ベトナム旅行記①わくわく()ベトナム一日目の夜と、変なベトナム人おじさんと出会った話

ベトナム旅行記⓪→ https://note.mu/riyaaaaaac/n/n3a92a59a62e2

<前回あらすじ>

あのこ、人生の全てが嫌になってベトナムに行くけれど飛行機は三時間遅れるし、ホテルはホーチミンから外れた場所にある何だか怪しげなホテルだし、同行人の女の子はなんか赤リップが女の子っぽくて怖いし、ましてやその子と二人きりでベトナムの街に一緒に飯を探しに行くことになったし、あのこはこの試練をうまく乗り切れることができるのか___???ドキドキワクワクのベトナム旅行、はじまりはじまり〜〜〜〜

というわけで、私ははるのちゃんと二人でベトナムの街に出ることになった。

その前に、ホテルを見ていこう。

まず最初の記事でも述べた通り、ロビーは何だか薄暗いし、居座ってるお兄ちゃんは黒いシャツを着ていてヤクザみたいだし、無愛想だし、壁には怪しい絵が描いてあって、仏壇が置いてあるのが一層怪しい。

うわっ!何か蹴った!と思ったら、仏壇の前にあるお供え物のメロンだった。いやはや、不謹慎も甚だしいってなもんだ。

さて、鍵を開けて部屋に入ると、ベトナム特有の少し生ゴミ臭い__といえば少し失礼だが__な香りがふんわりと私の鼻をついた。

おっと、と思うと同時に、何だかこの匂いが少し懐かしくもある。

エスニックな生ゴミとでも言うべきか。少しフルーティな臭さとでも言うべきか。とにかく、嫌な匂いではあるんだけれど、なぜか少し、嫌いになれない匂いなのだ。

トイレのドアを開ける。

「なるほどね。」

思わず声が出た。

トイレは風呂トイレ一緒、どころか、もうなんというか、風呂トイレ一体である。

シャワーの真横に便座が設置してあって、これは風呂に入るときに便座が濡れることは絶対に免れられない。

そして何となく薄汚れた壁。

トイレの窓は閉まらないらしく、外からの笑い声や車の走る音がざわざわと聞こえてくる。

扉の上に貼ってある時計の針は止まっていて動かないみたいだった。

いやはや。

別に覚悟はしていたけれど、まぁこんなもんだよな。

まぁ東南アジアの安宿にしては結構綺麗な方なんじゃないか、うん。

これからだよ、ほら、頑張ろう。

自分にそう言い聞かせて、また部屋を出た。

向かう先ははるのちゃんの部屋だ。

ドアを三回ノックする。

「ご飯・・・食べにいこ」

コミュ障全開である。

仕方ない。生まれながらの人見知りだから、ここで全力のコミュ力を発揮して一緒にご飯〜〜なんて難しいのだ。

さて、赤リップ女__はるのちゃんは少し不機嫌そうな顔で部屋の中から出てきた。

この時点で少し怖い。

「ワイファイ、一つしかないし、一緒に行動しないと、ほら、危ないかなって…」

おそらく大学生、年齢もさほど変わらないであろう相手になぜ吃るのだ、私。

とにかく、彼女と一緒にホテルを出ることに成功したが、私は何だか落ち着かないし、うまく喋ることもできない。

ホテルを出てしばらく歩く。

「なんかしばらく歩いたらいいお店あるかなぁ」

なんてお互い言いながら歩いたけれど、なんせすごいのだ。

何がすごいって、交通量がすごい。

路上をずっとバイクが走っていて、全く歩けない。

横断歩道?何それ。

一応設置されてる横断歩道に対しバイクはビュンビュンと飛ばして行くから、我々みたいな「ただの人間」にはそれを渡ることができないし、文字通り立ち往生するしかないのだ。

だが私がそれでも何とか渡ろうとしていると、はるのちゃんは止めることもなく、一緒に横断歩道を渡ろうとしながら、その度に

「えぇ、これどうやって渡るんだ」

と笑ってきた。

なんだ、意外とサバイバルで力強い人間じゃないか。

などと偉そうなことを考えてしまう。

だが結局どうしたって高速道路並みにビュンビュンとバイクが通る道を雑魚のような我々人間が通ることはできないと見限ったチンケな私たちは諦め、ホテルへとUターンしようとした、そのときだった。

