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タイでサル調査!研究奮闘記

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ベニガオザルを研究している豊田博士のコラム「タイサル!」をまとめました。不定期で挿絵を担当しています。
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連載コラム「タイでサル調査!研究奮闘記」配信開始のお知らせ

みなさんはじめまして。サルの研究をしている自称写真家の豊田です。 「写真家」は私の願望であってあくまでも自称です。 正式な身分は大学所属の研究員で、タイ王国でベニガオザルというサルの行動を研究している霊長類学者です。 この度、noteにて「タイでサル調査!研究奮闘記」という連載を始める事となりました。 新型コロナウイルスの影響で海外渡航が難しくなり、私のタイ王国でのベニガオザル研究も中断を余儀なくされて、早一年が過ぎてしまいました。 渡航規制緩和の目処も、調査再開の予

タイサル!第1話「海外調査の生活拠点」

みなさんこんにちは、サルの研究をしている自称写真家の豊田です。 「タイでサル調査!研究奮闘記」、略して「タイサル!」の第1話は海外調査の生活拠点についてのお話です。私の調査基地をご紹介しつつ、今後の記事の目次のような位置づけでお読みください。 ■生活拠点 海外調査における生活拠点は、研究者によって全然違います。歴史の長い調査地であれば、自前で整備した調査基地をもっているところもあります。調査期間が短ければ、近場の宿を拠点にすることもあります。私の場合は、基本長期滞在であ

タイサル!第3話「シャワーも命がけ!?お水事情その①」

みなさんこんにちは、写真家を自称して現実逃避する研究員の豊田です。 自称し続ければ、いつか研究職で路頭に迷っても、研究者出身の写真家として野生動物の生態を撮るプロカメラマンになれるのではないか...と思っています。 自己暗示です。 この写真は、私の調査部屋の前にある池に牛たちがやってきた時の様子をスマホで撮ったものです。 のどかな風景でいいところなんですよね、この調査地。 この池の水がシャワーから出てくる点を除けば...。 「タイでサル調査!研究奮闘記」略して「タイ

タイサル!第5話「シャワーも命がけ!?お水事情その③」

みなさんこんにちは、サルの研究をしている自称写真家の豊田です。 タイサルも第5話まできました!お水事情の最終回、命がけシャワーのお話です。 そもそも雨水タンクから水を汲んでくるだけで、ヤバいサソリの住処で作業せねばならないという危険を犯しているのですが、きれいな水を獲得できるなら仕方ありません。 そうやってきれいな水が手に入ると、次なる欲求が湧いてきます。 ■「温かいお湯でシャワーを浴びたい」もちろん日本人なので「お風呂に入りたい」は常に頭の中をグルグルしています。で

タイサル!第6話「泥水との激戦を終えて」

みなさんこんにちは、サルの研究をしている自称写真家の豊田です。 調査地のお水事情、”命がけシャワー”の話に到達するまで、3回に渡りお伝えしてきました。 今回は、直近の調査地でのお水対策についてお話しておきます。というのも、現在の調査生活では、諸事情により別の方法を採用しているからです。 2015年9月から始まったタイ調査。2017年6月に無事調査全日程を終え、論文書き・学位取得のため、日本に戻ることになったのですが、その時点で、次いつタイに戻ってこられるか不明でした。そ

タイサル!第9話「忘れ物確認ヨシ!調査時の装備について」

みなさんこんにちは、申請書提出前で死にかけの豊田です。 日記は3日と続けることができない私ですが、タイサルは第9話まで来ました!毎回色々と反響を寄せていただける皆様のおかけです、どうもありがとうございます。 さて、今週は調査時の装備についてのお話です。私が調査中にどんなものを持ち歩いているのか、簡単にご紹介します。 調査の持ち物:基本セット調査時に何を持っていくかは、研究者によって違います。調査内容によっても、また、アシスタントが居るか居ないかによっても違います。私の場

タイサル!第11話「誰が誰だかわからない!個体識別の話」

みなさんこんにちは、サルの写真を眺めてはニヤニヤしているヒヨッコ研究員の豊田です。 今日は調査の基本、「サルの個体識別」についてのお話です。 ■個体識別って?私たち動物研究者にとって、個体を識別することは調査の基本中の基本です。行動を記録する際は「誰と」「誰が」「いつ」「どこで」「どういう状況で」「何をしたか」を記録します。 「誰と」「誰が」って、どうやって記録するのでしょうか? 答えは簡単で、全ての動物の顔を覚えて、名前をつけて、区別すればできます。私は調査期間中、

