アイスランドの立体抽象芸術のパイオニア、女性アーティストのゲルドゥル・ヘルガドッティル(1928-1975)の作品展
レイキャビクから1番のバスで10〜15分ほどの距離にあるKópavogurというエリアある現代アート美術館、Gerðarsafn Kópavogur Art Museum (Gerðarsafn Listasafn Kópavogs) に行ってきました。
アイスランド、その他海外のアーティスト達のコンテンポラリーアートを展示する美術館です。今季の展示であるSculpture/Sculptureも興味深かったのですが、なんといっても個人的に心を奪われたのが常設展示で鑑賞したGerður Helgadóttir (ゲルドゥル・ヘルガドッティル)(1928-1975)というアイスランド人女性アーティスト。
「アイスランドにおける立体抽象芸術の先駆者」と紹介されている彼女。なんとこの美術館はこのゲルドゥル・ヘルガドッティルに敬意を表して設立されたという経緯があり、この美術館で展示される作品やプログラムはこのコンセプトを反映したものになっているそうです。
ゲルドゥル・ヘルガドッティルについて
1947年、19歳のときにアイスランド人として初めてイタリアのフローレンスにあるAcademy of Fine Arts of Florence で彫刻を学びます。イタリア時代は人体をモデルにしたモチーフを主に扱いながら、芸術歴史、人体の解剖学を学びプロポーション、コンポジションへの理解を深めていきます。イタリアのアカデミーは現代アートをあまり重視せず、伝統的なアートにばかり重きを置いていることへの限界を感じ、1949年の秋、当時世界中からアーティストが集まっていたパリへ拠点を移します。
鉄板やワイヤー、コンクリート(?)など様々な素材を使い、アバンギャルドなアプローチで作品をつくっていったゲルドゥル。
鉄板や鋼線を用いた作品は「宇宙を想起させるような繊細な構図が描かれている」とThe Grapevineの記事。
子どもと(ゆっくり?じっくり?)美術鑑賞
当日は子どもたちを連れて来ていたのですが静かに作品の見るのはちょっと難しかった。ダメ元で「(ゲルドゥルの作品が展示してある)この部屋で一番気に入った作品の絵を書いてくれない?」お願いしたら、これが思いがけずハマったようで、けっこうな数のドローイングを描いてくれました。
同室に展示されていた鉄やワイヤーを用いた作品も素晴らしかったのですが、個人的には彼女が50年代〜70年代に制作した彫刻のなめらかな曲線に目を奪われました。とげとげしたものに惹かれない時期だったのか。「Abstraction」(1951年)はその質感とタイトル通りアブストラクトな形状が印象力的ですが、この日はとにかく「perpetual motion」 (1970年) が際立っていました。
上記の彫刻たち、イギリス人彫刻家のバーバラ・ヘップワース(1903-1975)の作品を見たときに抱いた感情と通じるものがあるような。包み込むような、滑らかな質感の彫刻は特に。バーバラもゲルドゥルもそうでない作品も制作してますが、個人的には冷たい質感のコンクリートをまぁるく、滑らかに仕上げた彫刻の作品に惹かれました。
子連れでぜひ行って欲しい美術館
子ども用のワークショップスペースも解放されており机にはお絵描き用の紙や色鉛筆なども置いてあり、とーっても有難かったです!角にはブロックがたくさん置かれた遊びスペースもあって、誰もいない平日の午後、独占で楽しませていただきました。こういう自由に過ごせるスペースがある美術館、子連れにはありがたい。年間パス買おうかな。
参照:
Gerðarsafn Kópavogur Art Museum 公式サイト
インスタグラム公式アカウント
アイスランド英語情報誌「The Grapevine」のカルチャー記事