魅力探る』
https://www.hamakei.com/headline/11395/
▽タウンニュース南区版『大学生が情報誌対面販売の魅力伝える』https://www.townnews.co.jp/0114/2021/06/10/577939.html?fbclid=IwAR1xpdOSxHj72Z0DsjReOwT8FMI7ftaDv8k-Cp0Tkdar2NdySt55BpXxLCU
そんなこれまでの流れで、お話をいただいたのが今回の空き店舗だった。
元菓子店を、下町編集室OKASHIとして。
理事長さんともお話をしながら、メンバー内で自分たちならどんな場所がほしい?どんな人に来てもらいたい?というようなテーマでオンライン会議を重ねた。興味を持ってくれた方に見学にきていだたいてアドバイスをいただいたりもした。
「やっぱり編集室じゃない?はじめは編集部のたまり場。ゆくゆくはまちの編集的な機能ももちつつ開くみたいな」
「商店街には集まる場とかお客さん同士の関わりはあまりないかも。それぞれやりたいことを実現するときのひとつとしてのここがあったらいいね」
でもまずは高梨さんにお店のこれまでを伺いたいよねということで少人数でインタビュー。
昭和のはじめ、酒屋として、紀美子さんのご主人 晃さんのご両親が同じ場所で開業。屋号は「林屋」。のち、お菓子メインの「髙梨商店」に。量り売りが主。港からのお客さんも多かったのだそう。歴史が長い!!
お正月には実家などへ贈るためのお菓子が店前に並び、バレンタインにはチョコ、七五三には千歳あめ、クリスマスにはお菓子の入った靴下が釣り下げられ、良く売れた。
お店の前には映画館「横浜銀座」(いきな下町商店街vol.3でとりあげたヨコギンだ!!とメンバー興奮)があり、タカナシでお菓子を買ってからレイトショーをみるひとなども多かった。ご主人は役員会のあとも飲み歩いてはしごしておしゃべり。人気者だった。POP担当。外装のピンクはピンク好きから。2年前に亡くなられ、昨年に紀美子さんが足を悪くされ閉店。
「主人もよく下に降りてきて話していました。もう少しやりたかったけど仕方ないわね。」
見せていただいた写真にはお客さんや地域の子ども達との写真も多く、ここがどのような場だったのか、お店以上のなにかがあったのだと。
そんな場を今度は私たちがつくれないか。歴史を引き継ぎながら。
そして名前が決まってきた「いと-をかしプロジェクト」。お菓子屋さんの「おかし」と古語で広く美的なものをさす「をかし」をかけて。(かけるの好きすぎ)
まちのリビングルームのようでいていつも何か、誰かの「をかし」があって、そこに居合わせたひと同士が所属などに関係なく「好き」でつながり、気持ちがすこし豊かになるような場所。
チャレンジしてみたいこと、だれかと共有したいことを表現できる場所。
横浜橋エリアの文化やそれぞれの愛着に触れ、粋を五感で感じられる場所。
そんな場所が商店街にあったらどうだろう?まずは実験的にいろいろな企画を1年間かけてうってみよう!
おひろめ企画 夕涼みのお菓子
さっそく、7/25(日)~7/31(土)の1週間、ゆるりと「夕涼みのお菓子」を企画。
誰もが気軽に買える駄菓子、この土地の特色でもある世界のお菓子、そしてお祭りの中止でまもなく廃棄になってしまう光る屋台によくある玩具などを販売することに。
の前に内装をきれいにせねば!ということで前日までの夜に学生スタッフと友達、家族限定でひっそり内装ぬりぬり。
建築家の方や、施工の仕事をされている方にアドバイスをいただきつつ、ひとまず壁紙をはがして頂いたペンキで白塗り。穴はパテで埋めてぬりぬり。
同時に買い出しも。
横浜橋通商店街から徒歩約10分のところ、昔は問屋街だった日ノ出町ー黄金町間にある玩具問屋「佐野屋本店」さんで仕入れ。
懐かしのお菓子やおもちゃがたくさん。ここは天国?ついついあれこれ手に取ってしまいたくなってしまう。仕入れ初心者の私たちに、佐野さんや、仕入れに来ていた近くの駄菓子屋さんの方が「仕入れのコツ」「商いについて」などさまざまなことを教えてくださいました。
中国のお菓子は中国出身の友達におすすめを聞きながら。商店街のなかにある中国の食材があつまるスーパーでまとめ買い。「これは小さい時よく食べてたよ」「これは昔からよくあるお菓子」
他にも佐野屋さんから商店街にかけての道にあるベトナム食料品店でも人気のお菓子を教えていただきました。小分けにして商店街で売ることを伝えると優しくいろいろと。「これはドリアンだから日本人苦手かも」「これはみんなよく食べるよ、中ふくろわかれてる」
そうして始まった「夕涼みのお菓子」!!
商店街の方ににぎやかになるグッズをお貸しいただいたり、9月に絵の展示をしてくださる地元の絵描きさんが即興で看板を書いてくださったり、通りすがりの方がプレゼントをくださったり。
タウンニュースに載せていただいてからはそれを見てきてくださる方も多く、1週間の中で何度も寄ってくださる方も。隣のパン屋さん「丸十」さんや商店街事務局の方の差し入れも本当にありがたかった。以前取材をさせていただいたお茶屋「玉喜園」さんもご家族三世代でたくさん買いに来てくださったり、久しぶりに会う方も。
場があることで、仮設的でも、まわりの方のご協力でかたちになっていくこと、コミュニケーションがとれることがとても嬉しかった。
中国のお菓子と思って売っていたら「これフィリピンにもあった、懐かしい!」と買ってくださった方がいたり、子どもがつりをしているところにおじちゃんが駄菓子を見ていたり。国籍も年齢も異なるひとが同じものを楽しめるのは素敵だなあとしみじみ。
そこに訪れた緊急事態宣言。
やっぱり厳しいなあと思いながらもくじけず、今できる形でのこれからの企画を絶賛計画中。
これから
近日の予定は、写真展と絵画展。関連でリモートでも楽しめる企画もいれていきたいと思っています。
8/23(月)~9/5(土)「つなげたいもの展」
横浜清陵高校写真部による、横浜橋通商店街と三吉橋周辺で撮影した写真甲子園2021での作品展示。「つなげたいもの」(伝統技術・日常・人の温かさなど)をテーマにそれぞれが切りとったまちの姿をお楽しみください!
主催:横浜清陵高校写真部×いと-をかしプロジェクト
会期:8/23(月)~9/5(土)
時間:月-木10:30-16:00 , 金土日13:00-19:00
場所:下町編集室OKASHI(横浜橋通商店街中央・元タカナシ菓子店)
写真甲子園について
https://syakou.jp/final/schools/post-5.html
■関連企画(仮)
・金曜夜のオンライントーク
「このまちのなりたちを知りたい!」金曜の夜にゲストをお招きして横浜橋とその周辺エリアの歴史や文化を知り、未来を語り合うオンライントーク。LOCAL GOOD YOKOHAMAとの連携企画。
8/27(金)19:00~、9/3(金)19:00~
・写真募集
自分が思う、横浜橋―三吉橋エリアにまつわる未来に「つなげたいもの」を写真形式で募集。
9/18(土)~9/26(日) 地元の絵描き・ロミーさんとマキさんのふたり展
会期:9/18(土)~9/26(日) 13:00-19:00
内容:作品展示、グッズ販売、似顔絵を予定
入場料:無料。作品販売アリ。
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「いと-をかしプロジェクト」
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