タイサル!第12話「ゲシュタルト崩壊!全頭識別への道」

みなさんこんにちは、調査再開の目処が立たず研究のやる気が激ローのヒヨッコ研究員の豊田です。 前回は個体識別の序盤、写真による識別整理のお話をしました。今日はその続きです。 写真で判断できるだけでは不十分で、実際に実物を見てその場ですぐに識別できるようにならなければなりません。これがまた、大変な作業なのです。 ■毎日同じ個体に会えない私の調査地には、サルの群れが5つ生息しています。その日、どの群れに出会えるかは運次第。今日出会った群れに次会えるのは1週間後、なんてこともザ

タイサル!第26話「気づけば部屋が虫だらけ!マレーンマオ大量発生の悲劇」

昨日、ようやくワクチン2回目の接種を終えた豊田です。 タイは当初の予定を半月ズラして10月中旬から外国人の受け入れを開始する方向で動き出していますね。ようやく待ちに待った調査再開の時が...と期待はするのですが、問題がもう一つ。日本の外務省が指定する感染症危険レベルが「3」のままでは、調査に行けないということです。正確に言うと「研究業務として海外出張が許可されない」です。なので、せっかくタイが国境を開けてくれても、感染症危険レベルが2に下がらないと、渡航できません。休暇を利

タイサル!第26-2話「気づけば部屋が虫だらけ!マレーンマオ大量発生の悲劇」【虫写真なし】

こちらはタイサル!第26話「気づけば部屋が虫だらけ!マレーンマオ大量発生の悲劇」の、虫写真をイラストに置き換えたバージョンです。 虫が苦手な人は、安心して、こちらをお読みください。 調査基地にやってくる虫たち 私の調査部屋がある建物は、保護区エリア内、裏手はもう山という、自然の中に建っています。新しい建物ではないため、一応窓もドアもあるもののあちこち隙間だらけ、ひび割れだらけ。おまけに、エアコンという文明の利器もないため、建物に籠もった熱気を排気するため窓という窓は常に全

タイサル!第27話「思い出いっぱい!タイで購入したmy冷蔵庫の話」

ベタの稚魚の育成に大忙しな豊田です。タイは結局10月中の渡航規制解除には至らず、もう年内は完全に諦めレベルです。なのでせっせとベタの繁殖に勤しんでおります。 今週はもうひと組のペアのペアリングに成功し、産卵を確認しました。リビングのあちこちに稚魚の餌用のゾウリムシを培養するペットボトルを置きまくっているので、家族から冷ややかな視線が送られております。 稚魚の世話をするというより、もっぱら、ゾウリムシを培養しているだけのおじさんになっています。 さて、今週のタイサルは、調

タイサル!第28話「クリスマスにひとりで死にかけた話」

みなさんこんにちは、投稿中の原稿が2本とも査読で4ヶ月近く待たされていてイライラレベルがMAXの豊田です。 ベタの稚魚は元気に成長中です。 さて、前回は冷蔵庫のお話でしたが、今回は電子レンジを買うに至ったある事件のお話です。 事件のきかっけ忘れもしません、2015年のクリスマス。 この年の9月からタイの田舎の調査地でひとりポツンとぼっち生活を送っていた私は、クリスマスの日も変わらずベニガオさんたちと森の中で過ごしていました。 職員さんに「ハッピークリスマス!(タイ発

タイサル!第29話「調査地での同居人・チンチョッとの日々のあれこれ」

みなさんこんにちは、筋肉痛に苦しめられた1週間を送った豊田です。 一年以上に渡る引きこもり生活と諸々のストレスで、すっかり毎晩ビールを飲むくせがついてしまいました。ビールだけならまだマシなのですが、レンチンの唐揚げとかチャーハンとかカップ麺とか、おつまみまで一緒に深夜に食べてしまうので良くないですね。というわけで、火曜日に30分ジョギングをしたのですが、これが過酷で。その後数日ずっと筋肉痛に苦しんでいた次第です。トホホ... さて、今週は犬たち以外の調査地での同居人、ヤモ

タイサル!第31話「雨の日の定番!カエルの唐揚げができるまで」

みなさんこんにちは、投稿した原稿が立て続けにリジェクトを喰らい、改稿に投稿作業にその他諸々、急に忙しくなってきて死にかけのポンコツ研究員の豊田です。 寒いので元気がなくなっています。秋の匂いは好きなのですが、布団から出るのが勇気がいる気温になるのは勘弁ですね... さて、今週はカエルの唐揚げの話です。 若干、閲覧注意画像が出現しますので、ご注意ください。 雨季はカエル天国に泥水と戦った話のところで、雨水タンクまわりにカエルさんがたくさんいることをお話したと思いますが.