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「自分が「無能な働き者」だと気づいたこと」について考える #内省録

何気なしにふと気になったテーマを取り上げ、自分の経験、思考、価値観と向き合いながら深堀りをしていくシリーズ。内省したものをこうして記録することで、

  • エンジニアとしての成長のロードマップ

  • 自分が取り組んでいる分野の動向の推察

  • 今後の活動に関する意思決定

のために役立てていこうというもの。要するに、思考・価値観の人間ドックである。

会社員の人の多くは、年に1回とか、半年に1回とかの頻度で、上司と面談というものをやっているだろう。その面談の機会を使って、

  • 「ふだん会社や部署に対して思っていること」を言ったり、

  • 「こういう仕事にもチャレンジしたい」とか

  • 「給料を上げてほしい」と言ってみてる

そんな人が多いのではないだろうか。

ところが、前職の大企業での面談は、面談なのか雑談なのかよくわからない感じで終わっていた。特に上司から評価とか、期待していることを言われるわけでもなく、「最近どう?」たけ。仮に「〇〇で悩んでいる」とか、「〇〇のようなプロジェクトに興味がある」とか色々言ってみても、「まぁ、うまくやってくれ」とか「なるほどねー・・・」で終わる。

建設的な話にならないどころか、驚くことに会議室ですらなかった。ちょっとでも爆弾発言が出れば部署のみんながこっちを振り向くレベルで普通にみんなに聞こえるような、仕切りのない小机が面談の場である。

とにかく音沙汰がないことを好む上司であり、当然思い切ったことを言えるような雰囲気ではない。(「来月辞めます」と上司にメールを打った時には初めて会議室で面談が行われた)。

その一方、ベンチャーでの面談の雰囲気は全く違っていた。

先日、ベンチャーに転職してきて初めての面談で、相手は役員一人だったのだが、そこで役員から自分に言い渡されたのは、

「会社から見ると、今の君はメカエンジニアとして信用が低い。この状態が続くなら減給も考えている」

というものだった。

誤解を防ぐために言っておくと、この役員からのコメントは勤務態度に対するものではなく、純粋に私のメカエンジニアの能力に対するコメントである。もちろん今まで、遅刻や無断欠勤は一度もしていない。

この発言を、ボクシングに例えると、ゴングがなってわずか数秒で、顔面に強烈なパンチを食らったような、そんな感じで、完全にノックアウトだった。

このように非常にパンチの効いたコメントをもらった経験のある人は少ないのではないだろうか。特に日本の企業は年功序列なので、法律や社内規則を守っている限りは「減給」なんていう評価がくることはまずあり得ない。私自身もこのような厳しいフィールドバックがあったのは初めてだが、成果主義の会社ではこんなことが起こるのだと、このとき強烈に実感した。

この強烈にパンチの効いた評価から、深掘りをしていく

評価の背景

その理由については、面談で話を聞いているとだんだんわかってきた。

どんな職場にも「なんでも仕事を器用にこなす人」っていると思う。部署の模範社員というか、主人公・エース的な存在というか。機械設計の仕事に噛み砕いていえば、

  • 考え方が柔軟で、

  • 設計のアウトプットをしっかり出しつつも、

  • 専門知識以外の知識にもある程度詳しく、

  • 上司からも先輩からも部下からも他部署からも人望があって、

  • リーダシップもあって、

  • 失敗しても自分でリカバリーするし、

  • 他人が失敗したときのフォローもしてくれるし、

  • 自立していて一人でしっかりプロジェクトを回していることもある。

部下からすると「もうこの人だけでいいんじゃないかな・・・」って思えるような、そんな感じの人。会社としても「そのエースの社員のようなスキルをメカエンジニアに求めている」という。

要するに「君はそのエース社員と比べると、すべての面で圧倒的にレベルが足りていない」というのが会社からの評価である。そして、その評価か下されたとしてもおかしくないというのは自分でも納得している。

