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コロナ禍の日本子連れ帰国、フランスから⑤隔離ホテル生活編

「到着翌日から数えて3日間の隔離」は、普通の大人が1人で過ごすには快適だと思う。何もせずに、三食昼寝付きでそこにいれば良いだけだからだ。清潔な部屋で、ネット環境はそれなりに整備され、テレビもあり、ケータイで日がな過ごせば、時差調整にはもってこいだ。

だが、それが4歳児と一緒となると、様子が一変する。私の子供は女の子だったからまだおとなしいものの、男の子連れの親御さんのご苦労は拝察する。とはいえ、ある程度体を動かさないといけない幼児と、狭い部屋に閉じ込められる、しかも3日間とは、親にとっては恐怖に値する。

結論から言えば、それらは杞憂に終わって、なんだかんだ言ってこの隔離期間はゆったりと過ごせたと思う。これがもう一日長かったら話が違ったかもしれないが、娘は状況を良く理解しており、わがままをほとんど言わず、スムーズに生活することが出来た。しかも、いつも1週間続く娘の時差ボケが、今回はなかった。それが余裕ある生活が出来た一因でもあると思う。

もちろんそれは色々考えて準備してきたから、という部分も多分にあり、ここで私が持ち込んだものなどを紹介したいと思う。

ホテル到着

羽田空港を出発したバスが、道を挟んだ向こう側に立つヴィラフォンテンヌに着いたのは、夜9時を回っていたと思う。日本に到着してから6時間経過。本当に文字通りグッタリ疲れていた。

バスから下ろされた荷物を、用意された台車に乗せてホテルの中に入ると、ホールにテーブルがいくつか並んでおり、そこで「入所」手続きをする。本来ならそれなりのグレードのホテルだろうに、奥に並んだ弁当の山など騒然とした様子を見ると、野戦病院とか災害時の避難所とかってこんな感じなのかも、と思わせる。

入所手続きでは、空港で使っていた文書が再び求められる。かの有名な?名無し「健康票」は、空港でのPCR検査陰性証明でもあるため、ここでも一番重要だった。ここではホテルの生活についての案内をもらい、そこに「ID」が記入される。入所時に体温計を渡されるので、このIDに基づいて健康管理=毎日朝8時の検温報告がオンラインで行われるため、滞在中は枕元にメモをずっと置いていた。

そして弁当を渡され、ようやく部屋へ案内される。真新しいホテルを傷つけないように、段ボールでガードされた工事現場のようなエレベータに乗り、その階に着いたら、バイトのお兄ちゃんが荷物を持って案内してくれた。それまでは長時間緊張を強いられていたので、部屋に入った時、周りの監視などから解放されて本当に嬉しかった。

隔離中の食事

本来なら、部屋に入ってすぐに検温をしなければならなかったが、まずは食事。久しぶりの日本のお弁当はおいしい。思ったより茶色でもなかった。食事が済んだ頃に思いだして、かなり遅れて検温報告をネットでしたが、とくに問題は無かった。

それ以外の日常の食事は、大体8時半、12時、18時だったかにこれから配る、とのアナウンスがあり、その30分後くらいに「配り終わったからマスクしてドアの外にあるのを受け取れ」と再度アナウンスがある。食べ終わったものもビニールに入れて、ドアの外へ出しておく。入所時にゴミ袋を渡されるが、それも必要ないくらいの量のビニール袋に入っている。

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しかし、大人にはおいしいお弁当でも、幼児には少々ハードルが高かった。私の娘はコショウや辛いものが苦手。このお弁当で食べられたのはご飯と煮魚、豚の下にあるキャベツだけで、他は味付けがコショウが利いてるか、辛い。その上、配られる飲み物も「お~いお茶」一択。部屋に500mlのミネラルウォーターが3本あったが、それだけだった。せめてお茶をカフェインのない麦茶とかにして欲しかった。

唯一娘が、お弁当の中の品目がすべて食べれたのは、3日間9回の食事のうち、2日目の朝食だけだった。そして、ご飯以外全く食べれなかったのも、1回あった。想像の範囲内ではあったが、好き嫌いのない何でも食べる娘が、本当に全く食べれないものが出るとは思わなかった。難しいお子さんを同伴している親御さんは、そもそも出される食事を期待してはいけないのかも!?受け入れホテル側は、是非子供メニューの導入を検討して欲しい。

そして、お弁当には生野菜がないので、ビタミン不足が気になる。そこで娘の大好物のひよこ豆の缶詰と、心ばかりのビタミン補給として、にんじんの缶詰を持ち込んだ。そしてデザートとして、定番のリンゴのCompoteと、パリの空港で買った100%パイナップルジュース。これがかなり使えた。お弁当の中にひよこ豆とにんじんをゴロゴロ入れて、コップ1杯のパイナップルジュース。デザートかおやつにCompote。このルーティンで3日間を乗り越えた。部屋内に冷蔵庫はあるので、保存には問題なし。