「ここでいいじゃん」

先に声を出したのは私だ。

そこにあったのは少しおしゃれなカフェだった。

料金について書かれてないし、料理があるかどうかは分からないけれど、でも中は清潔だし、確かに、ベトナムで初夜の料理を食らうにしては適切な安心感だ。

「よし、ここにしよ」

二つ返事で決まった。

店に入ると、ベトナム人のお姉さんとおじさんが迎えてくれた。

さて、ここからが関門だ。

「Ah… Do you have anything to eat?」

クソみたいな英語だ。

いや、仕方がない。大学に入ってから私は英語の英の字にすら触れていない生活を三年間送ってきた。高校時代の受験に向けた勉強なんてものはもうもはや過去の産物にしか過ぎず、今の私にあるのは残念すぎる英語語彙力と、残念すぎる実践英会話力、それのみなのだ。

だが英語強者らしいはるのちゃんのカバーにより、何とか伝わる__と思いきや、ベトナム人の最も恐ろしい点と言っても過言ではない問題が出てくる__。

「義務教育に英語がない。」

彼ら、簡単な英語すら通じないのだ。

本当に酷いのは、「Sorry」だとか「Thank you」だとか、そういう単純な挨拶さえ通じない。

だから「do you~」なんて疑問文も、「I want」なんて願望も、一言も彼らには通じないのだ。

結局身振り手振りを大きくしたり、グーグル翻訳などを使ったりするうちに、何とか通じたらしく、我々はとにかく落ち着いて席に座ることができた。

どうやら、お店のメニューに食べるものはないけれど、特別にお姉さんが作ってくれるみたいだった。

そしてどさくさに紛れて、そばにいたおじさんがなぜか私たちの隣に座った。

「あなたの名前は何ですか?」

全く英語のできないらしいおじさんは、グーグル翻訳を使って聞いてくる。

「あのこです」

「はるのです」

「日本から来ました」

「ボランティアをしに来ました」

「この近くのホテルに泊まっています」

こういった単純な会話さえ、グーグル翻訳を使わないと全く通じないのが大変もどかしい。

しかも、ベトナム語と日本語の翻訳機能って全く発達してなくて、気を抜けば全く意図と違う言葉が通じてしまう。

そうしているうちに、この変なおじさんは私たちに向かってこう言って来た。

「あなたたち二人を、ホーチミンに案内したい」

いや待てと。

今目の前にいるおじさんはどう見ても変な知らないおじさんで、ましてや翻訳機能を使わないと会話が一文字として成り立たないどうしようもない状態だ。

だがおじさんは窓の外の車を指差して、何度も誘ってくる。

どうしよう。

正直、私の中では二つの意見に割れていた。

いやいや、おじさんは怖いからちゃんと今日は大人しく帰って、明日からちゃんと安心できる人にホーチミンを案内してもらおうね。

ほら、はるのちゃんもいることだから、危険な目には合わせられないでしょ。

という真っ当な意見が一つ。もう一つは、

ホーチミンを案内してくれるなら、案内してほしい。

おじさんは怪しいけれど、なんだかこのまま行かないのは面白くない!

という持ち前の怖いもの知らずの精神だった。

だが、仮にも私は女の子だし、一緒にいるはるのちゃんも絶対に怖い目に合わすことはできない。

何なら私はベトナムで家族旅行の時にお金を盗まれたことももにいちゃんがぼったくられる瞬間も目にして来ているので、一番警戒しなければいけないのは私だった。

だが、はるのちゃんは違った。

「ホーチミン案内してくれるなら行きたい」

こいつ、ただ者じゃない___。

というわけで、二人でおじさんの車に乗ることが決まった。

カフェの食事とコーヒー料金はなぜかおじさんが払ってくれていた。

さて、車に乗せられてどんどんと進む。私はとにかく警戒心を捨てられなかったので、カバンを前にしっかり抱きながら窓の外をじっと見ていた。

そして連れてこられたのは__

なんだここ。

なんと、どこで話が食い違ってしまったのか、おじさんのお友達の誕生日パーティーに連れてこられてしまった。

そんな話は聞いてない。いや、グーグル翻訳がうまく訳してくれていない。

とにかく全く知らないおじさんたちに囲まれて、大量のご馳走とお酒が目の前に現れた。

何だこれは。周りにいる人たちはみんなベトナム人。言葉は全く通じない。

飯を食らう。

うまい!

何だこれは、普通に美味しい!魚だ!

酒も美味しい!

お腹はさっきのカフェで食べたから減ってないけれど、それでも美味しい!