そのようなエース社員がいると、会社としては「頼もしい、心の支えになる」という良い側面がある。ただ一方で、その人が人事評価をする上での基準となるため「その人と比べると君は・・・」というように比較することができてしまうのが、なかなかツライところだ。

報酬の決まり方

次に「減給するかも」という評価について、自分なりにもう少し深堀りしてみる。

新卒で雇用された場合と、中途で採用された場合とでは、給料の決まり方が全く違う。

新卒では募集要項に「大卒:月〇〇万円」という形で明記されており、他社との差別化といえば「ボーナス」と「福利厚生」だ。一方で転職では、募集要項に書かれているのは「年収〇〇万円〜〇〇万円」という形で、数字の幅がめちゃくちゃ広い(おおよそ300万円ぐらいの幅がある)。そして、実際の給料額というのは内定がもらえる段階で初めて提示されるのだ。

そこで疑問だが、自分が転職した時、その提示額はどういう理屈で決められたのだろうか?

その答えはもちろん「期待値」だ。「実力」でも「年齢」でも「ポストの空き具合」でもない。年功序列システムと大きく異なる。

入社したばかりの頃は、役員や上司も様子を伺う感じではあった。だが、数ヶ月も経てば、その人の実力はかなりの部分見えてくる。そのため、期待値に比べて実力の乖離が大きければ減給するというロジックはいたって当たり前だろう。プロ野球やプロサッカーの世界でも、高額の年俸でチームが選手を引き抜いたとしても、その選手の成績がいまいちであれば、契約更新の際に年俸を下げる。そういう意味で、今の仕事はサラリーマンというよりも、アスリートに近いのかもしれない。

「無能な働き者」

今まで自分が大企業でやってきたこととは、いったい何だったのか・・・。何をやってたんだ・・・。

そう思った矢先、役員からは

「学歴が高くて、大企業出身ということもあって、理論計算が比較的得意だというのも感じる。性格もマジメだと思っていて、採用のときからその様子にギャップは感じない。ただそれをこの会社で活かしきれていない。」

とのコメント。

マジメだけれど、会社が求めているレベルには全然足りていない。これを聞いて「ゼークトの組織論」が頭をよぎった。

ゼークトの組織論というのは、人間の資質は4つに分けられるとし、その4つのタイプの人間が組織(軍隊)においてどのような地位・役職に適正があるかを示した理論である。その4つのタイプとは、

・利口(有能)で勤勉(働き者):参謀に適している
・利口(有能)で怠慢(怠け者):指揮官に適している
・愚鈍(無能)で怠慢(怠け者):命令を忠実に実行するのみの役職に適している
・愚鈍(無能)で勤勉(働き者):このような者を軍隊において重用してはならない。

というもの。この中で一番ヤバいのは4つ目の「愚鈍(頭が悪い)で勤勉(やる気がある)」である。別名「無能な働き者」。

なぜヤバいのかというと、正しい判断力が備わっていないのに、勝手な自分の判断(本人はそれが正しいこと・良いことだと思っている)で行動してしまい、その結果、組織が大混乱に陥るからである。更に、その本人も悪気があるわけではないから、周りの人もどう対処したらいいかに困まる。そのため、「こんな人間が自分の軍にいたら、今すぐ追い出すか、処刑するしかない」とさえ言われることもある。

「マジメだけれど、会社が求めているレベルには全然足りていない」。そう、要するに私は「無能な働き者」だったのだ

このことに気づいてから、眠りが浅くなったような気がする。

「無能な働き者」からの脱出を模索する

どのタイプへの脱出を試みるか?

ゼークトの組織論に基づいて単純に考えれば、4つのタイプのうち「無能な怠け者」の方がまだマシなのだが、自ら意識して「無能な怠け者」になるというのはおかしな話だ。それを目指すとなると「そもそもあなたはなんで転職したの?」となり、矛盾が生じるからだ。

となれば自分が生き残るには、「無能から有能になれる何か」を見つけ、それを実行・達成しなければならない。

  • どうやったら有能になれるのか?

  • 有能とは才能なのか?それとも努力でなんとかなるのか?

