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#6 鍵業者にふっかけられた話。(実話)
都内某所。私のアパートの前。
家に着いたけど鍵がないので、業者を呼んだ。
ネットで探して、検索の一番上にきた広告サイトを開くと「最短5分到着」「事前にしっかり金額説明あります」「安さ業界No.1」と書いてある。価格表も載っていて、だいたい出張費と鍵開けの費用でコミコミ大体1万円〜の金額感で書いてあった。
別のサイトをいくつかみたが、ここが一番よさそうだ。
エイっと電話をする。
電話が繋がる。丁寧な口調のオペレーターさんに住所を伝えると、「あと1時間から2時間で到着する」と言われた。
以下、私の脳内。
広告には「最短5分」と書いてあるけど、実際は1時間〜2時間か。まあ5分は期待していないけれど、売り文句の割には時間かかるみたいだな。1時間から2時間って、GPSとかで調べてもう少し絞れるんじゃないの?めちゃくちゃ忙しいのかもしれないから、、待つけどさ〜。
そんな感じでアパートのエントランスで待っていると、2時間より少し前に業者さんがきた。体重100キロくらいのおじさん。アメリカ映画でハンバーガー食べまくってそうな感じ。
業者さんを部屋の前まで案内して、オペレーターにも伝えたが合鍵は別の人が持っているのでドアの解錠だけお願いしたいと伝えた。
その業者さんは少しドアを見ると、サイトに載っていた価格表とは別の、ボロボロの紙をスクリーンショットしたものを携帯で見せてきた。
「こちら、少し特殊なドアのタイプなので、開けるのに仮に安いプランでねじ込んでも5万円はかかります」と言われた。
え、めっちゃ高くない?
そんな高い料金になると思わなかったので少しいろいろ聞いてみた。この鍵のタイプはなんとかという名前で、このタイプだと特殊解錠が必要なんだと説明された。そして本当ならお値段はもっとするけど、同じメーカーの一個低い方のプランで申請するから5万にしておきますと言うことだった。
それは分かったが、申し訳ないけど、鍵開けるのに5万円なんて払えない。彼氏が合鍵持ってるから、しょうがないけど私は待つしかない。彼氏にちょっと相談してみようか。
私は業者の人に「すみません、正直高くても1〜2万円くらいで考えていました。今そちらの金額を聞いて、、少し考えたいです。このドアの合鍵を彼氏が持ってるので、電話で相談してもいいですか?」と言った。
すると業者さんは、「うーん、じゃあ3万円でできますよ。」と言ってきた。
「え?なんで5万円が3万円になるの?」とめちゃくちゃ思った。さっき、「どう頑張っても5万になる」って言ってたじゃん。
業者から3メートル離れた同じフロア通路で、彼氏に電話した。
「ねえねえ、今、鍵の業者さんが来てくれてるんだけど」
「うん」
「鍵開けるのに5万円かかるんだって。」
「そうなんだ、高いね」
「でも、彼氏に相談しますって言ったら3万円で良いって言われたの」
「・・なんか、それってちょっと変だよね」
「だよね。そう思うよね」
「今その業者はどこにいるの?」
「ほぼ目の前(笑)」
「そうなんだ。その業者はよくわかんないからやめときなよ」
「うん、じゃあそうする〜」
「でもその場合ってなんかお金って掛かるの?」
「もしかしたら、出張費は掛かるって言われるかもしれない」
「まあ、それは聞いてみよう」
と言うことで、断ることにした。振り返ると、話を聞いていた業者の雰囲気が明らかに変わった。
ちょうどその時、業者にも会社から電話がかかってきたが「はい、はい、あー今客にやられてるんすよね」と明らかに機嫌の悪さを電話相手にむき出しにして言っていた。1対1で周りに誰もいない状況で100キロくらいの巨漢が怒っていると、日中の住宅街だとしてもちょっと怖い。
業者の電話が終わって、私は口調に気をつけて切り出した。
「すみません、やっぱり3万円でもちょっとイメージよりだいぶ高いんですよね。さっき、一緒に住んでる人に相談したら、これから合鍵を持ってきてくれるってことになりました。なので、きていただいて申し訳ないんですけど、鍵は開けなくて大丈夫です」
業者は「あー。わかりましたー。」と、もはや悪くなった態度で床に置いていた工具を乱暴に持ち始めた。なんとなく「こういうこと初めてじゃないんだろうな」と言う感じはした。
「カモになりそうだと思ってふっかけたけど、釣れなそうだ。今から別の奴が来ると言っている。その前に早く帰ろう」そんなようにもみえた。とにかく、あっさり帰ってくれるんだ。よかった。
私の前を通るときに、顔を見ないで「全部コミコミで2万でもダメっすかね?」と聞かれた。
「ごめんなさい」と私は言った。
業者はさーっと帰って行った。
出張費について何か言われるかと思ったが何も言及なし。その後も特に連絡はなかった。