おじさんたちは何回も乾杯をする。日本では乾杯は最初の一回でしかやらないけれど、ベトナムでは何回も乾杯をするのが文化らしい。

へえぇ。

太ったおばさんが立ち上がって、マイクを持って前で歌い始めた。

みんなはバラの花の折り紙の中にお金を差し込んで、おばさんに渡しに行く。

何だこれ。

私たちはヤバい場所に来てしまった。

はるのちゃんと目が合う。

お互いどうしたらいいかわからないこの状況から、どういうタイミングで、何をして抜け出せばいいか分からず、ただ気まずそうに笑うことしかできなかった。

だが、時間が経つに連れ、私とはるのちゃんの顔色も変わってくる。

「これさ、いつ終わるんだろうね」

「わかんないけどさ、明日うちらボランティアあるし、そろそろ帰りたいよね」

日本語でそんな会話を交わす。時計を見る。20時過ぎ。日本だともう22時を過ぎた時間だ。早く起きて飛行機に乗った我々からするとだいぶキツイ時間でもある。

「おじさんにいつ終わるか聞こうよ」

「え、でもそれ失礼じゃない?」

「なんかマイルドな言い方でさ、明日早いんですとか言ってさ」

日本人らしい忖度を繰り広げながら、私たちはおじさんから抜け出す方法を考え始めた。

おじさんはご機嫌になって私やはるのちゃんに抱きついたりほっぺにキスなどをし始めた。おじさんにほっぺにキスされたのって何気に人生初で、あれ、想像以上にめちゃくちゃ全身に鳥肌が立つんだね・・。全国のおじさん気をつけてね。

私たちの腕を掴むのもなんだかねっとりしていて少し気持ち悪い。

「いつ終わるんですか?」

思い切って尋ねてみる。

「20分後には帰るから」

おじさんはグーグル翻訳で返事をくれた。

だが、20分以上経ってもおじさんは動く様子はない。

「もういいよ、帰ろ」

はるのちゃんが席を立った。それでおじさんも慌てたらしい。

30分近く経った頃、おじさんはやっと車を出してくれた。

「あなたたちは僕と会えて幸せです」

帰りの車の中で何度もそんなことをグーグル翻訳で言われた。

何だこのオヤジは。結局ただの怪しいオヤジだったのか?

私もはるのちゃんも苦笑いしながら、ホテルの場所を伝えた。

おじさんは続ける。

「私たちはホテルに行きます。そしてその後ホーチミンを案内します」

え、その後案内してくれんの!?

さすがに遅いておじさん、この時間にホーチミンに何があるよ。

「いいえ、私たちはホテルに帰ります」

何度かそういうメッセージを伝えたが、おじさんの答えは一点張りだ。

「私たちはホーチミンに行きます。案内したいのです。」

怖い。きっとおじさんはとても優しい人なんだと思う。

だけど、ここまでしつこいと、正直怖い。

車が私たちのホテルの前に着いた。

このまま強引にどこかに連れて行かれる可能性やお酒に何かが入ってた可能性も考えたけれど、別にそんなことはなかった。

「送ってくれてありがとう。私たちは寝ます。」

「ホーチミンに行きましょう」

またか。どんだけホーチミンに行きたいんだおじさん。

「いいえ、私たちは疲れているので寝ます」

私がゴタゴタしていると、はるのちゃんが不機嫌そうに

「もういいよ、行こ」

と車を降りた。私も急いで後に続く。

おじさんは寂しそうに私たちを見送っていた。

この後、おじさんからインスタを介して何度もメッセージがきたし、数日間電話も何回もかかってきた。その度におじさんは

「ホーチミンを案内したい」

と言ってくれていて、私は何度も英語で断った。

でもおじさんは全くダメージを受けることなく、何度も誘ってきた。

だから私は最終的に、グーグル翻訳を使って、

「私たちは忙しいです。もう私たちを誘わないでください。」

という内容のメッセージをベトナム語で送信した。

しばらく返事は返ってこなくて、一時間ほどしてから返ってきたおじさんからの返事は

「Sorry…」

の一言だけだった。

おじさんが結局優しい人だったのか、怪しい人だったのか、それは最後までわからない。本当にベトナムを案内したかった、ただの好々爺だったのかもしれない。

とにかく私たちはベトナム1日目は知らないおじさんの誕生日パーティに招待されて、そしてタダメシとタダ酒を食らい、飲み、そうして1日目が終わった。

一体全体おじさんが何者だったのか。

それはもう、永遠の謎に包まれたまま、ベトナムでの私の生活は始まるのだ__。

いやめっちゃモヤモヤするなこれ。

続(けばいいな)

あのこ

twitter @Anooooooc

オ…オ金……欲シイ……ケテ……助ケテ……