  • 統計的にはどうなのか?過去の事例は?

  • そもそも「無能」「有能」の定義とは・・・

と頭の中がぐちゃぐちゃになるのだが、難しいこと考えずに信じて突き進むしかない。それもあって、内省録をはじめてみた。結果がどうなるかはわからないし、正直怖い。仮に勇気を出せと言われてもやっぱり怖い。が、ただただ信じて行動してみる。

いったん冷静になって、役員からのコメントをちょっとだけ整理してみる。「エースの社員のようなスキルをメカエンジニアに求めている」と言っていたが、「エースの社員のコピーになれ」ということではないと思う。あのコメントは、役員が私にフィードバックをわかりやすく伝えるために使った、あくまで一例であり、それ自体は本質ではない。

おそらく本質に近いのは「自立し、一人でしっかりプロジェクトを回すこと」だろう。今のベンチャーでは、コンセプト決めから設計・開発、調達、組立て、試験・検査、納品という一連の工程を自らやる業務スタイルである(そこが魅力でもある)。ただ求められているのは「機械設計だけをやればいい」のではなく「価値ある機械に作り上げ、プロジェクトを成功させること」である。機械は物体だけあっても動かないので、電気やソフトとも連携する必要がある。

また、顧客は何を求めているかを探り、装置のコンセプトを作る上では、営業や役員との連携も重要である。役員が言いたかったのは、そのように他部署と連携する際の、司令塔・プロジェクトのペースメーカとしての役割を果たしてほしいということだろう。他部署とのコミュニケーションがますます重要になってくる。

前職の大企業では、このような業務は40代半ば以降の管理職がする仕事であり、このような業務をプロジェクトマネージャと呼んでいた。現在私は30歳であるが、年功序列が適用されないこの会社では「未経験・やったことがない」は通用しない。

「無能な働き者」は自立できるのか?

「自立してほしい」と言われたということは、裏を返せば「今のあなたは周りに頼りすぎだ。」とも読み取れる。それは自覚をしている。そうなると「よしじゃあ、なるべく自分で判断できるようにやっていこう」と考えたくなるのだが、今の私にその考えは非常に危険である。

「無能な働き者」である私が、突然自分の判断だけを頼りに仕事をするようになると、おそらく組織を大混乱に陥れる事になってしまうだろう。できないことを「できる」と錯覚してはいけない。

となると、まず身に付けなければならないのは、そこのバランス感覚だろう。自立を目指して、自分で判断ができるよう訓練をしつつ、「自分のこの判断は問題ないか」を他者から助言してもらいながら業務を進める必要がある。自分で判断をしすぎると暴走するし、かといって他者を頼りすぎると自立できない。

「どういった場面では、自分で判断 or 他者から助言してもらったらいいのか」という答えは誰も教えてくれない。だから自分に適するバランスを探るしかない。バランスを探る上では、最初はなんだか不器用な仕事のやり方になってしまうことには目をつぶりつつ、バランス調整の具合の分解能を高めていこう。

ここまでの話を聞くと「やらなきゃいけないっていうモチベーションで仕事してて楽しいの?」と思うかもしれないが、正直「楽しい」よりも「不安」の感情のほうが今は大きい。

でも、私の中にあるのは「やらなきゃいけない」という感情だけではない。もともといた大企業を飛び出してベンチャーに滑り込んできたのは、自分の人生の目標に向かって行きたいという感情があったからだ。

役員が私に求めているスキルというのは、私自身が自分の目標に向かっていくためにも必要だと感じており、実は利害が一致している。私にとってそのエース社員は、憧れというか、ベストプラクティスというか、「この人のように活躍していきたい」と思える存在である。

通常は年に1回しか面談が行われないのだが、役員からは「ちょっと君については、3ヶ月後ぐらいにもう一度見させてほしい」と言われている。それは要するに、減給に対する執行猶予。幸いにも今の会社にはチャンス(成果を出すべきタスク)が後をたたない状態が続いているので、なんとかものにしていきたい。

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