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娘の朝食には、空港の待ち時間で好評だったパン・オ・ショコラか、これまた個包装のチョコクレープ。それにCandyupというチョコレート牛乳のテトラパック。赤ちゃん用の常温保存が利くヨーグルトみたいなのも持っていたが、これには興味なし。カルシウムも足りなさそうなのでBabyーbelleチーズも。おやつにはポテトチップスも持っていったが、これは自分も含め好評。

そしてもちろん、子供用のカトラリーはお忘れ無きよう。百均で売っているベビー用のシリコンテーブルセットも、滑りやすいテーブルにお弁当を動かないようにするのに便利だったし、粘土遊びするときもテーブルを汚さずに済む。ウエットティッシュもテーブルや口を拭くのに、あれば便利。

そして、私にとっての最大の失敗?は、アルコールを持ってこなかったこと。ホテル到着時に配られた案内では「飲酒禁止」とある。まあなんと信用されていないことか。クタクタに疲れて帰ってきて、ビール一本すらも飲ませてもらえない。そして、毎食ごとに大量に溜まっていくお~いお茶。ワインの小瓶でも忍ばせておいた方が、何の楽しみのない3日間を、精神的に過ごしやすかったと正直思う。

でも部屋の中にはコーヒー、紅茶、緑茶が3回分ずつ、電気ケトルがあるので、温かい飲み物は不自由しない。私は他に紅茶を持ち込んだので不要だったが、恐らくこれらの飲み物は、頼めば補充してくれると思う。逆に持ち込んで全く使わなかったのは、インスタント味噌汁。温かい飲み物があったので、お弁当に加えて、わざわざ塩辛いものを飲む必要は無かった。

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3日過ごして飲みきれなかったお~いお茶。2人分とはいえ、無駄に多い…。

デリバリーについて

滞在中の案内の中に、デリバリーは可能とあった。ご丁寧にホテルの電話番号が書いてあり、迷ったら案内するとまである。サラダやジュースが頼めるなら、と思って探してみたが、結果から言うと使わなかった。と言うか、使えなかった。日本の標準的なデリバリーサービスを知らない私は、Uber Eatsで調べてみたが、まずは未開業のこのホテルをデリバリー先に指定できなかった。指定できたとしても、Uber Eatsで届けてくれるお店が全くなかった。

そのあとGoogleなどで「デリバリー、羽田空港、ホテル」などで検索してみたが、私が欲しいものを届けてくれそうなところは見付からなかった。私の探し方が悪かったのかもしれないし、ホテルのフロントに聞いたら良かったのかもしれないが、とりあえず持ち込んだもので済ませられたので、無くても過ごすことは出来た。

部屋の中

15平米くらいの部屋に、ダブルベッド1台。ネット接続が出来るテレビがあり、その前にソファと小さなテーブル。風呂場が余裕のある大きさで、湯船は娘と2人で余裕で入れる大きさだったのが嬉しかった。テレビの下にちょっとした棚があり、そこに娘のおもちゃや本を並べ、そこから出して仕舞うようにしていたので、部屋が散らかることはなかった。窓からはモノレールが見える。

最初は1人仕様だったらしく、枕が1つしか無かった。試しにその1つで寝てみたが、娘と取り合いになったので、フロントに相談したらすぐに持ってきてくれた。コップも足りなかったので頼んだら、問題なく調達してくれた。普通のホテルでお願いするような事は、恐らく普通に対応してくれる。

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普段は1日30分しか見せてもらえないテレビを、1時間を朝昼晩の三回見せていたので、娘的には飽きるまで見たようだ。テレビでは地デジの他にYoutube、Hulu、Netflixなどが使え、私の弟がHuLuのアカウントを貸してくれたので、クレヨンしんちゃんを初めて見て、ハマっていた。Netflixはフランスのアカウントで、日本のコンテンツが見れたかは確認していない。それにしてもNHK教育テレビ、午前中のコンテンツのレベルの高さには舌を巻いた。

それ以外は、粘土遊び(新しい美容師さん遊びを持って行った)、ぬりえ、お絵かき、新しいお化粧セット、子供用UNO、Doobble(カード遊び、老若男女で遊べるのでお勧め)、そしてYouTubeで体操。狭いが2人何とか体を動かせる程度の場所はあり、真面目にやると汗だくになれる。

そしてそうこうしているうちに、食事の時間になる。夜は2人でゆっくりお風呂に浸かり、時差調整のためにわざと娘を遅くまで寝かさず、午前様な時間に起きないようにしていたら、これが大成功。空港で長時間引きずられたのが功を奏して、今回は時差ボケがなかったのが素晴らしい。これも日本政府のおかげ?


始まるまではストレスでしかなかったが、見方を変えればこのホテル滞在は、家事や仕事を全くせずに、一日中子供と向き合っていられた貴重な時間とも言えた。一旦入ってしまったら、意外とのんびり過ごすことが出来た。廊下には警備員さんが一日中本当に立っていて、まったく外には出れないが、誰からも邪魔されないので、子供とラブラブな時間を過ごせた。多分一度も怒らなかったんじゃないかな?

ちなみに私が一番ツラかったのは、窓が開かないので、外の空気が吸えない事だった。そしてこのホテル滞在中に、ドイツとイタリアからの旅行者が隔離対象から外れたと聞き、大きなため息をついたことは忘れない。


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